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錦織圭が世界ランク6位浮上もベスト4敗退。ワウリンカに復活の兆し

2019 2/19 07:00橘ナオヤ
錦織圭,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

調子の良さを見せた錦織

2月11日から17日にかけて、オランダのロッテルダムで行われたABN・AMROワールド(ATP500)。全豪オープンでベスト8だった錦織圭は、ベスト4の成績に終わった。

当初エントリしていたアレクサンダー・ズべレフ(ドイツ)、マリン・チリッチ(クロアチア)、ニック・キリオス(オーストラリア)が参加を辞退。ズベレフが参加を取りやめたことにより、錦織はNo.1シードでの参戦となった。そのほか、バウティスタ・アグート(スペイン)やリュカ・プイユ(フランス)も辞退しているが、カレン・ハチャノフやダヴィド・ゴファンなど豪華な顔ぶれもあり、決して楽な大会とはならなかった。

プレーの安定感、高い集中力をキープ

ピエール・ユーグ・エルベール(フランス)の気合の入ったプレーに苦戦し、初戦から2時間超のフルセットマッチを強いられた錦織は、全豪で痛めた右足も問題を感じさせず、徐々に調子を上げていった。

特に2回戦のゲルビス戦では、第1セットで5ゲーム連取と絶好調。191cmの長身のゲルビスのサーブにも冷静に対応し、ストロークでウィナーを積み重ねる。第4ゲームでサービスエースからポイントを取られるまで、なんと14ポイント連取をしてみせた。

初顔合わせとなったマートン・フチョビッチ(ハンガリー)が相手の3回戦序盤は、ストローク真っ向勝負となった。だが、ベースラインでのプレーが世界トップクラスの錦織は、ストローク対決で次々と勝利し、フットワークの良さを披露。また、ドロップショットにも落ち着いて対処し、要所でのネットプレーも成功。終盤ガス欠になったフチョビッチにはなす術が無く、錦織が準決勝進出を決めた。

ここまで、1stサーブの得点率は75%と高水準で安定。ブレークも許しファイナルセットとなった初戦のエルベール戦は、1stサーブ得点率が84%とサービスゲームで崩れなかったことが勝因だ。

試合を重ねるごとにストロークやネットプレーといったプレー精度が増し、スタートダッシュや先行を許す場面では巻き返す。要所での集中力は素晴らしく、全豪の準々決勝では力尽きた姿を見せた錦織だったが、その影響を感じさせなかった。

“世界一のバックハンドの名手”に復活の兆し

試合ごとに調子を上げていった錦織の準決勝の相手は、スタン・ワウリンカ(スイス)。かつて全豪、全英、全米とグランドスラムを3度制し、Big4の後継者と称された名手だ。2018年に左膝を負傷して以降は怪我に苦しみ続け、かつては3位に入ったATPランクも263位に。だが、治療に専念したことで、今シーズンの全豪オープンで復帰をはたすと、この大会でも順当に勝ち上がってきた。

スコア上では互角の戦いとなった試合。第1セットはワウリンカが3ブレーク、第2セットは錦織が2ブレークで取り返す熱戦。そして第3セットは一転してのキープ合戦と、両選手の好プレーが集約された試合となった。

結果、ワウリンカが錦織を上回り、錦織の1stサーブの得点率は5割にとどまった。一方、7割超のワウリンカはストローク戦も互角。左右の打ち分けはもちろん、戦術的に長短ショットを織り交ぜ、錦織をネットにおびき寄せるようなプレーも見せた。

オールラウンダーと言われる錦織も、相手がネットプレーヤーではなくワウリンカとなれば分が悪い。かつて“世界最高のバックハンドの使い手”とも言われたワウリンカのショットは、以前のキレを取り戻しており、錦織からいくつもウィナーを奪った。粘り強いワウリンカを前に、要所で決めきれず無理にコースに打とうとし、アンフォーストエラーを重ねたことも敗因のひとつだろう。結局、錦織は2‐6、6‐4、4‐6でワウリンカに競り負け、準決勝敗退となった。

決勝ではガエル・モンフィス(フランス)がフルセットの末にワウリンカを下し、約1年1カ月ぶりで通算8度目となるツアータイトルを獲得した。今回、タイトル獲得は叶わなかったワウリンカだが、2度の手術以来、初の決勝でフルセットの戦いを見せ、調子が上向いていることを示した。また、大会開始時点で66位のランキングを上げるべく、今後の前進を誓った。

次戦の舞台はUAE

ベスト4敗退となった錦織は、3回戦勝利時点でロジャー・フェデラー(スイス)を抜き、6位にランクを上げた。

次戦の舞台は2月25日にアラブ首長国連邦(UAE)で行われる、フェデラー、チリッチ、ハチャノフ、ステファノス・チチパス(ギリシャ)らが参戦予定のドバイ・デューティ・フリー・オープン(ATP500)だ。今大会はワウリンカに屈したものの、ドバイではどんなテニスを見せてくれるのか楽しみだ。