© 2017 SPAIA
2016年、25年振りのリーグ優勝を果たした広島東洋カープ。
圧倒的な強さで優勝へと突き進んでいく過程は、広島ファンのみならず日本中の野球ファンも大いに沸き立たせました。
その歴史的な優勝へとチームを導いたのが、緒方孝市監督です。
緒方監督から見た昨年優勝に至るまでの道程や、監督としてチーム・組織を作り上げるためのコミュニケーション、更には失敗との向き合い方、そして監督として3年目のシーズンを目前にした今の気持ちなど、じっくりと語っていただきました。
【ゲスト】
広島東洋カープ 一軍監督
緒方孝市氏
1968年12月25日生まれ。佐賀県鳥栖市出身。86年佐賀・鳥栖高からドラフト3位で広島入団。通算22年で1808試合に出場し1506安打、241本塁打、268盗塁で3度の盗塁王を獲得。外野手として5度のゴールデングラブ賞に輝いた。
09年現役引退後は打撃コーチ、野手総合コーチなどを5年間務めた。15年に広島監督に就任し、2年目の16年にチームを25年振りのリーグ優勝に導いた。
■監督1年目のシーズンと、2年目のシーズンの違い
――監督就任1年目の2015年は4位に終わりました。2016年が始まる時点では、どのようなことをお考えでしたか。
緒方:1年経っていろんな想いや経験をすることによって、見えない不安というのはなくなりましたよね。そういった意味で、2年目のスタートでは不安というのは一切なかったですね。
1年目に経験したことや結果が全てベースになって、やるべきことが2年目に際して自分の中で明確にできたので。
じゃあ優勝するためは何をすべきかということが1年経験するなかで見えて、そこだけに集中することができた。負けたらどうしよう、勝ったらどうしようとか、そういうことは一切なかったですね。だから目の前の1戦、1戦を大事に戦ってくことにもつながっていったと思うし。
(2015年の)反省で言えば、開幕直後に7連敗から始まり最下位に沈んで、ウチだけ一度も首位に上がることなくシーズンを終わってしまった。借金の状態から(勝率を)5割に戻して貯金することがいかに大切な事か。やっぱりスタートの大切さ、シーズンに入っていくための準備の大切さというのを最初の1年で学んだわけです。
ですので、同じ失敗を繰り返さず、開幕してからの安定した戦いにつなげていくことを考えました。シーズンを戦っていくための課題や足りないものを埋めていくために何をすべきかがだんだん見えてくるので、最初の入り方というのは自分の中では強く思っていた部分はありました。
だから開幕ダッシュとまではいかなかったんですけど、2年目はある程度安定した入りをできました。
© 2017 SPAIA
――2016年はエースである前田健太選手が抜け、2015年の200イニングを誰が埋めるのか?という声が多くありました。当時はどのように捉えておられたのでしょうか。
緒方:前田健太が200イニングで15~16勝したというその数字だけを埋めようとして、そこに誰かを、というと苦しいんですよ。実際に代わる選手なんていないので。
だから、それを一人で一つの大きな穴と考えるか、もしくは投手陣全体で一つの抜けた大きな穴と考えるのか。
投手陣全体で考えれば、その穴を一人で埋めるのではなくて、そこにいくつかの力で補って戦っていく。また、先発枠での大きな穴ではなくて、トータルで穴を埋めるような、例えば中継ぎの人員にしろ、抑えピッチャーを前倒しで持ってくるとか、そういう全部の中で200イニング15勝の穴を埋めようと、去年は考えましたね。
もちろん、前田の穴ですからね。やはり野球評論家の方は一昨年は優勝候補筆頭でしたが、前田一人抜けるというだけでBクラス、最下位の予想だってありました。そういう大きな力が抜けるというところからのスタートだと自分でも覚悟していましたし。
でも、その中でも楽しみというか。選手にとってはチャンスですからね。チャンスをものにする新しい力が若い力が出てくるだろう。また、そのチャンスを奪うためにどれだけチーム内に競争意識が芽生えたか、そういうことがチーム全体のレベルの底上げにつながっていく、そういうプラスの部分での効果を、自分の中ではとても楽しみだと考えていました。
