今場所はモンゴル勢6人、日本国内は23都府県
大相撲九月場所は9月8日、両国国技館で初日を迎える。大関・高安は夏巡業を全休、カド番の豪栄道、栃ノ心と、先場所で大関から陥落した貴景勝も不調が伝えられており、優勝争いは白鵬、鶴竜の両横綱が中心となりそうだ。
3日に日本国籍取得が告示された白鵬を筆頭に、長らく角界の一大勢力となっているモンゴル勢。そこで幕内力士の出身地を50年前までさかのぼって調べてみると、時代の移り変わりとともに出身地も大きく変遷していることが分かった。
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今場所、幕内のモンゴル出身力士は白鵬、鶴竜、逸ノ城、玉鷲、大翔鵬、東龍の6人。他に外国出身はジョージアの栃ノ心とブルガリアの碧山だけだ。日本国内の出身地も分散しており、23都府県にわたっている。最多は埼玉県(阿炎、北勝富士、大栄翔)、石川県(遠藤、炎鵬、輝)、兵庫県(貴景勝、妙義龍、照強)の3人となっており、かつて「相撲王国」と呼ばれた北海道は皆無だ。
10年前は6カ国15人の外国出身力士
10年前の2009年9月場所は外国出身が多い。モンゴル勢は東横綱だった白鵬と前頭3枚目だった鶴竜のほか、朝青龍が西横綱に君臨。大関・日馬富士や翔天狼、旭天鵬、時天空、朝赤龍、猛虎浪の9人が名を連ねていた。他にもジョージア出身が栃ノ心と黒海、ブルガリアの琴欧洲、エストニアの把瑠都、ロシアの阿覧、韓国の春日王とワールドワイドだ。
日本国内では青森県(安美錦、高見盛、岩木山、武州山、若の里、将司)の6人が最多、次いで高知県(豊ノ島、土佐豊、栃煌山)と大分県(千代大海、垣添、嘉風)の3人となっている。
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ちなみに優勝は14勝1敗の朝青龍。白鵬と横綱同士の決定戦を制して24回目の賜杯を手にしたが、翌2010年2月には暴行問題の責任を取って引退を表明している。
ハワイ勢が強かった20年前
20年前の1999年9月場所は様相がガラッと変わる。モンゴル勢は旭鷲山、旭天鵬の2人だけで、東西の横綱にはハワイ出身の曙と武蔵丸が君臨していた。最多は兵庫県(貴闘力、巌雄、琴龍、皇司、大日ノ出)の5人。次いで3人の青森県(貴ノ浪、若の里、海鵬)、千葉県(闘牙、敷島、琴ノ若)、東京都(貴乃花、若乃花、栃東)となっている。
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この場所は横綱曙と貴乃花、大関貴ノ浪が途中休場し、横綱若乃花が7勝8敗と負け越すなど上位陣が崩れる中、武蔵丸が12勝3敗で優勝して横綱の威厳を保った。
30年前は大関以上に北海道勢が4人
30年前の1989年になると外国出身力士自体が珍しくなる。大関だったハワイ出身の小錦が9月場所は5勝10敗と負け越したが、翌11月場所では14勝1敗で涙の初優勝を飾った。最多は鹿児島県(寺尾、霧島、陣岳、逆鉾、旭道山、薩洲洋)の6人。「相撲王国」北海道は2位の5人だが、北勝海、千代の富士、大乃国が横綱、北天佑は大関(騏乃嵐は前頭9枚目)と、道産子力士が各界を牛耳っていたと言えるだろう。
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9月場所中に史上最多の965勝をマークし、15戦全勝で29回目の優勝を果たした千代の富士は、場所後に国民栄誉賞を受賞した。
北海道と青森県で幕内の32%を占めた40年前
40年前の1979年になると偏りがますます顕著になる。トップは北海道(北の湖、旭國、琴若、双津竜、千代の富士、琴乃富士)と青森県(若乃花、貴ノ花、隆の里、出羽の花、三杉磯、魁輝)の6人で、幕内力士38人のうち32%を北海道と青森県勢が占めていたことになる。外国出身はハワイの高見山ただ一人。
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この頃は石川県出身の輪島と北海道出身の北の湖がしのぎを削った「輪湖時代」と呼ばれ、9月場所では北の湖が17回目の優勝を飾った。
「相撲王国」北海道勢が8人も
50年前の1969年は昭和の大横綱・大鵬の出身地である北海道勢がなんと8人もいた。大鵬の他、現在はNHK大相撲中継の解説でお馴染みの北の富士や長谷川、藤ノ川、朝登、高鉄山、明武谷、旭國が名を連ねた。2位は愛知県(玉乃島、若二瀬、栃王山、和晃)の4人、次いで青森県(陸奥嵐、二子岳、魁罡)の3人だった。唯一の外国出身力士だった高見山は25歳、前頭5枚目だった。
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最終成績は愛知県出身の大関・玉乃島が13勝2敗で優勝、大鵬は11勝4敗だった。
1991年3月場所以来優勝していない北海道
かつては相撲の盛んな土地に偏っていた出身地は、日本だけでなく世界に広がった。逆に1969年9月場所以降の50年でモンゴルに次ぐ79回の優勝を誇る北海道は、1991年3月場所の北勝海を最後に賜杯から遠ざかっており、今場所では幕内に一人もおらず、十両に矢後、一山本、旭大星の3人がいるだけとなっている。
変遷する角界の出身地マップ。今場所は陰りの見えるモンゴル勢が存在感を示すか、はたまた「新興勢力」が台頭するか、注目だ。