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女子テニスは3年間で四大大会優勝者10人 群雄割拠でシーズンがさらに過酷に

2019 9/11 11:00橘ナオヤ
全米オープンで優勝したビアンカ・アンドリースクⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

群雄割拠の女子テニス

この夏の全米オープンで、新たな女王が誕生した。グランドスラムでシングルス通算23回優勝という驚異的記録を持つ“絶対女王”セリーナ・ウィリアムズを下し、カナダ人選手初の全米オープンチャンピオンに輝いた若干19歳のビアンカ・アンドリースクだ。

大坂なおみに敗れた昨年に引き続き、またしても“母になって初のグランドスラム優勝“を果たせなかったセリーナ。妊娠・出産のために戦列を離れた2017年シーズン以降、WTAツアーの戦いはし烈さを増している。それは、“次期女王”と目される選手が続々と出現しているためだ。

17年シーズンからの3シーズン、グランドスラムタイトルを獲った選手は10人。この間複数のタイトルを獲ったのは、大坂なおみとシモネ・ハレプのわずか2人。参考までに男子の情報をあげると、同じく3シーズンにグランドスラムで優勝したのは、“BIG3”と呼ばれるラファエル・ナダル、ノヴァク・ジョコヴィッチ、ロジャー・フェデラーの3人だけ。また、それ以前から、アンディ・マリーを加えた“BIG4”がグランドスラムタイトルをほしいままにしている。

女子では“BIG3”や”BIG4”のようなトップ選手グループが形成されず、群雄割拠の様相を呈している。

これまでにないペースで若き女王候補が出現

男子とは異なり、「新女王候補」が次々と現れ、消えずに長くトップ争いを続けている女子。この状況を読み解くために、まず注目したいのが女子選手の早熟化だ。女子選手が男子に比べ、早熟化傾向にあることは多くのスポーツで共通している。

全米女王アンドリースクは19歳、グランドスラム優勝者である大坂やエレーナ・オスタペンコも、初優勝時の年齢は20歳と若い。そこに、22歳のガルビネ・ムルグサや23歳のスローン・スティーブンス、バーティが続く。過去でも、マルチナ・ヒンギス、マリア・シャラポワ、そしてセリーナなど、若くしてトップに立つ選手が多い。

つい数年前まで、これほど幅広い世代に女王候補が多くひしめき合うことはなかった。ところが近年、選手個人やコーチ陣による心身のマネージメント技術が発達。それにより、一度落ち込んだとしてもパフォーマンスを取り戻すことも比較的容易に。早熟であるがゆえに必然的にその後のトップ争いに長く加わることが可能になった。セリーナは、まさにその代表格と言える。

世代交代が進まず

セリーナの離脱前から、キャロライン・ウォズニアッキ、ペトラ・クビトバ、ハレプらをはじめとした“新女王候補”が複数名出てきた。しかしWTAは勢いだけで何シーズンも戦えるものではない。一度頂点には立つものの、後にその多くがコンディションに苦しむ。その結果、絶対女王の牙城を崩せず、完全な世代交代にまでは至らなかった。

17年シーズン、全豪オープン優勝後にセリーナが離脱し、何人かの選手が復調したことや、ウォズニアッキら4大大会優勝者がベテランと呼べる域に入り、いよいよ世代交代が進むかと思われた。

だが、17年にはムルグサやオスタペンコ、18年には大坂、19年にはアシュリー・バーティやアンドリースクなど “新女王候補”が次々に登場。その結果、 “セリーナ一強体制“は崩れたものの“BIG3”のようなグループは形成されず、ここ数年の女子テニス界は世代交代が進まないまま多くの実力者が混在している。

実力が拮抗しシーズンはより過酷に

選手同士の実力が拮抗しているとなれば、大会の序盤戦から全力で臨まなければ勝てない。ただでさえ過密スケジュールが問題となっているテニス界。シーズン後半ともなれば、多くの選手が体力を消耗しているはず。

事実、夏のアメリカシーズンや秋のアジアシーズンを離脱する選手が続出するため、全米オープンやWTAファイナルズでは毎年異なる選手が優勝している。ツアーを戦い続けるためにはできるだけ体力の消耗を少なくし、落ち込んでも短期間で浮上できる術を持つ必要がある。

果たして今後“セリーナの後継者”は現れるのだろうか、それともこのまま群雄割拠の状況が続くのだろうか。また、ファンが待ち望んでいるようにセリーナの復活優勝はあるのだろうか。どう転んでも、女子テニスは面白い展開が期待できそうだ。