――2016年のシーズン、1戦1戦を戦う中で、大活躍した鈴木誠也選手の存在は大きかったのではないですか。
緒方:選手に対しては、結果を残し、アピールしてくれた人にはチャンスは平等に与えるとは伝えていました。鈴木誠也にしても身体能力的なものとか、そういう未知の力というのはものすごい魅力のある選手でした。
自分も経験ありますが、野手というのはあるタイミングで、ものすごく力をつけて成長できる時がある。それが高校出たての若い時なのか、もしくは5年、10年経った時なのかというのは本人によって差があるとは思うんですけど。
ちょうど鈴木誠也は、一昨年がいい経験だったと思うんですよね。がむしゃらに1試合、1試合必死でやっていて、レギュラーとして試合数にしても打席数にしても経験を1年できたので、ある意味去年の実質の2年目というのはステップ、ジャンプにするんじゃないかなという思いはありました。
でも彼の場合、去年は春のキャンプで肉離れをして、開幕一軍ではないんですよ。本人にもかなり焦りがあったと思うし、そういうスタートをした悔しさがあったと思うんです。もともと彼は、物凄く負けず嫌いな性格で、今まで現役を通してみる中でも指折り何人に入るくらいの基本的には負けず嫌い。カープ向きの選手ですね。
怪我から合流してからの入りも良かったんでね。交流戦の時期に一気にブレークして、ああいう活躍というのはなかなかできる活躍じゃない。2試合も3試合も逆転本塁打打ったり決勝打を打ったり、ブレークしてくれて、本当に嬉しく思います。
――鈴木選手が圧倒的な数字を残せるきっかけを作った形ですね。
緒方:ちょうど年齢が近い中心選手がたくさんいるので、そういう環境の中で萎縮もなく、本当にチームの雰囲気も良くてね。ちょっと上の先輩がいいアドバイスをしてくれたり、またいいタイミングで声をかけてくれたり、彼一人ががんばったわけじゃなくて、周りの選手を含めた中で一緒に成長してくれたなという部分は見えますね。
■経験がないからこそ、目の前の試合に向き合う
――かつて野村監督や落合監督は何敗できるか逆算されていたそうなのですが、緒方監督はどの投手が何勝するなどの星勘定、計算などはされておられるのでしょうか。
緒方:そういう方達は監督としての経験がものすごくあり、シーズンを通して何回も経験されていますから、この投手はこれくらいしてくれるだろう、チーム全体としてこれくらいの勝ち星を挙げてくれて優勝につながるだろうと計算できる。
自分としては5年間のコーチの経験はあったが、2015年は監督としては1年目だった。コーチといっても、やはり現役生活中ずっと野手だったので野手目線でしたし。もちろんその目線で投手の一人一人の能力をある程度見る力はあっても、コーチの時はそこには目が向いていないし。
(2015年は)監督としては本当に1年目で、この投手が何勝したから今年は何勝してくれるとか、新しい投手は何勝してくれるか、という経験からの判断材料がまだなかったんですよ。 逆に経験がないことで自分の中で1戦、1戦という戦い方に気持ちが向くし、またその向け方が良かったから昨年の結果につながったと思うんです。
今年監督として3年目を迎えて、ある程度の投手の力量とかかなり勉強させてもらったので、自分の思いもあることにはあるんですね。ただ、全てが上手くはいかないとは思う。経験豊富な監督さんではなくて、まだ3年目の監督として自分のやるべき野球を1試合ごとにしっかりとやっていきます。
その中で長いシーズンを見据えて、選手の調子の良い悪いの見極めや選手起用はもろに監督の力量・采配が勝敗につながっていくものなので、そのタイミング、試合の中でのポイントで見極める力は重要だなということは改めて思いますけどね。
――昨年4位以下のチーム(阪神・ヤクルト・中日)は、広島にかなりやられました。
緒方:常にどの試合でも紙一重ですよ。本当に紙一重のところで勝ち負けという結果が出ていただけであって。何度も対戦していても、どのチームでも、ゲームセットになるまで本当に毎試合息の抜けないゲームが続いていました。ゲーム差とかではなく、一つの流れが変わることによって、やはりその後大きく流れが変わっていくのでね。
