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稀勢の里引退、玉鷲の初優勝、休場御嶽海の三賞受賞……波乱の展開となった初場所

2019 1/28 17:14橘ナオヤ
相撲,ⒸShutterstock.com
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稀勢の里は引退…残る横綱も休場

平成最後の初場所で、平成最後の日本人力士が引退を表明した。2018年11月場所で4連敗ののち休場した際、師匠の田子ノ浦親方に「最後のチャンスをください」と語った稀勢の里。並々ならぬ気合をもって臨んだ初場所のはずだったが、初日に御嶽海に押し出しで敗れると、そこから力なく3連敗。そして引退を決意した。

2012年の初場所に大関に昇進すると、2017年の三月場所に横綱昇進するまでの31場所、負け越したのはたった1場所のみ。休場もわずか1場所のみと、近年の角界ではまれに見るほどの丈夫な体を持ち、二桁勝利を24場所もあげるほどの名大関。しかし、横綱昇進後の2017年3月場所で肩を負傷して以降、以前のような相撲を取ることができなくなっていた。

残る二横綱の鶴竜と白鵬も振るわない。鶴竜は初日こそ栃煌山を突き出して白星を飾ったものの、相撲が安定せず右足首の負傷のため6日目から休場。これで、横綱昇進してから7度目の途中休場だ。また、10日目まで無傷だった白鵬も、11日目に前日まで4日間休場していた御嶽海に押し出しで金星を与えてしまう。そこから立て続けに玉鷲と貴景勝に敗れたのち、「力が入らない」と14日目から休場。白鵬の休場は最後の2日間だったとはいえ、2場所連続で横綱不在になってしまった。

また大関勢も苦しんだ。初日に高安、豪栄道、栃ノ心の三大関が揃って黒星発進となり、栃ノ心と豪栄道は4連敗を喫した。高安と豪栄道はその後持ち直して9勝6敗と勝ち越したが、栃ノ心は右太もものケガのため5日目から途中休場。三月場所は2度目のカド番となる。

若手が台頭する中、優勝はベテラン玉鷲

一方で今場所好調だったのが、序盤は錦木と御嶽海、後半は玉鷲と貴景勝だ。10日までは白鵬が全勝、玉鷲と千代の国が二敗で追走。貴景勝、魁聖、遠藤、矢後らが三敗という構図となった。だがそこから白鵬が崩れ、千代の国は休場し、矢後は連敗。魁聖と遠藤も崩れる中、2敗、3敗を守った玉鷲と貴景勝の二人に優勝争いは絞られた。

貴景勝への期待が高まる中、優勝したのは玉鷲だった。前半戦で貴景勝と御嶽海に敗れたものの、その後は豪栄道や高安にも負けず、6日目から10連勝。12日目には白鵬と14回目の顔合わせで初勝利を挙げ、千秋楽では貴景勝が取る結びの一番を前に優勝を決めた。34歳2か月での初優勝は史上2番目となる年長の記録。よって、優勝力士に送られることの多い殊勲賞と敢闘賞を獲得した。

先場所で優勝した貴景勝は、最後まで優勝の可能性を残したが千秋楽で豪栄道に敗れ、2場所連続優勝とはならなかった。しかし、大関昇進の目安である「三役で33勝」を達成。三月場所でも二桁勝利をあげれば3場所連続二桁勝利となり、大関昇進の可能性は濃厚。押し出しを中心に初日の正代には突き出し、13日の白鵬戦では引き落しと臨機応変な取組を見せ、技能賞を獲得した。

御嶽海も初日から2日連続で稀勢の里と鶴竜の二横綱を破り、豪栄道、貴景勝、玉鷲の上位陣から次々と白星を挙げた。だが、6日目の妙義龍戦で負傷すると、そこから4日間休場。復帰した11日目の白鵬戦では気迫で全勝の横綱に土をつけた。

この勝利で全勝力士が消え、優勝争いの様相が変わった。そして、4日休場したにもかかわらず勝ち越しを決め、更に3横綱全員から金星をあげたことが評価され、殊勲賞を受賞した。休場した力士が三賞を受賞するのは、1947年の三賞制定以来初の珍事だ。

横綱の引退や休場、そして大関勢の不振といった話題の一方で、貴景勝や御嶽海、失速したものの矢後といった若手の台頭が目立ったことで世代交代の機運が高まっているようにも感じる。それでもベテランの玉鷲が優勝と、未だ新時代を牽引する存在がいないのが気がかりだ。

牽引役候補の筆頭である貴景勝が大関昇進となれば、世代交代は加速するだろう。だがベテラン勢も層が厚く阻む可能性もある。三月場所は角界の行方を左右する場所となりそうだ。

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