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貴景勝、突き押し貫く平成最後の大関が進むべき道

2019 4/1 15:00橘ナオヤ
相撲,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

平成歴代6番目の若さで昇進

平成最後の本場所となった三月場所には象徴的な2人の力士がいた。

1人目は幕内最多となる15度目の全勝優勝を果たした横綱白鵬。優勝も42回目と、こちらも自身の最多記録を更新し、圧倒的な強さを見せつけた。

一方で、話題をさらったのは千賀ノ浦部屋の22歳、期待の若武者だ。貴景勝が初優勝した昨年の十一月場所以来、三場所連続で2桁勝利した成績が評価され、大関昇進を果たしたのだ。1958年に年6場所制が定まって以降、2019年3月時点で初土俵から28場所での大関昇進は、日本人力士としては史上最速となる。外国人力士を含めても6番目と、かなりのスピード出世となった。

突き押しが決まり手75%以上

貴景勝の持ち味は、「押し出し」「押し倒し」「突き出し」「突き倒し」が代表的な決まり手である「突き押し相撲」。立ち合いから低く勢いよくぶつかると、小気味良いリズムで突きを繰り返し、一気に土俵の外に相手を出してしまう。175cmと小柄ながら力自慢の力士で、埼玉栄高校時代にはベンチプレスで200kg以上を記録した。

初優勝を飾った2018年十一月場所から大関昇進を決めた三月場所の三場所で、合計34勝11敗という成績を残しているのだが、白星の75%以上である26勝を、「突き押し」の4手であげている。さらに、一月場所では11勝中9勝を「押し出し」で決めており、とことん突き押し相撲に特化している。

突き押しが得意な力士は「引き落とし」や「引き倒し」といった決まり手も得意としており、貴景勝も例外ではない。実際、この三場所で「引き落とし」で4勝を上げている。

横綱を目指すには四つ相撲が必要か?

貴景勝本人はこの突き押しのスタイルに磨きをかけていきたいと意気込んでいるが、「四つ相撲は序二段レベル」と認めるくらい組み相撲を苦手としている。この取り口の狭さは最大の懸念でもある。

上背がなくリーチのない貴景勝は、まわしを取られると成すすべなく敗れることが多い。三月場所終了後には「それなりに四つ相撲も覚えなければ」と、白鵬も取り口の種類を広める必要があると説いている。

現役の大関や横綱の中でこれほど突き押しに特化した関取はおらず、皆幅広い取り口で相撲が取れる。平成を振り返ってみても、千代大海や曙、武双山くらいだ。奇しくも「四つは序二段・三段目レベル」と語ったように千代大海も四つを苦手とし、取り口が多様な上位勢である白鵬や朝青龍を苦手としていた。

このままでは綱取りはおろか、大関としても活躍できるのかが心配になる。貴景勝が不安視されるのには、こういった背景があるのだ。

突き押しで変幻自在を貫くべきか

対して、このまま突き押しを極めるべきという意見もある。荒磯親方は、下半身の強化によって突き押し相撲が進化していると指摘し、「今の相撲を続ければ間違いない」と言う。

確かに、パワーだけではない貴景勝の突き押し相撲の強さは、下半身が強くなったことで立ち合いのスピードが以前より速くなっている。また、突き押し一辺倒と言われながらも判断が巧みで、相手に合わせて「押し」「突き」「引き」を繰り出す器用さを持っている。三月場所の白鵬戦でも、取組み後半でまわしを取られるまでは横綱相手に五分の突き押し合戦を披露した。

しかし、まわしを取られるとまったく相手にならない。それは技術というよりも体格の問題がある。上位力士の中でも192cmと大柄な白鵬に対し、小柄で腕の短い貴景勝。白鵬のまわしに手すら掛けられなかったのだ。この取り組みを見る限り、中途半端に四つや前三ツを覚えるよりも、変幻自在の突き押しを極める方が貴景勝には向いているように思える。

「四つ」を習得するのか「突き押し」を極めるのか、新元号「令和」のもと行われる五月場所で、新大関貴景勝の覚悟が見られるだろう。

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