そういうことを1年目にいろんな意味で勉強させられて経験したところなんで、こればっかりは勝負事っていうのは、難しいです。
© 2017 SPAIA
■時代に合わせたコミュニケーションの取り方、伝え方
――2016年がコミュニケーションを重要視されてきて、1年目より2年目にチームがより機能していったような印象を持ちました。監督の中ではコミュニケーションを意識されるようになったのはどのあたりでしたか。
緒方:監督就任1年目からつくづく経験しましたし、自分の中でも努力したことでもあります。
黒田にしてもそうだったんです。1年目(大リーグから復帰して)来てね。いろんな事を教えたい、でも周りの選手からすると、なかなか近付き難い存在。でも黒田自身ももっと教えたい。でも、そういう押し問答がありながら1年が過ぎているわけですよ。
で、2年目。やはり自分からもっともっと若い選手に入っていったし、近づいていったし。若手の選手も2年目になって、もっともっと黒田さんから聞きたい、教えてもらいたい、そういった中でいいコミュニケーションを投手陣全体が取っていった。
新井もそうですね。新井も阪神から帰って来て1年目。彼はある意味泥臭い方ですが、野手の中堅どころや若い選手は、去年までは敵として戦った来たわけですからね、阪神で。だからそういう中で2年目になってやっと、やっぱり野手もそういう風に話しができるようになった。選手間同士、先輩後輩の中でそういう風に2年目を迎えて、いい方向に出た。雰囲気にしても会話にしてもいろんな事が繋がったんだろうなという風に思いますけど。
かと言って、やはりプロ野球の世界では縦の関係というか、しっかりと礼儀を重んじながら先輩に対して言葉遣いなり気遣いなりとかね、これは最低限やっていかなくちゃいけないし。
僕らの時代からしたら『おいおい、先輩に対して言える言葉か』というのを選手間同士でやってるのも耳にもするし。でも、それはこっちの時代の価値観であってね。今の時代の選手には当たり前で、こっちが逆に考えを変えなくちゃいけないという時代の流れをわかっていないと。
特に若い選手との会話、コミュニケーションを取ろうと思ったら、こっちがそういうスタンスでないと、向こうは構えて会話ができないのでね。また、そういう様子を見ながらこちらも勉強するという事ですよ、やっぱりね。
――監督室を常に解放されていましたが、扉を開け放したきっかけはどのようなことでしょうか。
緒方:コーチの意見を聞きたくて。それぞれの野球観を聞きながら良いものを取り入れ、自分の勉強のために話をすることを重ねたい。そして自分の考えを浸透させながら一丸という「柱」を作っていきたい。
とはいえ、監督室の扉をいつでも開けてるから意見があったら言ってくれといっても、なかなか1年目は難しいですね。そういった事を2年目も言って、次の3年目にして変化が起こってくれる事を期待してました。そういう変化が起こらないとダメだと思うし。
いかに話したい事を伝えるか。伝える努力をするために何をするのか。話し方なのか、データで表していくのか。『話すのではなく伝える』という事をコミュニケーションの中では大事に思ってやっています。こちらがいくら伝えようとしても、相手が伝わるような精神状態であり、心構えでなければ伝わらないですしね。
© 2017 SPAIA
――一部の報道やWEB上では好きに書かれる事も多かったでしょうけれども、心を乱されるはなかったでしょうか。
緒方:今は昔と違って、インターネットの書き込みなど、誹謗中傷とかひどいものですからね。好き勝手にね。(笑)
ただこれも、負けたら監督である自分の責任ですね。ある意味結果で評価されるところだからね。真摯に受け止める時は受け止める。でも、勝てば評価してくれますよ。そういうのが結果の先にある。
時代というか、情報が多すぎて足を引っ張られてる事もたくさんありますし。でも、情報という点ではね、こっちも使わせてもらうところは使わせてもらう。ファンに乘って応援してもらうための発信にも利用させてもらっているので。言葉が直接的より間接的に入ってきた方が届く場合もありますしね。
