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卓球ワールドカップ団体戦から考察 日本と中国の差とは?

2019 11/16 06:00マンティー・チダ
卓球ワールドカップ団体戦の伊藤美誠Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

いずれも中国が優勝 卓球ワールドカップ団体戦2019TOKYO

11月6日(水)~11月10日(日)に開催された卓球ワールドカップ団体戦2019TOKYO。来年に控える東京オリンピック会場である東京体育館にて同じ試合形式で行われ、男女ともに中国が優勝。11月10日に幕が閉じた。男子は8連覇、女子は9連覇と、卓球王国の力を存分に見せつけられた格好となった。日本は女子が銀メダル、男子は銅メダルを獲得。いずれも中国に敗退した。

日本は以下のメンバーで戦った。
※世界ランキングは11月1日時点。

【男子】
張本 智和(木下グループ) 世界ランキング:5位
水谷 隼(木下グループ) 世界ランキング:13位
吉村 真晴(名古屋ダイハツ) 世界ランキング:48位
神 巧也(T.T彩たま) 世界ランキング:52位
丹羽 孝希(スヴェンソン) 世界ランキング:11位

【女子】
伊藤 美誠(スターツ) 世界ランキング:7位
石川 佳純(全農) 世界ランキング:8位
平野 美宇(日本生命) 世界ランキング:10位
佐藤 瞳(ミキハウス) 世界ランキング:19位

2016年リオデジャネイロ五輪団体戦では男子が銀メダル、女子が銅メダルであった。金メダルまであと一歩のところまで力をつけてきたが、ここでも中国が立ちはだかった。中国に勝利できる力が無いと、来年に控える東京オリンピックで日本の金メダルは厳しい。改めて日本と中国の差はどこにあるのか?ワールドカップ団体戦を中心に考察をした。

女子は決勝で中国に敗戦 伊藤美誠が孫穎莎に逆転負け

女子日本代表の結果は以下の通り。

【グループリーグ グループB】
日本 3-0 オーストリア
日本 3-0 アメリカ
※グループB首位通過で決勝トーナメントへ

【決勝トーナメント】
準々決勝 日本 3-0 ルーマニア
準決勝  日本 3-1 韓国
決勝   日本 0-3 中国

準決勝の韓国とは数字以上の激戦となり、エース伊藤が劣勢になりかけながらもシングルス2勝を挙げてチームの決勝進出に貢献。しかし、決勝で対戦した中国にはストレート負けを喫し、またしても中国の壁は突破できなかった。詳細は以下の通り。

【女子決勝】
石川佳純/平野美宇 0-3 陳夢/劉詩雯
伊藤美誠 2-3 孫穎莎
平野美宇 0-3 劉詩雯

ゲームを取れたのは、第2試合のシングルスの伊藤のみ。伊藤は世界ランキング3位の次世代エース孫穎莎(ソンエイサ)相手に第1ゲーム、第2ゲームと連取。第5ゲームまでもつれ込むが、10-7とマッチポイントまで持ち込んだところで、5連続失点で逆転負けを喫する。変幻自在なサーブで孫穎莎を翻弄し、終始攻める姿勢を出してきたが、終盤、追い詰められた孫穎莎が繰り出した捨て身のプレーの前にミスを連発した。

伊藤は、昨年の世界卓球2018団体戦で劉詩雯(リュウシブン)に勝利し、今大会で敗戦したものの孫穎莎に対してもあと一歩まで追い詰めることができた。多彩なサーブから始まる強気の姿勢で戦う事が出来れば、中国相手にも引けを取らない。

今回の女子は、世界ランキング10位以内の3選手(伊藤、石川、平野)とカットマン佐藤という布陣で臨んだが勝利を掴むことが出来なかった。伊藤とあともう1人、中国相手に計算できる選手が出てくれば、団体戦で勝機が見える。中国もこれまで以上に日本をライバルとして見ているようであり、そんな彼女たちの本気に向かっていく闘争心こそ日本に一番求められることではないだろうか。

