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【SPAIAインタビュー:第10回】

女子プロゴルファー 福田裕子 ~日々感謝しながら、プロゴルファーとして生きる

ゴルフ

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© 2017 SPAIA

2016年、SPAIAとスポーンサード契約を結んだ、女子プロゴルファー福田裕子選手。2017年の出場権を賭けたファイナルQTを2位で通過するなど健闘しています。

ツアー初優勝を目指す福田選手に、ゴルフを始めたきっかけやプロゴルファーとしての生活、マインドの保ち方についてのお話をお伺いしました。

【ゲスト】

女子プロゴルファー

福田裕子

1981年11月11日生まれ。鹿児島県鹿児島市出身。関西軽井沢GC所属。
ソフトボール、バスケットボールなどを経験した後、中学3年の時にゴルフを始める。
高校卒業後、ゴルフ留学のため2年間オーストラリアへ。2006年プロテストに合格し、同年の日本女子オープンでデビュー。
2012年には「フジサンケイレディスクラシック」で3位タイに入り、賞金ランク42位に。
翌2013年もトップ5に二度入る活躍でランク41位になり、2年連続シード権を獲得した。

■ゴルフを始めた頃から、プロを目指していた

――福田さんは15歳でゴルフを始められました。なかなか子どもがやる機会の少ないスポーツだと思いますが、ゴルフを始めたきっかけ教えてください。

福田:父が死んで何年か経った後、母と父が「老後ゴルフでもしようか」と話していたのを、母が思い出したというのがきっかけですね。それでゴルフをやってみたいと。
母が、やってみたいけど一人で習いにいくのは嫌だということで、一緒について行ったのがスタートです。なので、もし父が生きていたらゴルフはしていなかったと思いますね。
最初は叔母の知人にゴルフの上手な方がいたので、その人に習っていたんです。しかしその人に「アマチュアに習うより、ちゃんとレッスンプロに習ったほうがいいよ」と言われ、本格的にレッスンに通い始めました。それが中3のときです。

――初めてクラブを持った時のことは覚えていますか?

福田:何にも覚えてないです。 ゴルフを始めて半年はずっと練習場だったので、最初はあまり面白くないなと思っていました。 実際にゴルフ場を回るようになってからは楽しかったです。楽しいので、もうちょっと続けてみたいな、と思いました。

――いつからプロを目指されていたんですか?

福田:ゴルフを始めた15歳のころからですかね。その当時はやっぱり周りに褒められたりしていましたから。 器用だったから、思いの外上手くできていたというのもありました。 失敗したとしても、ゴルフをやっている女子っていうのは就職しても有利かなとも思っていました。

――高校(ゴルフ部)を卒業してからは、オーストラリアで二年間のゴルフ留学を経験されました。海外のゴルフアカデミーでの生活はどうでしたか?

福田:人生を勉強しにいった、そんな感じです。 イジメとかもありました。いろんな人がいますからね。人間関係が難しかったです。 ただただ大人しく黙ってやっていればいいという問題ではなく、言わないと相手には伝わらないということを学びました。

――20歳のときに留学を終えて帰国されました。その後プロになるまでの5年間はどうされていましたか?

福田:ゴルフ場でバイトさせてもらっていました。 仕事が終わった後にラウンドを回ったり練習させてもらったり。研修っていうよりもバイトで、仕事した分だけギャラもらうっていう形です。
合間に怪我などもあり、バイトしてテスト受けてというのが5年間続きました。

福田裕子

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――2006年にプロテストに合格された時はどんな気持ちでしたか?

福田:最終予選会にいくまでの1次、2次テストは毎年のように受けていましたが、2次で落ちることも多かったです。 最終予選まで2回いきましたが、1回目は受かると思っていて受からなかったので、そこに関しては自分の実力をはっきり実感しました。
2回目で受かりましたが、2回目に至っては最終組で回っていました。合格した人間の中では一番スコアを打ったんじゃないですかね。だから悔しさでいっぱいでした。

――プロゴルファーになって嬉しかった出来事はありますか?