――監督になってから言われた言葉の中では、どのような言葉が監督には響きましたか。もしお名前も出してよければ。
緒方:具体的にいえば、昨年の優勝決まるちょっと前に亡くなられたんですけどね、ヘッドコーチ兼打撃コーチをされていた山本一義さん。
本当に厳しくて真面目な方でね。シーズン始まる前、始まった後も、選手に対しての采配とはこうあるべきだとか、本当にいい訓示のような言葉をいただきました。
一番思うのは、年齢を重ねてこの立場になると、なかなか厳しい言葉を言ってくれる人の存在自体が減って、なかなか。だから逆に、OBの年配の方が来て、たまに厳しい言葉をいただけるとものすごく新鮮に受け止めるし、またそういう言葉ってすごい響くものがある。どんどん言ってきてください、教えてくださいというのが本心です。言ってもらいたいですし、言ってもらえる自分でいるようにしたい。
■監督としての気持ちの切り替え方
――監督として結果はご自身の責任だというお話がありました。長丁場のペナントレース、疲れる瞬間もあるかと思います。気持ちの切り替えなどはどのようにされておられたのでしょうか。
緒方:失敗と向き合って考えること自体が切り替えになっていますね。あと、反省はしても後悔をしない。
うまくいかなかったり裏目に出たから、やったこと全て失敗かというと、結果に対する思い入れに自分の中で引きずられてしまったら、つまり後悔してしまったら、ものすごい響くんですよね、それが。選択の中で決断したのならば、根拠がある。(その根拠に基づいて)決断を下しているわけだから、その点を反省という言葉に持っていく。後悔という言葉に持っていってしまうのは、やはり引きずるものが大きいんでね。
チームの勝ち負けに対しての責任は全て自分にある。選手に対してもそう言い続けている。そうやって考えたらものすごい楽なんですよ。作戦にしてもいろんな事に対して正解ってないんですよ。成功したから正解、失敗して点を取られたから不正解っていうことはないんですよ。
正解・不正解、成功・失敗ではなく、自分の目指す野球をしっかりとやる。この言葉に気持ちを向けてやれば、全ての事が受け入れられるし、また吸収していけるし、消化していけるし。昨年は楽という言い方はおかしいけど、1年目とは変わったところはありますね。
あとは犬の存在。散歩の時間が気分転換となっています。(笑)
© 2017 SPAIA
▲宮島 厳島神社 特大サイズの優勝祈願しゃもじ
■今シーズンは連覇に向けて、挑戦者の気持ちで
――2017年の目標はもちろん日本一だと思いますが、そのためにどういった取り組みをしていこうとお考えですか。
緒方:もう、そこ(日本一)ですね。今シーズン戦う上で、やはりもちろんリーグ優勝。リーグ優勝した先に、日本一への挑戦権があるんでね。
昨年から本当に明確に伝えていることは、自分たちのやるべき『目指す野球』。
選手だけではなく、こちらから言うことを選手に伝えてもらうために、選手を支えるコーチ・スタッフに対してもこういった野球をやるんだと伝えています。
2年目(2016年)からになってしまったけど、本当は1年目からしっかりそういうことを伝えなければならなかったんです。そういう失敗からの反省で、コーチ・スタッフから選手に対しても、自分達はこういう野球をするんだと、失敗、成功を繰り返しながら1年間戦って結果を残せたわけで。
また今年も気持ち新たに、「連覇に向けて挑戦するんだ。挑戦者だ」と、そういう気持ちで向かっていく。その中で、3年続けてきた目指す野球を今年も継続してやっていくことで、チームが進化していくところにつながっていくと思っています。
もちろん新しいことを取り入れることも大事だと思うし、かといってそればっかりになってしまっては、今まで大事にやってきたことも疎かになってしまうので、今年もしっかり戦う上では目指す野球をやる。キャンプの時からしっかり開幕に向けて、開幕したら終わりじゃなく、シーズン最後までやっていこうということです。
スタイルとして自分の中では現役からずっと通じて思っていることは、野球は投手力が一番大事。長いペナントレースを制するためには、しっかりした投手力。先発ピッチャーしかり。ピッチャーの頭数をしっかり揃えること。
