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【全日本卓球選手権】早田ひな五輪代表伊藤、石川に連勝して初のシングルス日本一

2020年全日本卓球選手権大会の早田ひな選手Ⓒマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

盟友伊藤美誠に昨年の雪辱を果たす

2020年全日本卓球選手権大会は女子シングルス決勝が行われ、早田ひな(日本生命)が石川佳純 (全農)をゲームカウント4-1で下して初優勝、女子ダブルスとの2冠を達成した。

昨年は女子ダブルスでペアを組む、同級生の伊藤美誠(スターツ)に準決勝で敗退しベスト4に終わっていた。今年も昨年に続き伊藤と準決勝で対戦になり、フルゲームまでもつれる大接戦を制して、伊藤の女子シングルス3連覇と3年連続3冠をストップさせた。そして、決勝では石川を相手にゲームカウント4-1と勝利。東京オリンピック女子シングルス代表に内定した2選手を下しての優勝だった。

2019年は伊藤や石川、平野美宇(日本生命)といった面々と東京オリンピック代表選考レースを展開していたが、早田はランキングで3選手を上回ることが出来ずにオリンピック代表からは外れてしまった。年間を通してワールドツアーを転戦し「どこに住んでいるのかわからない」と本音を漏らすほど過酷な日程で試合を積み重ねていたが、早田はこの経験でさらに強くなっていた。

早田は、同年生まれの伊藤、平野らと共に「女子卓球黄金世代」と言われているうちの一人だ。身長166㎝と女子卓球の選手としてはリーチがある。長い手足から繰り出されるダイナミックなフォアドライブは強烈。これまでも世界選手権で伊藤と組んだ女子ダブルスではメダルを獲得していたが、シングルスとなると目立った成績とまではいかず、同級生の伊藤や平野に先行を許す状況でもあった。

しかし、2018年秋に開幕した日本初の卓球プロリーグ「Tリーグ」で日本生命レッドエルフの一員としてシングルス11連勝を記録するなど、シングルスでも実力を発揮できるようになっていた。ファイナルでは袁雪嬌(当時木下アビエル神奈川)との激闘を制して、チームを初代女王に導く活躍を見せている。

最後まであきらめない

全日本選手権女子シングルス決勝で対戦した石川とは、昨年6回戦で対戦経験があり、その時も4-1で早田が勝利を飾っていた。そして、昨年12月30日のTリーグでも対戦している。これまでもTリーグでは1ゲームマッチのビクトリーマッチでは対戦していたが、5ゲームマッチ(3ゲーム先取)では初めての試合となった。

この時は両者一歩も引かない大接戦となった。第1ゲームではサーブ権を獲得した石川がリードし早田が追いかける展開、8-10と石川が一度はゲームポイントを獲得するが、その後2本続けてバックがミスショットとなり10-10と追い込まれていた。Tリーグは最終ゲームとビクトリーマッチ以外はデュースが無い為、次の1本で勝負が決まり、早田は石川にフォアハンドを打ち込まれて10-11と第1マッチを落とすことになる。第2ゲームは序盤から両者譲らない展開となり、4-5から早田が3連続得点を2回達成するなど、先に10-6とゲームポイントを握るものの、石川に4連続で得点を許して10-10と同点にされる。最後は早田が得点して11-10とし、ゲームカウント1-1のタイとなった。

第3ゲームは石川に7-10とゲームポイントを先に許すが、早田がここから圧巻の4連続得点で11-10とゲームを獲得し、第4ゲームは石川が8-11と奪って、勝負は最終第5ゲームまでもつれ込む。第5ゲームは6-6からスタート。1点を取り合う展開が続き10-10とデュースとなる。その後お互いに1点を獲得し11-11となったが、最後は早田がサーブを決めて13-11とこのゲームを奪い、ゲームカウント3-2で早田が激戦を制した試合だった。

試合が終わってから、早田は石川との対戦について「もう思いきってやるだけでした。お互いに点数を取りたい気持ちが強かったので、そこで1本我慢して決められるときに勝負できたというのが最後1点を取れた勝因かな」と分析する。

この試合は全てのゲームが大接戦となり、どちらに勝利が転んでも何ら不思議ではなかった。「どんなに負けていても最後まであきらめないという気持ちが、大事な場面で1点を取れる気持ちに繋がるかなと思いましたので、最後まであきらめないという気持ちは大事」と早田は石川と対戦を通じて「最後まであきらめない」ということを実践していたのだ。

2019年はワールドツアーを転戦し、日本以外の国で多くの試合を積んでいた。海外で試合を転戦していた時は、試合以外の食生活や移動の面でもタフさを求められたに違いない。「もっと強くならなきゃとか、思える1年でした」と当時の状況を振り返っていた早田は、この経験を生かして卓球全日本選手権に照準を合わせていた。

これまでのダブルスに加えて、シングルスもTリーグ参戦をきっかけに、今回の全日本選手権も制して本格化の兆しが見えてきた。早田は2020年のテーマに「挑戦」を挙げる。これからも様々な戦いに挑んで、勝負所で負けない選手を目指して欲しいところだ。