男子は準決勝で中国に敗退 水谷隼不在ながら強豪ドイツに勝利も韓国の躍進は脅威

男子の結果は以下の通り。

【グループリーグ グループB】
日本 1-3 イングランド
日本 3-1 オーストリア
※1勝1敗2位通過で決勝トーナメントへ

【決勝トーナメント】
準々決勝 日本 3-1 ドイツ
準決勝  日本 0-3 中国

今大会の男子日本代表は、リオデジャネイロ五輪団体戦銀メダルメンバー(水谷、吉村、丹羽)に加えて、日本のエースに君臨する張本、ここ1年で一気に世界ランキングを上げてきた神というメンバー構成で臨むはずだった。

しかし、全日本選手権史上最多10回優勝の水谷が腰痛で欠場することを発表。初戦のイングランド戦を吉村とダブルスに挑む予定だったが、急遽オーダーを丹羽に変更。二人はリオデジャネイロ五輪団体戦でダブルスを組んだ経験もあるが、急造ペアという部分はぬぐえないまま本番を迎えていた。

試合は、グループリーグ初戦でイングランドに1-3と黒星スタート。張本が相性の良くないピッチフォードに敗れると、吉村と丹羽もシングルスで敗れて苦しい船出。続くオーストリアには3-1で勝利し、グループBを2位通過で決勝トーナメント進出を決めた。

決勝トーナメント初戦の相手は、世界卓球2018団体戦準優勝のドイツ。世界ランキング8位のボル、12位のオフチャロフ、16位のフランチスカという実力者を揃えてきたが、張本がオフチャロフとフランチスカに勝利、吉村が格上のボルをストレートで下して、マッチカウント3-1で準決勝に進出となった。

しかし、日本は準決勝で王者中国にストレートで敗戦。

【男子準決勝】
丹羽孝希/吉村真晴 0-3 梁靖崑/許昕
張本智和 0-3 樊振東
吉村真晴 1-3 許昕

世界ランキング1位の樊振東(ハンシントウ)、2位の許昕(キョキン)、7位の梁靖崑(リョウセイコン)で挑んできた中国に対し、日本は吉村のシングルス1ゲームしか奪えなかった。全く歯が立たなかったように見えるが、そこまでひどく悲観する内容でもない。張本はストレートで敗れたが、バックを得意とする樊振東と壮絶なバックラリーを展開し、第3ゲームにいたってはデュースまで持ち込むことができた。吉村は許昕から1ゲーム奪い、得意としているハイリスクハイリターンのサーブと言われる、アップダウンサーブが序盤では通用していた。

中国の選手は相手のビッグショットに対しても1回は確実にレシーブできる力を持っている。相手のレシーブに対して威力のあるフリック(卓球台上で払うショット)で打ち返すが、これだけだとしっかりボールを捉えられる。捉えられてもビッグショットを決めることができなければ、得点にできないというシーンが多く見受けられた。例えば、許昕は吉村のアップダウンサーブに対応出来始めると、強打やドライブに対してもしっかりボールを捉えていた。レシーブを打ち砕ける攻撃が出来ないと、中国からの勝利は厳しい。

ただ、水谷不在というアクシデントの中で、ドイツに勝利するだけの実力を示したことは収穫である。張本はドイツ戦でシングルス2勝するなど、日本のエースとして役割を果たした。また、ストレートで敗れた樊振東(中国)に対しては、バックもフォアももう一歩ステップアップできれば勝負できるはずだ。実際、昨年のアジアカップでは勝利している。

今大会、脅威だと感じたのは、実は韓国の存在である。韓国は、Tリーグでプレー経験がある李尚洙(イ・サンス)、鄭栄植(チョン・ヨンシク)、張禹珍(ジャン・ウジン)を中心に構成し、世界卓球2018団体戦準々決勝で日本を1-3で下している。これまで中国の対抗馬として、日本が1番手で追いかけていたが、韓国がここに割って入ってきている。日本としては、中国と向き合う前に韓国に対して確実に勝利できる力をつけておきたい。