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インタビュー

【野球の未来シリーズ:第5回】

「部活」としての野球は変われるのか?民営化に見る進化の可能性

野球


高校野球

Photo by mTaira/Shutterstock.com


【ゲスト】

スポーツデータバンク株式会社

取締役

石塚大輔氏

日本体育大学卒。2003年スポーツデータバンク株式会社に入社し、2015年同社取締役に就任。 2015年スポーツデータバンクコーチングサービス株式会社から代表取締役、台灣思動邦有限公司 董事長(代表代表取締役)も務める。2016年 スポーツデータバンク沖縄株式会社を設立し、代表取締役就任。

スポーツ庁の「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン作成検討会議」の委員を務めている。


【聞き手】

株式会社スポーツマーケティングラボラトリー

執行役員

石井宏司氏

東京大学大学院にて認知科学、教育×ITについて研究。1997年にリクルートに入社し、インターネット関連の新規事業、エンターテインメントの新規事業、地方創生コンサルティング、人材コンサルティング、事業再生などに従事。その後野村総合研究所にて経営コンサルティング、スポーツマネジメントコンサルティングに従事。一般社団法人日本女子プロ野球機構 事業理事を経て、現在はスポーツマーケティングラボラトリーコンサルティング事業部 執行役員。アメリカにてスポーツ×ITのテーマのカンファレンスに多数参加。

■はじめに
「野球の未来」と名付けたシリーズの中で、今回のテーマは「部活」を取り上げます。

昨今、高校野球や大学野球の試合がスマートフォンやアプリで手軽に楽しめるようになり、人気が復活してきています。それにつれて、特に「野球部」の指導や選手管理についての課題も話題になるようになりました。スポーツ産業は、最初に顧客がスポーツに触れ合うポイントが地域のスポーツクラブや学校という、非常に特殊な構造をしています。したがって、この入り口となるジュニアのアマチュアスポーツの改革は、スポーツ市場の成長のためには、非常に重要な役割を担っていると言えます。そういった中で今、部活動の現場に民間の指導員を派遣するというスキームの実現を文科省、スポーツ庁が進めています。

民間の指導員が部活の現場に派遣されることが将来一般的になったとしたら、野球はどう変わっていくのでしょうか?そこにはどんな可能性があるのでしょうか?
実際に部活動への民間指導員の派遣を先駆けとして実施してきたスポーツデータバンクの石塚様にお話を伺いました。(敬称略)

■スイミングクラブのような野球スクールから、部活動への民間指導員派遣事業の立ち上げへ

⽯井: 日本のスイミングクラブは、実は優れたビジネスモデルと言われています。「泳げるようになる」というわかりやすい結果に対して、週1回1時間通う。何回か行くと級が上がって子どももモチベーション高く続けられる。こういった教育サービス業としてのわかりやすさがステークホルダーとしての親子に受けて、ダントツに習う率が高い。
同じビジネスモデルを活用し、野球で成功されているのが、スポーツデータバンクさんです。「打てるようになる」というわかりやすい結果に対して、週何回かバッティングセンターに通う。カルテを使って、上達を確認しあうカリキュラムなど、画期的な仕組みを提供されて成長しています。そんなスポーツデータバンクさんが今回、学校の部活動への民間指導員派遣においても、先駆的な活動をされている。そのお話を伺いたいと思います。

石塚:ありがとうございます。確かに元々はバッティングセンターなどを利用したバッティングスクール事業から、当社は始まっています。このモデルをサッカーやゴルフに展開する中で、スポーツの指導員のネットワークが当社の資産となっていきました。そんな中で、新聞やニュースなどで教員の部活動の負担が大きいことや、指導者のスキル不足で怪我が発生するなどのことが取り上げられていました。当社としても何かできないかと考えていました。

⽯井:いつごろから始めたのですか?

石塚:実は始めたのは少し前で、2010年からです。杉並区の教育委員会と契約をし、区内の中学校にプロの指導員を派遣する事業を始めました。

⽯井:結構前からされているという印象ですね。実際やってみて、学校の部活というのはどんな状況なのですか?

石塚:実際の中学校の先生たちの現状は、やっぱり忙しいです。
そういう中でもちろんやる気がある先生もいらっしゃるのですが、必ずしも自分が昔経験をしていた部活を担当できるわけではない。そうすると、知識やスキルが追いつかない。知らない競技だと、ルールから覚えなければいけない。そうなると、やる気と実際の知識とスキルが比例しない。それが空回りして悩んでいる、ということが見えてきました。
また、案外大変なのが大会の役員や委員、審判などのお手伝いです。こういったものまで学校の先生が全て負担しているのが現状だとわかりました。

■「野球部」はどう変わるか?

⽯井:野球というと、なかなか部活をオープンにしづらいようなイメージもありますが、そこは実際にやってみていかがですか?

石塚:実は指導者の提供のしやすさやマッチングしやすさでいうと、野球は元々競技人口が多いので、うまくマッチさせやすい。これはサッカーやバスケットにも言えます。逆に競技人口が少ない競技の方が、今度はニーズがあっても指導者がなかなか見つからないということも起こり得ます。

⽯井:確かに、需要という面では野球は有利ですね。しかし、受け入れやすさという面ではいかがでしょうか?

