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進化した錦織、因縁のチリッチを撃破 4年前の全米とは逆の結果に

2018 9/7 13:01SPAIA編集部
錦織圭,全米テニス,2018,準々決勝,Ⓒゲッティイメージズ
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4年前の雪辱を果たす勝利

全米オープンテニスは男女のシングルスでベスト4が出揃った。そこには前回王者ラファエル・ナダルや前回ベスト4のフアン・マルティン・デルポトロ、元世界No.1のノヴァク・ジョコヴィッチとともに、錦織圭の名前がある。

錦織圭が最も優勝に近いグランドスラム、それが全米オープンだ。2014年には準優勝、そして2016年にはベスト4入りを果たしている。

前回から2年越しとなったが、グランドスラムの中で最も相性が良い大会だ。

一方で、今大会は錦織にとって厳しい大会とも言われていた。トーナメント4回戦でA.ズベレフと、その次にはジョコヴィッチと戦う山に入ったからだ。昨シーズンの負傷離脱から復帰して以降タイトルを取れていないことも不安材料として見られていた。

ここまで、2回戦のモンフィス、3回戦のシュワルツマン、そして4回戦はA.ズベレフを破り勝ち上がったコールシュライバーを相手に勝ち進んだ。

そして準々決勝で対峙したのが、2014年大会でグランドスラム初制覇を目前に苦杯を飲まされた、マリン・チリッチだった。錦織はその大会以来4年間、四大大会決勝戦から遠ざかっている。

4時間超えの熱戦を制する

チリッチとの準々決勝は4時間超の熱戦となった。

第1セットの錦織は立ち上がりでつまずき、ファーストサーブの確率は40%、ミスも連発してしまう。対するチリッチはうまく試合に入った。サービスエース、ストロークの調子が良く、第4ゲームで早々にブレーク。このセットは錦織に見せ場はなく、6-2でチリッチが先制した。

第2セットもチリッチペースで試合が進み、第6ゲームでチリッチが先にブレークを奪う。

ここまでまさに14年大会決勝の再現だった。

直後の第7ゲーム、突如としてチリッチが崩れる。ストロークのミスを連発し、錦織がブレークバックするとゲームの流れは完全に変わった。錦織は第9ゲームで再びブレークすると、その勢いのままセットを奪い返した。

錦織が主導権を握ったかに思われた続く第3セット、第1ゲームを早々にブレークする。しかしチリッチも徐々にリズムを取り戻し、第8ゲームでブレークバック。このセットでチリッチは5本のサービスエースを決める。

ハイレベルな戦いが繰り広げられ、セットの行方はタイブレークへ。

錦織はここで訪れたチャンスを逃さなかった。チリッチの連続ダブルフォルト直後、強力なバックハンドのリターンエースを叩き込み、セットカウント2-1と逆転。集中力を切らさないプレーでリズムを取り戻しかけたチリッチのミスを誘った。

完全に息を吹き返したチリッチが逆襲に出た第4セット。サービスキープが続いたが、第7ゲームで錦織はブレークを許してしまい、そのままチリッチにセットを奪い返されてしまう。

このセット、チリッチはファーストサービス成功時の勝率が93%、ネットに出れば4/4でポイントを奪うなど完璧に近いプレーを披露した。

再び流れが分からなくなる中、迎えたファイナルセット。これまで苦しみ続けていたチリッチのサービスをついに錦織がとらえた。

互いにひとつずつブレークして迎えた第10ゲーム。チリッチはファーストサービスを全て入れたが、錦織は全てリターン。そして迎えたマッチポイント、錦織がクロスにリターンエースを打ち込み、4時間を超えた熱戦を制した。

好調な相手にも集中を切らさず、強烈サーブを攻略

この試合でカギとなったのは集中力。そして錦織のバックハンドとチリッチのサービスだ。

常々言われてきた錦織の課題、集中力。

今大会は4回戦まで積極的な攻めで試合を支配した。チリッチ戦では、1セットダウンになっても自分の集中力を維持できたのが大きい。

14年大会決勝で、錦織は優勝を意識してプレーが空回り、落ち着きを失い、自分のプレーを貫いたチリッチに完敗した。

チリッチは勢いに乗ると厄介だが、好プレーとミスを繰り返すことが多い。勢いづかせず粘り強く返球していればチャンスが巡ってくる。

この試合もチリッチは調子を崩した第2セット以降ミスが増えた。スタッツを見ると、サービスエースとウィナーの数はチリッチが大きく上回り、随所でエースを決めていた錦織のおよそ2倍のウィナーを決めていた。

だがミスの数も多く、アンフォーストエラーは70にものぼる。錦織は第1セットで精彩を欠いたが、以降は高い集中を保ち、セットを奪い返された第4セットも互角の戦いだった。勢いに飲まれることなく常に一定のパフォーマンスを維持し続けた姿は、14年大会決勝と大きく異なる点だ。

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そしてチリッチ最大の武器であるサービスを錦織がとらえたのが勝負の分かれ目だった。第4セットまでのチリッチはファーストサービスでの得点が48、得点率は83%だったが、ファイナルセットでは、その確率は45%にまで落ちた。

チリッチは22本のファーストサービスを決めたが、ポイントをあげたのはわずか10本。強烈なサーブを見切り、ついに因縁の相手を、同じアーサー・アッシュ・スタジアムで打ち破った。

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リベンジを果たした錦織の準決勝の相手は、13連敗中のジョコヴィッチだ。14年大会準決勝でも対戦しており、この時は錦織が3-1で勝利している。

錦織がグランドスラムを獲得するためには、ビッグ4は必ず立ちはだかる壁だ。スランプを脱し好調のジョコヴィッチだが、錦織は彼を倒せる数少ない選手の一人だ。悲願のグランドスラム優勝のために、錦織が大きな壁に挑む。