福田:プロになるといろんな出会いがありますよね。 普通の同世代だったら絶対会わないような大企業の社長さんたちにお話を聞かせてもらったこともあります。 そういう意味でいろんな経験、勉強をさせていただいています。

――逆にプロになって落ち込んだことはありますか?

福田:ありますよ。 悩むから成長するんだと思います。
プロゴルファーをやってていいんだろうかとか、そこまで落ちるなら「やめたら」って神様から言われてるんじゃないか、とか思ったりすることもあります。 でももちろんそれも試練だったりするから。それを試練と思うのか、自分の人生の一コマと思うのかということだと思います。

■プロゴルファーは体力との勝負

――最近では門戸が広がった感じはありますが、まだまだ一般的にはゴルフは裕福な家庭の子供がするスポーツというイメージが強いです。実際はどうですか?

福田:確かに、ゴルフをしているというと裕福な家庭とイメージが多いですが、実際は裕福な人は限られていましたよ。坂田塾といって、サラリーマンの方や一般家庭の子がお金がかからないように入り口を広げてくださっていました。
お金持ちの子たちはごく一部で、ハングリー精神という部分では普通の家庭の子の方が頑張っていたと思います。お金を稼ぐという意識も将来的にあるかもしれないですが、純粋に自分が勝ちたいから頑張っているという気持ちの方が強かったと思います。

――最近では、試合にものすごく出てくる高校生が多いですね。

福田:そういうことが、定時制高校に行く選手が多い理由でもあります。遠征も多いですし。 学校に行くよりも、練習してプロになって稼いでほしいと考える親御さんも多いと思います。
ただ、アマチュアの場合はプロと違って出られる試合が無制限なので、高校生なのに年間20試合以上、出場している子もいます。

――女子プロゴルフは、1年通して試合数がすごく多いですよね。体調管理はどういう風にされていますか?

福田:年間を通しての体調維持もプロとして求められます。そこをいかにメリハリをつけて、休養をとるか。練習したいという思いと休む勇気との葛藤です。私は最初の頃は休めませんでした。

やはり男子に比べれば、ホルモンバランスが毎日少しずつ違います。それに気付かない人もいれば、年齢・経験を重ねて気付いてくる部分もある。
特に20代から30代に差し掛かる頃には、色んなバランスに変化があって「何でだろうな」という気持ちにもなりました。そんな中でアスリートとして集中していかないといけない。プレーに影響が出ないようにするには、場数なのかなと思うところです。

――女子トーナメントに3日間大会が多いのも体調面を配慮してのことなのでしょうか。

福田:現在の小林会長(日本女子ゴルフ協会・小林浩美会長)は、世界に通じる選手をということで4日間試合という考えを持たれています。海外ではほとんどが4日間ですし、メジャーも4日間。
ただ、日本の場合は一部の選手だけに負担がかかる形になるんです。プロアマ大会なんて毎週、ほとんどが同じメンバーですから。その選手たちからすると4日間大会が実質、5日間になってしまうこともあります。
プロゴルファーからすれば、プロアマに呼んでいただくことはステータスなので、呼ばれること自体は良いんです。でも、38試合ずっと出ている人もいますからね。

福田裕子

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――海外でも同じような傾向なのでしょうか?

福田:アメリカツアーなんかでは少しやり方が違うみたいですよ。 収益をチャリティに当てることも多く、9ホールごとに選手が変わることもあります。
日本の場合は42組を入れることもあるので、一日が長くなる傾向にあります。拘束時間が長くなりますが、それでも結果を出す人がいる一方、ルーティンになっている選手もいますね。

――シーズン中、移動も含めて毎年30試合以上を繰り返す中で、体調管理として気をつけていることはありますか?

福田:公共の乗物に乗るときはマスクしたりとか、あとはよく寝ることですかね。 試合自体にエントリーをするかしないかを自己判断で決められるので、思い切って休む勇気も必要です。

■ポジティブな言葉を選ぶことで、運気が変わる

――体力に加えて、技術・メンタル面の維持も大変だと思いますが、どう管理されていますか?