石塚:野球は熱心な先生が監督や顧問をやっているケースがやっぱり多い。最近私たちが取り組み始めた沖縄のうるま市のケースでもそうでした。でもそこの先生たちは、民間派遣の指導者を拒否するというよりは、より専門的な指導の腕前を自分たちも学びたいから、上げたいからという理由で実は民間の指導者を受け入れています。

また、他の地域では、野球の指導は自分が熱心にやる。でも、成長期の一人一人の身体のケアとか、トレーニングの面は専門的な知識やスキルが必要になる。そこを民間の指導員に見て欲しいというニーズがありました。

⽯井:なるほど、実際はむしろ積極的に受け入れたいというニーズもあるわけですね。

石塚:そうですね。野球はポジションというものがありますから、バッテリーを専門的に指導して欲しいとか、バッティングを指導して欲しいというニーズはあるわけです。

⽯井:そうすると、野球の部活においても、専門的な外部指導者がいることが自然になってくるわけですね。その他に何か変わるようなことがありますか?

石塚:少子高齢化の中で、1つの学校でチームができないという場合、ある学校に集まって1つのクラブとなり、そこに外部指導員が派遣されるということも起こってくると思います。すでに都内の女子サッカーなどはそうなっている。また、うるま市で始まっているのですが、そういった部活にさらに地元企業がスポンサーとして支援するような仕組みが始まっています。

⽯井:公立の中学校にスポンサーですか?

石塚:はい。うるま市の場合は地元のホームセンターがスポンサーとなって、その資金を指導員の費用の一部の負担にあてたり、部活に必要な道具の購買にあてたりしています。

⽯井:それはなかなか画期的ですね。でも自治体も学校も地域企業も一体となって、地域の子どもたちのスポーツを支えようという形ですから、ある意味あるべき姿なのかもしれませんね。

石塚:はい。こういったことはもしかしたら強豪の私立高校ではすでに実現していたことなのかもしれませんが、今後は強豪ではない、普通の公立高校などでも実現が可能なのだと思っています。

やっぱり普通の高校生からすると、アスリート志向というよりは、好きな野球を生涯楽しく、長く続けるということの方が大事なのだと思います。高校で終わるのではなく、大学や社会人になっても、草野球を続けるようになることですね。そういう指導がもし民間指導員の派遣で実現できるならば、それはスポーツ庁が目指す生涯スポーツ実施率を上げる意味でも重要なのではないかなと思います。

⽯井:将来そういう風景ができるとすると、だいぶ様子が変わってきそうですね。

石塚:そうですね。野球だけをやるというよりは、いくつかのスポーツを掛け持ちし、たまに野球をやって、次はサッカーをやって、冬はバスケをやってみたいなことも実現されるかもしれません。
実は世田谷区の中学校には体力向上部というのがあって、朝にラダーとか軽いランニングとかを平日週4回、45分しかやらない。これは極端ですが、多様な部活のあり方なども選べるような可能性が出てくると思います。

⽯井:そうなると、大会も民営化されますか?

石塚:はい。それもあると思います。実際土日の大会の負担がすごく大きいというのはありますから、それが民間に委託されてもいいと思いますし、委託されて企業スポンサーがつくことも、十分考えられるかと思います。

⽯井:現実には修学旅行とかも旅行会社に頼んでいるわけですから、大変なことは民間に頼もう、ということは変ではないわけですよね。

石塚:実際は最初は部分的に委託するような形から一歩一歩始まるのだとは思いますが、徐々にこういう流れにはなっていくと思います。

■部活を「輸出」する可能性

石井:日本の部活を輸出するという動きにも石塚さんは関わっていると伺っています。

石塚:そうですね。現段階では実験的なレベルですが、文科省のEDU-Portニッポンというプログラムに沿ってやっています。まだまだ海外ではスポーツの指導ができる人もプログラムもないという現状なので、施設だけとか用具だけとかプログラムだけということではなく、指導者育成の体系やサポートの仕組みも含め、ソフトとハードと一体となって輸出していくことを目指しています。

石井:具体的にはどんな風に進みそうですか?

石塚:いきなり学校に、というのはもしかしたらハードルが高いかもしれませんので、最初は放課後のクラブというものから海外進出していって、そこの実績からだんだんと学校にも入っていくという順番になるかもしれません。

石井:アジアでは、どんな国が興味を持っていますか?

石塚:タイで日本の教育を紹介するイベントがありました。それから、カンボジアやミャンマーが日本の学習指導要領が導入されつつあるので、そういうところは興味を持つと思いますし、体育や部活動を輸出でいる可能性があると思います。

石井:元ロッテの清水直行選手がニュージーランドで野球普及をやっているので、そういった動きとも連携していくイメージでしょうか。

石塚:そうですね。そういった動きみたいなことも連携できていけばいいと思います。

石井:海外での日本の部活指導はどういう風に認識されているんでしょうか?

石塚:非常に指導が細やかであることや、ルール遵守、規律を守るといったところが評価されているところがありますね。

石井:なるほど。どちらかというと日本では一律教育、画一教育よりも、個性を生かすといった方向に今向かいつつあると思いますが、海外では逆にそういったルールを守るといったところの方が興味深いですね。
今後、日本の部活がアジアの多くの国に輸出されるとなると、非常にいろんな意味でチャンスがありますね。それが野球のアジア普及にもつながっていくとなお新しい世界が広がっていくと思います。
ありがとうございました。

石塚さん


(取材/構成/写真:石井宏司)

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