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錦織圭タイブレークの勝率はATPで1位 勝負強さとその課題

2019 5/26 07:00SPAIA編集部
タイブレークの勝率1位の錦織圭Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

プレッシャーにかかる場面に強い錦織

26日開幕の全仏オープンテニスで第7シードとなった錦織圭は、プレッシャーがかかる場面に強いことがデータで示されている。ATP(男子プロテニス協会)の公式ホームページのプレッシャーに強い選手のランキングを示した「アンダープレッシャーリーダーズ」という項目を見てみると、錦織は全体の3位となっている。

これは2019年5月現在、世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)や四大大会20回の優勝を誇るレジェンド、ロジャー・フェデラーを上回る記録なのだ。かつて錦織は「メンタルが弱い」と評されたこともあったが、実際にはそんなことはない。むしろ錦織は「プレッシャーに強い」と考えられ、ATPにあるデータがそれを裏付けている。

タイブレークは無類の強さ

そして、錦織が最も得意としているもの、それは「タイブレーク」である。タイブレークとはゲームカウントが6-6になった場合、1セットを取るプレーヤーを決めるために行われる7ポイント制の「延長戦」だ。

錦織圭のスタッツⒸSPAIA

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錦織はタイブレークで驚異的な力を発揮することが知られている。2019年5月現在のATPのタイブレーク勝率を調べてみると、なんと80.8%と驚くべき数字を記録している。単純計算でタイブレークを10回行えば、そのうち8回は制している計算になる。

実際、錦織のタイブレークを少しばかり振り返ってみると、昨年のマスターズ上海大会準々決勝の第2セットを落とすまで、タイブレーク12連勝を記録していた。また、2019年1月の全豪オープンでは1回戦と4回戦で勝利を収められなかったタイブレークはあったものの、今年から設けられた最終セット10点制のスーパータイブレークにもつれ込んだ場合も全て制し、改めてタイブレークでの強さを物語っている。

錦織の課題は?

錦織のタイブレークの勝率は目を見張るものがあるが、その半面、ある問題点も浮き彫りになる。

それは本来圧勝しなければならないような相手に対しても、長い時間の試合をすることになってしまうということだ。タイブレークは先ほども述べたように延長戦と考えられるため、もつれ込んでしまうとどうしても試合の時間も長くなる。つまりタイブレークの勝率が高くなる理由としては、「短い時間で試合を終わらせるほどの圧倒的な強さがない」とも言え、余分に体力を消耗してしまうことになる。

また、余談ではあるが、錦織は最終セットに持ち込まれた時の勝率も63.2%で比較的高い数字を記録し、2019年1月まではATPツアー歴代1位の76.2%を誇っていた。最終的には勝ち切れる確率が高いため、いいのではないかと思うかもしれない。

しかし、いまだ錦織が持っていない四大大会のタイトルを獲得するには、5セット制の長い試合を7回勝利しなければならない。そうなると最終セットまで戦ってしまう試合が多ければ、体力の消耗は避けられなくなる。自身の課題として「短い時間で試合を終わらせること」と語っていた錦織。本人も以前から感じていたことなのかもしれない。

大会ごとの調子も関係するため、接戦となる試合もある中でタイブレークの勝率やフルセットの勝率が高いことはもちろん誇らしいことである。ただ、大きなタイトルの獲得に向けては、早く試合を終わらせて体力を残せる圧倒的な錦織圭を見せることがどこまでできるのか、キーポイントにはなってくるだろう。