特殊技、非技、禁じ手を解説
相撲の決まり手は82手ある。今回はそのうち、引っ掛けや素首落としなどの「特殊技」や勇み足などの「非技」、まげつかみなどの「禁じ手」について解説する。
相撲の決まり手は82手ある。今回はそのうち、引っ掛けや素首落としなどの「特殊技」や勇み足などの「非技」、まげつかみなどの「禁じ手」について解説する。
相手が低い姿勢で攻めてきた際、相手の腕や肩、前まわしを引いて、土俵に這わせるように自分の前に引き倒す。2019年夏場所千秋楽で阿炎が引き落としで玉鷲を破って10勝目を挙げ、敢闘賞を受賞した。
相手が突っ張りや押しで攻めてきた際に、相手の腕を両手でつかみ、手繰るようにして体を開いて倒したり、土俵外に出す。2017年初場所で宇良が東龍に決めた。
体を開き、片手か両手で相手の肩や背中をはたいて土俵に這わせる。立ち合い直後に変化して仕掛けることもある。
低い体勢で出てくる相手の首や後頭部を、手首か腕で上から押さえ付けてはたき落とす。相手の肩や背中をはたく「はたき込み」と違い、首をから上をはたくのが特徴。安美錦が2015年春場所で豪風に、同年九州場所で松鳳山に決めるなど得意にしていた。
相手のまわしを強く引き付けながら、もう一方の手で相手の脇を押すか、上腕部をつかんで押し込み、土俵の外に出す。両力士の体が割れたように離れることが由来だが、足がついていくと押し出しや寄り切りになる。稀勢の里が2012年九州場所で舛ノ山に決めるなど、得意にしていた。
土俵際まで寄られた際、俵にかかとを掛けて堪えながら相手を自分の腹に乗せて体を反らせ、横にひねって後方に投げ落とす大技。2016年夏場所千秋楽で、滅多に土俵際に追い詰められない白鵬が鶴竜に決め、全勝優勝を決めたことがある。土壇場での逆転劇の例えとしても使われる。
相手にもろ差しを許した際、差し手の外側から両腕を回して相手の両肘を締め付けて動けないようにし、そのまま土俵外へ寄り切る。極めた状態で横に倒せば「極め倒し」になる。極められた相手がケガしやすい危険な技でもある。貴ノ浪、水戸泉ら長身力士が得意な傾向にある。
相手に背を向けて後方に圧力をかけ、もたれ込むようにして相手を土俵から出す、もしくは倒す。リスクが高いため自分から仕掛けるのではなく、流れの中で偶然決まる技。高見盛が2004年名古屋場所で追風海に、2011年初場所で豊桜に決めて話題になった。
四つに組んだ状態から相手の差し手を引いて呼び込み、相手の体が浮いた瞬間に反動をつけて突き出して倒す。別名「仏壇返し」。「土俵の鬼」と呼ばれた初代若乃花の得意技で、白鵬が2013年秋場所で宝富士に決めたのが幕内では16年ぶりだった。
相手を土俵際に追い詰めながら、勢い余って自分の足を先に土俵外に出してしまうこと。2014年九州場所では日馬富士が当時前頭3枚目だった高安に敗れ、42年ぶりの勇み足による金星となった。
相手に攻められていない状態でバランスを崩すなどして自分の手を土俵につくか、技を掛けた方が先に手をついてしまうこと。「かばい手」との違いが分かりにくいため、論争を呼ぶことがある。
1972年初場所で横綱北の富士と対戦した大関貴ノ花が投げをうち、北の富士の手が先に土俵についたため行司は「つき手」と判定したが、物言いの結果「かばい手」と見なされ、行司差し違いで北の富士の勝利となった。貴ノ花は人気力士だったこともあり、相撲協会に抗議電話が殺到。行司の木村庄之助が進退伺いを提出するなど「伝説の一番」として語り継がれている。
相手の力が加わらない状態で自分の足を土俵外に出してしまうこと。2014年名古屋場所で稀勢の里と対戦した嘉風が踏み出しで敗れるなど、ごくたまにしか見られない。
相手が技を仕掛けていないのに自ら体勢を崩して腰から落ちること。2018年秋場所で白鵬と対戦した遠藤が腰砕けで敗れた。また、同年名古屋場所では、89連敗中だった体重70キロでの序ノ口・服部桜が、相手の腰砕けによって通算2勝目を挙げ話題になった。
相手の力が加わらない状態で自分の膝を土俵についてしまったり、技を掛けた方が先に膝をついてしまうこと。2019年秋場所で、5連勝中だった貴景勝がつきひざで遠藤に敗れて初黒星を喫した際は、貴景勝の右足が行司の左足と接触したことが原因ではないかと報じられた。
2015年春場所で、千代鳳が3場所連続まげつかみによる反則勝ちという珍事があった。勢の小手投げを受けた際、まげをつかまれたと判定され、前年の九州場所から3場所連続の反則勝ちは、十両以上で史上初となった。ちなみに「まげつかみ」は決まり手ではなく、反則勝ちとなる。
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