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ATPツアー、2019シーズンに誕生した2人の“王者”の戦いを振り返る

2019 12/31 06:00橘ナオヤ
年間王者・ナダルとATPファイナルズ王者・チチパスⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

崩れないBig3の壁

ATPツアーは早くも2020シーズン開幕が迫っている。2019シーズンは、ラファエル・ナダル(スペイン)とステファノス・チチパス(ギリシャ)という二人の王者が生まれた。

2019シーズンの年間王者は、33歳のナダルだった。ツアー4勝のうち2勝はグランドスラムだ。そのグランドスラムでは4大会すべてでベスト4以上に勝ち進むなど、今季も素晴らしいパフォーマンスを見せた。ナダルの守備範囲の広さ、攻撃の多様さは33歳、ベテランの域に入っても健在、むしろパワーが衰えないまま円熟味を増してより強力になっていると言える。サービスゲームのキープ率は90%、そしてブレーク成功確率は35%と、素晴らしい数字を残している。

ツアーではシーズンを通してノヴァク・ジョコヴィッチ(セルビア)とトップの座を争った。ジョコヴィッチとグランドスラムのタイトルを二つずつ分けあい、タイトル数ならナダルを上回る5勝を上げた。ロジャー・フェデラー(スイス)もナダルと同じ4勝し、3位をキープ。今年もこの3人がトップを独占した。

脅威の勝率の裏には勇気ある決断

今季のナダルの活躍で、特筆すべきは89%という勝率だ。これはジョコヴィッチやフェデラーを凌ぐ。この高い勝率を支えたのは、シーズン全体を見据えたコンディション管理だ。グラスコートで6試合しか戦っていないことからもわかるが、ナダルは今シーズン、ウィンブルドン以外のグラスコートの大会には出ていない。グラスコートシーズンをコンディション調整にあてたのだ。

この決断は勇気がいるものだが、理にかなっている。ナダルが芝でタイトルを獲得したのは、2015年のメルセデスカップ(ATP250)までさかのぼる。一方で過去2シーズンでは全米オープン(2017年)やロジャーズカップ(ATP500、2018年)とハードコートでは結果を残せている。

そのため、ナダルは全豪のハードコートシーズンと得意のクレーコートシーズンをフルパワーで戦ったあと、コンディションを整える時間を確保し、後半戦を万全の状態で臨むことができた。これはフェデラーが得意のグラスコートシーズンに備えてクレーコートの大会出場を制限していることと同じだ。ベテランらしい巧みな試合運びを、十分なパワーで遂行できる。ナダルを筆頭にBIG3がいまだトップに君臨し続ける理由はここにある。

ラファエル・ナダル 2019シーズン戦績ⒸSPAIA ラファエル・ナダル 2019シーズン獲得タイトルⒸSPAIA

2年続く新世代の台頭

BIG3がトップを支配する男子テニスで待ち望まれることは新世代の台頭。その急先鋒がATPファイナルズを制したもう一人の“王者”ステファノス・チチパスだ。BIG3がなかなか衰えず、錦織圭やドミニク・ティーム(オーストリア)ら中堅選手が壁を突破できずにいる中、チチパスやアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)ら下の世代からの突き上げが目立ち始めた。

若干21歳のチチパスだが、今季はATPファイナルズを含むツアー3勝。また全豪オープンでは準決勝進出を果たしたほか、マドリード・オープン(マスターズ1000)では準決勝で“赤土の王“ナダルを破るなど、大きなインパクトを残した。

ATPランクの最終順位は自己最高の6位。前年のNexGenで優勝し、すでに期待の若手筆頭として認知されていたチチパスは、ファイナルズ優勝でトッププレーヤーとしての地位を築いた。

TOP10を下してビッグタイトルを獲れるか

どの選手にも言えることだが、1シーズンの輝きだけでその後の地位が盤石になるわけではない。チチパスがここからさらなる栄光を掴むためには、2020シーズンはより大きな大会でBIG3を下してタイトルが欲しい。厳しい見方をすると、ATPファイナルズ以外の2タイトル獲得には、BIG3がエントリーせず、トップ10以内の選手とは当たらなかったという幸運があった。

ATPファイナルズ以外でトップ10と対戦した成績は、14戦6勝。トップ10との連戦があるマスターズ1000、グランドスラムでは最後のところで力尽きた。マスターズ1000のカテゴリでは決勝に進んだマドリード・オープンはジョコヴィッチに完敗。BNLイタリア国際ではフェデラーの途中棄権で勝ち進んだ準決勝でナダルに敗れるなど、BIG3との差を見せつけられる形でタイトルを逃した。

一層の飛躍を遂げるため、2020シーズンではトップ10選手との連戦を制し、上位カテゴリの大会で好成績を収めることが求められる。

チチパスのプレー面での伸びしろは、わずか20%のリターンゲームの勝率だろう。ナダルやジョコヴィッチといったリターンゲームでも試合を自分のリズムにできる選手は35%近い数字を持ち、フェデラーやズベレフ、錦織も25%前後のリターンゲームの勝率を持つ。ブレークして試合全体のリズムを自分のものにするのは、格上相手に不可欠な要素だ。それを身に着けられるか、来年のチチパスに注目したい。

ステファノス・チチパス 2019シーズン戦績ⒸSPAIA ステファノス・チチパス 2019シーズン獲得タイトルⒸSPAIA

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