監督が作り出したチームの一体感
代表監督にはどんな時でも勝利を求められる重責を担う。そうなると練習や指導にも熱が入り、怒鳴り声が上がる時もあれば、疲れ果ててしまうような膨大な練習を行う時もある。
かつての日本代表は、身体能力などのライバル国との差を練習量によって埋めてきた。選手にとって監督の存在は絶対的なものであり、監督の厳しい練習に耐える強い精神力があったからこそ、60?70年代にかけて世界で勝つことができたと言っても過言ではない。しかし、世界のレベルが上がるにつれて、精神力だけでは勝てなくなり、低迷の時代へと突入する。
そんな中、眞鍋政義監督は、選手に対して従来の監督とは違う接し方をしている。それは選手と積極的にコミュニケーションをとることで、選手と監督という縦の関係ではなく、意見を言い合える横の関係を構築するというやり方だ。常に選手の様子を観察し、ときには声をかけ、ときには選手にイタズラを仕掛けたりしながら、選手の様子や意見を把握していた。
そのような選手を第一に考えたプレーヤーズファーストの視点が、メダルを獲得するチームの雰囲気を作り上げたのだ。
コートの中でiPad?分析家監督
眞鍋監督は試合中にiPadを使用している。これは分析スタッフから送られてくる試合のリアルタイムデータをチェックするためだ。バレーに限らず監督というとベンチから檄を飛ばしているイメージがあるが、眞鍋監督は、選手の試合中のデータを確認しながらチームの軌道を修正しているのだ。
また、対戦相手についても、動きやレシーブ、サーブなどの数値の中から弱点を見つけて作戦を立てている。そのような取り組みの結果、世界ナンバー1のブラジルに勝利を収めることができ、精神力だけに頼っていたバレーにデータを融合することで新たな風を吹かせることになった。
選手に対しても同様にレシーブやスパイクの成績を数値に表し、具体的な目標値を設定することで、成長が目に見える形となって表れ、自身の課題が具体的にわかるようになった。これまで感覚的に行われていた部分を可視化することで、チームの成長を促していったのだ。
チーム眞鍋ジャパン 分業スタッフの存在
かつての日本代表には、カリスマ性のある絶対的な存在の監督がいた。しかし、眞鍋監督は自身にはカリスマ性はないとして、これまで監督のサポート的存在だったスタッフそれぞれに戦術、ブロック、サーブなどの練習を担当させる分業制を取り入れた。
分業制によるメリットは、監督の負担の軽減だけでなく、スタッフ1人1人に責任感が生まれ、やり甲斐につながることなどが挙げられる。また、選手にとっても、それぞれのプレーに担当のコーチがいるので、プレーの相談がしやすくなるというメリットがある。
眞鍋監督は、選手、スタッフを含め全員で1つのチームを作り上げたのだ。
まとめ
ロンドンオリンピックで28年ぶりにメダルを獲得した眞鍋ジャパン。
これから金メダル獲得に向けて、成長を続けていくことだろう。
これまでの精神的な強さに科学的な強さが加わった眞鍋ジャパンのさらなる活躍が期待される。