2年あまり続く安定感
7日に初日を迎える大相撲名古屋場所(愛知・ドルフィンズアリーナ)に向け、先月24日に発表された新番付。大関に復帰した栃ノ心、共に新三役、新小結を掴んだ阿炎、竜電といった面々の名前が目立つ一方で、三役連続在位記録を歴代単独2位まで伸ばしたのが東関脇の御嶽海だ。
今から約3年前の2016年九州場所で、初めて新三役に昇進。翌場所に平幕に戻るも翌々場所にすぐ三役の座を取り戻した長野県出身の26歳は、そこから現在に至るまで小結、もしくは関脇に在位し続けている。
西小結で迎えた今年初場所では、6日目妙義龍戦で左ひざを痛め翌7日目から休場。長らく続いた記録に終止符が打たれると誰もが思ったが、11日目の再出場から勝ち越しに成功したことにより三役の座を死守してもいる。
魁皇(元大関)、琴光喜(元大関)、豪栄道といった新旧大関陣と並ぶ2位タイ(14場所)に位置していた御嶽海は、今場所の番付発表により15場所連続で三役に在位。このままの流れでいけば、歴代1位の記録である若の里(元関脇)の19場所を来年中に更新することになる。
今回の詳細を伝える報道をみると、良くも悪くも安定感を発揮している御嶽海は「この1年間はあまり変化を感じられていない」と悔しさの滲むコメントを出している。ただ、三役での成績が大きく関わる大関昇進という点で言うと、その安定感が昇進を後押しするポジティブな材料であることもまた確かだ。
昨年名古屋場所で優勝を飾った際に「次の大関」として期待をかけられ、翌秋場所には実際に大関とりのチャンスが巡っている御嶽海。惜しくもその座は年下の貴景勝に譲ったが、この安定感にあと少しの上積みがあれば、大関とりのチャンスがそう遠くない未来に再びやって来ることは全く持って想像に難くない。
過去の長期在位力士のその後は?
三役を長く維持できる力士には当然それ相応の実力が備わっており、成績によっては前述したように大関とりも視界に捉えることができる。では、過去の長期在位力士たちは、その後どのような道のりを歩んでいったのか。三役連続在位ランキングを元に詳しく見ていこう。
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トップ10圏内に入っているのは、若の里から後の日馬富士である安馬までの11名。継続中の御嶽海を除く10名の内、6名は大関昇進、4名は平幕陥落により連続在位記録がストップしている。一定の実力をキープし続ける安定感は、その先の番付を狙う上でやはり大きな武器となり得るようだ。
ただ、陥落力士の中でも、魁皇や武双山といった力士はその後奮起して大関の座を掴んでもいる。一度記録がストップしても、「力量が落ちた」と決めつけるのは早計であるといって差し支えないだろう。ちなみに、魁皇は2000年9月場所の大関昇進後、2011年7月場所での現役引退まで65場所その座を守り、千代大海(元大関)と並ぶ1位タイの大関在位記録を打ち立ててもいる。
また、注目すべきは8位タイに位置する武蔵丸と安馬。この両名は小結、関脇での経験を経て大関、さらにはその先の横綱まで昇進を果たしている。角界の最高位まで辿り着いた武蔵丸と日馬富士は、前者が12回、後者が9回賜杯を手中に収めている。
三役の座を長く維持し続けるためには、毎場所勝ち越し以上をマークし続けることが必要不可欠。そして、そのような成績を残すためには格上相手にどれだけ勝てるかと共に、格下相手にどれだけ取りこぼさないかが非常に重要となる。武蔵丸、安馬の両名をみると、この時の経験がほぼ全ての力士が格下となる横綱という地位でも少なからず生きていることが大いに伺える。
今場所12勝以上の成績をマークすれば、先場所の9勝を含めて大関とりが浮上することは濃厚。名古屋場所の御嶽海は安定感を保ちつつ、もう一皮むけることができるだろうか。