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日本の「お家芸」水泳の名実況5選

2016 11/10 19:16
水泳
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Photo by MSSA/Shutterstock.com

日本で人気のあるオリンピック競技の一つとして水泳が挙げられる。大会の度にメダルの量産を期待できる「お家芸」ともいえる分野だが、テレビ観戦で競技を盛り上げてくれるのが実況だ。今回は水泳の名場面を盛り上げた実況について紹介する。

今なお語り継がれる水泳の名実況「前畑がんばれ」

五輪において日本人女性初の金メダルとなった人物といえば競泳の前畑秀子選手だ。1936年のベルリン大会200メートル平泳ぎにおいて、実況を担当したNHKの河西三省氏が20回以上連呼した「前畑がんばれ」は今なお語り継がれる名実況として大変有名だ。
前畑選手は32年のロサンゼルス五輪でわずか0.1秒差の銀メダルとなり、引退も考えたものの周囲の金メダルに対する期待の高さから競技を続行した上での頂点だった。
当時は家庭にテレビは普及しておらず、現地の詳細な様子はラジオでしかわからなかったが、熱い実況に国民は「臨場感が伝わった」と高評価だったそうだ。

水泳実況で選手につけるキャッチコピーがとにかく笑える古舘伊知郎

近年のスポーツ実況を面白おかしく伝える話術においては、古舘伊知郎氏の右に出る者はいないだろう。中でも世界水泳の実況を務めた際には国内外を問わず、実況をしながら名選手に全て思いつきのキャッチコピーをつけていき話題となった。2003年の世界水泳では新鋭だった北島康介選手を出身地にちなんで「西日暮里の河童伝説」、オーストラリアのスイマー・イアンソープ選手は「一人無敵艦隊」など、視聴者を笑わせる面白いスポーツ実況を届けてくれた。

古橋広之進をかばった飯田次男アナウンサーの名実況

1952年のヘルシンキ五輪では、男子400メートル自由形決勝に「フジヤマのトビウオ」こと古橋広之進選手が登場した。
数々の世界新記録を打ち立てたものの、選手生活を戦前と戦後の間に送ったため、ようやく念願がかない出場することができたヘルシンキ五輪ではすでにピークを越えていた。
結局、このレースは8位に終わってしまうが、実況を担当したNHKの飯田次男氏は時折言葉に詰まりながら古橋の五輪にかけてきた思いを述べた上で「古橋を責めないで」と聴衆に訴えた。

国宝級のスポーツアナウンサー、島村俊治の名実況

最後に紹介するのはスポーツアナウンサーにおいて「人間国宝級」との呼び声が高い元NHKの島村俊治アナウンサーだ。
島村氏が担当した水泳の実況として有名なのは88年ソウル五輪における鈴木大地選手の実況だろう。島村氏は分かりやすい発声と実況には定評があったが、記憶に残る名台詞を発するタイプのアナウンサーではない。しかし、鈴木選手が最後の25メートルでスパートをかけてライバルとデットヒートを繰り広げた時には「逆転か、逆転か、逆転か」とNHKのアナウンサーらしからぬ大声を張り上げて金メダルの獲得を伝えた。

島村俊治が絶叫で伝えた岩崎恭子の金メダル名実況

島村氏が担当した水泳の伝説的実況といえば、92年バルセロナ五輪競泳史上最年少の金メダリストとして一躍時の人となった岩崎恭子選手のレースも挙げられる。
大会に入ってから急激に力をつけてきた岩崎選手が予選で2位で通過して迎えた決勝。「メダルへのスタート」と落ち着いたトーンで始まった島村氏の実況だが、残り25メートルの佳境に入ってライバル選手に並ぶと、まくしたてるような絶叫モードにスイッチ。「並んだ並んだ、さあチャンスだ、さあチャンスだ」と同じ言葉を必ず2回以上繰り返し連呼しながら切迫感のある実況を展開。「勝った!岩崎恭子、金メダルーッ!」の絶叫は「うるさい」との苦情が出るほどだった。

まとめ

アナウンサーの名実況には「前畑がんばれ」に代表される名言型と、声のトーンで試合の臨場感を伝える激情型の2通りがあることがわかった。特に水泳は戦況を逐一報告するように伝えなければならない難易度の高い実況だが、各アナウンサーとも実力と自身の持ち味を存分に生かした実況で人々の記憶に残る名調子を届けた。
水泳をテレビ観戦する際は、アナウンサーの癖に注目しながら実況を聴くとより楽しめるだろう。