福田:そうですね。スイングを変えている時期もありますし、それに対しての悩みなどはあります。 ゴルフって基本的に調子がいいから勝てるという問題でもないですし、調子がいいからスコアが出るスポーツでもないです。ゴルフは自然を相手にしているので運が必要になってくるんです。
イ・ボミ選手はその運を味方につけるのが上手いなあと思います。

――イ・ボミ選手を見てどういうところでそれがあると思いますか?

福田:ひとつひとつのことにおいてです。ネガティブなことを言わないとか、すべてにおいて感謝しているとか。そういう空気を自分で作ってるんです。
それは多分他のスポーツ選手でも、どんな職業においても一緒ですよね。

――日々感謝するということが大切なんですね。

福田:いかにちゃんと感謝の気持ちを持ってやれているかというのが重要なのだと私自身は思いますね。昔よりも試合数が増えたからといって、試合があるのが当たり前と思って感謝を忘れてはいけない。
震災があった時もそうですけど、私達スポーツ選手は基本的に何かあれば真っ先に消えていくものですから。

私達がプロゴルファーとしてやっていけるのは、スポンサーがあってのことです。しかし、スポンサーがあるだけじゃトーナメントもできません。 運営があったり協会があったり、色々な方たちのおかげでこうやって成り立っているわけです。そういうことに対する感謝とか、自分ひとりでゴルフやってるんじゃないよっていう気持ちを忘れずにいることが大切なんだと思います。
我々はここ(ウエア)にスポンサーのワッペンを貼っています。ゴルフは個人スポーツなので特に、この会社を背負ってやるといういるという意識は強いですし、本当にありがたみをすごく感じています。

――プロになって10年以上経つと思いますが、いろいろなご苦労がある中で、メンタルで一番大きく変わった部分はどこだと思われますか?

福田:さきほどお話したことと重なりますが、自分で運気を下げることをしないように努力しています。
自分が勝ちたい、結果を出したい、それに対してどういう風に運を味方につけたらいいんだろうって思って……メンタルの先生とも話をして、ネガティブなところはこういう風に考えたら同じ意味だけど違うでしょ、というようにアドバイスを受けて。 毎日のちょっとしたことです。言葉ひとつでも全然違いますよね。

――具体的にどのような言葉に気を付けていますか?

福田:たとえば、「調子悪くないんだけどなー」という言葉。調子悪くないからこうやっていこうという意味ですけど、そもそも「悪い」って言葉にしてしまっている。
それだったら最初から「調子がいいのにな」と言えば、だからこうしようというということになる。基本的にはポジティブにしかとらえないし、ポジティブな行動態度、言動にしか向かわないわけです。
そういった一言二言が全てにおいて変わってくるから、変に緊張とか不安に思うことがなくなったかなって。緊張、不安って今言葉に出しているけど、言う時点でネガティブだから言わないように気をつける。

何かにつけて「あ、すいません」っていう人と、何かにつけて「ありがとうございます」っていう人では全然違いますよね。もちろん否定的な言葉も言いますけど、否定的な言葉を言った後にちゃんと肯定的な言葉を言うとか。
その辺でもやっぱり変わってくることなので、そういったことをすべてにおいて、最初変えるのはすごく大変でした。いかに私がネガティブなことを言ってたんだろうなって自覚しましたから。

――ありがとうございます。最後に、今の目標を教えてください。

福田:他の選手に比べて、身長がかなり大きい(168センチ)んです。目標も大きくて米ツアー参戦です。そのためにはまず、日本ツアーで勝つことです。ここ数年は足りない部分の細かい数字が少しずつ良くなってきていると感じています。
勝てるんだったら年間何勝もしたいです。まずは一勝。勝つために、年間複数回勝つために自分に何が足りないかっていう、そういうところです。

私としては、応援してくださっているスポンサーやギャラリーの皆さんに無様な態度は見せられないなっていうのもあります。そのためにはやれる範囲のこと、できる範囲のことを一所懸命しています。
ありがたいことに、私がどういう状況でも黙って応援してくださっている方たちも多いので、結果を出して恩返ししたいなと思います。いい方たちに出会っているからこそ、余計に感じますね。
あとは本当にプロゴルファーになってよかったなと思える人生でいたいなと思います。

福田裕子

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(取材・文: SPAIA編集部 / 写真:近藤宏樹)

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