「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

ウィンブルドン女子ダブルスベスト4!二宮真琴選手の開花

2017 8/25 10:07ムラカミケイ
ウィンブルドン
このエントリーをはてなブックマークに追加

二宮真琴選手、グランドスラムで4強入りの躍進

二宮真琴選手は2017年、テニスの聖地・ウィンブルドンでの全英オープン女子ダブルスで、レナタ・ボラコバ選手(チェコ)と組み、ベスト4進出の快進撃を見せた。
日本人選手がこの大会の同種目で4強入りを果たしたのは、2013年に準決勝に進出した青山修子以来である。
杉山愛以来10年ぶりの日本人の決勝進出は惜しくもならなかったものの、グランドスラムの大舞台で躍動し、強い存在感を放った二宮真琴選手はどんな選手なのだろうか? 同年代の選手たちと合わせて人物像と魅力に迫りたい。

「花の94年組」とは

「花の94年組」という言葉をご存知だろうか?1994年生まれの日本人選手のなかに目覚ましい活躍を見せる選手が多いことから生まれた呼称である。
「花の94年組」の選手には、フィギュアスケートの羽生結弦選手を始め、プロ野球の大谷翔平選手、藤浪晋太郎選手、競泳では瀬戸大也選手、荻野公介選手、スピードスケートの高木美帆選手など、多岐なジャンルに渡る分野で、世界的に活躍する選手や、業界を背負って立つ選手の枚挙にいとまがない。
94年生まれという、日本経済が低迷するタフな時代に育った世代は、しばしば「さとり世代」などとと呼ばれ、合理的で現実的な感性が特徴的であると言われる。
そんな世代的な感覚が、勝負勘や、試合に向けたメンタルコントロールにマッチするものなのだろうか?それともたまたまこの世代に有力な選手が育ったのだろうか?いずれにせよ、スター選手たちの存在が、観客やまわりの選手へポジティブな刺激を与え、活発な競争が繰り広げられていることは確かである。
二宮選手もまた1994年生まれ。彼女も「花の94年組」の一人である。 しかし、よほどのテニスファンでなければ、今年の活躍まで彼女の名前を耳にしたことはなかったのではないだろうか。
折しも先の1月、共に二宮選手の同期である穂積絵莉選手と加藤未唯選手のペアが、4大大会である全豪オープンでベスト4進出を果たしていた。
女子テニスの世界では、一足先に二宮選手と同期の「花の94年組」の選手たちが席巻している状況だったのである。その華々しい活躍の影に隠れるかたちとなって、これまであまり二宮選手が注目されることがなかったのだ。

全豪で穂積さんと加藤さんがベスト4にいってたので、まだ追いつけてないという気持ちのほうが強い。まだあんまりうれしいっていう感じじゃないです。

出典: THE TENNIS DAILY

と、ウィンブルドンでベスト8へ初進出を決めた時に二宮選手は語った。グランドスラムのベスト8という快挙を成し遂げた瞬間ですら、彼女の視線は同期の選手たちの背中を追っていたのだ。
ベスト8では足りない……。
「花の94年組」の選手たちの間での対向意識の強さが垣間見えた瞬間だった。

二宮選手の軌跡

二宮選手がテニスと出会ったのは、母親について行ったテニススクールでのことだった。3才の時から母親の横でスポンジボール遊びを始め、6才の頃にはコートでラケットを振り始めた。小学校6年の時に中国・四国地区の合同ジュニア合宿のメンバーに選ばれるなど、早くから頭角を現した。14才のときには全日本ジュニア選手権大会U-14ダブルスで全国大会初優勝を果たしている。
高校に進学せずにテニスに専念する道も考えたというが、通信制高校に通いながら数々の大会に出場する道を選んだ。
17才のときには国際大会で初優勝を成し遂げた。ITF womenトヨタワールドチャレンジ ダブルスでタイトルを取ったのだ。数々の大会で優勝を経験し、2013年、18才でプロ入りを果たした。
ジュニア大会やITF(WTAツアーの下部大会)で数え切れない実績を上げた彼女は当初、同期の中でも強い輝きを放っていただろう。
けれど、先に大きな結果を出していったのは1994年生まれの他の選手たちだった。

女子テニス「花の94年組」の選手たち

女子テニス界の「花の94年組」が注目を集めることになったのは、日々野奈緒選手の活躍に端を発する。 2015年にタシュケント・オープンでシングルス優勝を勝ち取り、WTAツアータイトルをおさめると、ランキングトップ100にも食い込んだ。2016年には全豪オープンでグランドスラム本戦初出場を果たす。
二宮真琴選手とは高校の同級生であった尾崎里紗選手も、2016年にトップ100に名を連ねた。ダブルスでも尾崎選手は青山修子選手とのペアでWTAツアー準優勝を飾る。
穂積絵莉選手は前述の加藤未唯選手とのペアでベスト4進出したのに加え、シングルスでも全豪オープンで予選を突破した。加藤選手もまた5月の全仏オープンでシングルス本戦出場を果たしている。

二宮選手の開花

示し合わせたようにライバルたちが怒涛の活躍で実績を連ねていくなか、二宮選手も2016年、ジャパン女子オープンテニスで青山修子選手とのペアでWTAツアー初優勝を果たしていたが、シングル・ダブルスともに一歩出遅れていた。
不安や焦りが掻き立てられたであろうことは想像に難くない。
しかし、ここで腐らずに地道な努力を重ね、前向きに持てる力を最大限に発揮するメンタルの強さが、二宮真琴選手の武器のひとつだ。強力なライバルの存在はまた、二宮選手の大きなモチベーションにもつながったのだ。
ウィンブルドンでの快進撃は、そんな彼女の迷いのない思い切りの良いプレイが支えていた。
積極的にポーチに出て、軽快なフットワークで次々とポイントを奪い、小柄な体格をぶつけるようにしてきれのよいリターンを決めるなど、アグレッシブなプレイで試合の展開を牽引した。体格の良いボラコバ選手とのコンビネーションを、試合を重ねるごとに洗練させていく、試合運びの上手さも目立った。大舞台でのびのびと自分のプレーを徹底することができた。
決勝進出まであと2ポイントというところまで迫った場面でも、自ら仕掛け、勝負に出る。集中力の極限における交錯だった。相手に逆を突かれ、チャン・ハオチン(台湾)/モニカ・ニクレスク(ルーマニア)ペアに軍配が上がったが、試合を決めに行く一打を果敢に放った。

静かな闘志

準決勝は、あと2ポイントのところまでいきましたが、その2ポイントはまだまだ遠かったです……。勝負をしたし、最後まで走り回ったので悔いはありませんが、決勝に行って表彰台に立ちたかった、と後からどんどん悔しくなりました。

出典: 二宮真琴選手|応援サイト - サタケ 二宮選手からのメッセージ

と、試合後、二宮選手は思いを吐露した。
その悔しさは、ウィンブルドンというこの上ない大舞台で臆せず戦ったからこそのものだろう。
この経験を糧として、静かな闘志を胸に秘め、さらなる大輪が咲き誇る日を期待せずにはいられない。 個性的な選手揃いの「花の94年組」の中でも、二宮選手の活躍が楽しみである。
また、二宮選手を含め、勢いに乗る「花の94年組」の選手たちの、これからの活躍に目が離せない。