特に今の野球は先発・中継ぎ・抑えをしっかりと確立してやっていけば、失点をグッと抑えられる。野球は点取りゲームだと思われがちだけれども、いかに失点を少なくするか。それが勝ちにつながる。コンスタントな戦いができる。そいうところを目指してやっていこうと思っています。
――2017年のシーズンは黒田投手がいなくなり、優勝した翌年なのでマークもされます。そのなかでうまくいってきた野球を踏襲されつつ、プラス何かを変えていくという考えもあるのでしょうか。
緒方:基本的な目指す野球が変わらないにしても、「今日良かったからこの形で明日も行くぞ、また明後日も行くぞ」とか、現状が完璧に完成した形だとは一切思わないですね。
今日の最善がじゃあ明日も最善かというとそれは違う。
同じ人間がやるのでコンディションがあり調子があり、いろんなものを含めた中なので、形だけにはこだわらない。昨日は昨日で、今日は今日のベストと思うなら、そっちの方向に形を変えていく事が自分の中でも大事だと思います。またそこに新しいチャレンジしていく事も大事。
基本には「こういう野球をするんだ」という考えがあって、今日はこういう形がベストではないかという柔軟性も大切です。
ただ自分一人の考えでやるわけではないですね。やはりコーチ、トレーナー、スコアラー、戦う自分の手と足となってくれるスタッフがいるので、彼らの声をしっかり聞いて判断をしていくというですね。
もちろん監督というのは、最後に責任を取る立場なので決断を下すことは当たり前なんだけど、その前の判断として、やはりそういう人たちの声をしっかり聞いて材料をあげてもらう。 まあいろんな考えがあるんでね。勉強にもなるし、ちょっと違う方向に考えたりすることもあるし。でも、そういう声を聞けないより聞けたことが、昨年いい結果につながったわけですし。
■一瞬を積み重ね、経験の先にいる新しい自分を楽しみに
――2年間の経験を踏まえ、今年の11月には自身がどうなられているか、どうなっておきたいかということをお聞かせいただけますか。
緒方:本当に先のことはわからないんでね。先に繋げるために、今この一瞬をしっかりと生きていく。やるべきことをしっかりやって積み重ねていく。その積み重なったもののその先に、どういう自分になっているんだろうというのが楽しみですよね。
そりゃ目標という事になると、去年逃した日本シリーズでは自分の中でも悔しい思いをした。こうしとけばよかったなとか、いろんな気付きから勉強した事を今年また試して日本一を取りたいな、そういう1年にする、という思いはあるんですけどね。
どうなっているかと言われたら、『いろんな事を経験した自分』になっているであろう楽しみ。
経験する事によって、同じ言葉や同じ思いが違う言葉となって色々と発信しているんじゃないか、発信できているのではないかとか、そういうところを楽しみにしていますね。
――様々な苦労を重ねて成長し、結果に繋げてこられた。これは野球選手のみならず、社会に出て働く方にも共感できる部分があると思われます。
緒方:1年目は確かにいろんな経験をさせてもらって、しんどさがあって苦労といえば苦労だったのですが、でもあの経験があったおかげで2年目の結果があったと思うんです。(良い悪いの)両極端の部分で過ごせたんで。
けれど両極端の悪い方にいても、良い方にいてもしんどいのはしんどいんですよ。1日1日戦って結果を残していく中で、いろんな経験をして、苦しさは結局変わらないなと思うんです。
それを苦しいと捉えるか、宗教とか仏の世界ではないですけど全ては『行(ぎょう)』なんですよね。積み重ねる事によって、また新しい自分へ、また新しいいろんなものがどんどん大きく作り上げられていくもんなんだって、そういう思いで苦しい1日1日が、行。今の一瞬一瞬が、行。
今をしっかりやることの大事さ。そういう経験があるからはっきりした。間違いなく苦しい戦いになると思うし、そういう経験を積み重ねてしっかり受け止めながら、その先にどういう自分になっているのか。どういう自分に出会えるのかですね。
© 2017 SPAIA
(取材:楊枝秀基 / 構成:SPAIA編集部 / 写真:近藤宏樹)