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角界に異変アリ。2018年の大相撲を振り返る

2018 12/30 11:00橘ナオヤ
稀勢の里Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

土俵の内外で変化の兆し

2018年も角界では様々な出来事があった。前年末に発覚した日馬富士による貴ノ岩暴行問題を巡り、貴乃花親方(当時)と日本相撲協会との対立が続いた。土俵の外では1年を通じて複数の暴行問題、そして貴乃花親方と協会の対立を中心とした話題で持ちきりとなった。

その一方、土俵の上では横綱勢の休場が相次ぎ、特に稀勢の里の休場が目立った。日本人横綱として期待を集めたが、横綱としての連続休場ワースト記録を更新するなど、とても期待に応えられたとは言えない。

そんな中、若手の台頭やベテランの復活にも注目が集まった。栃ノ心は前半戦で優勝を含む3場所連続二けた勝利をあげ大関昇進。また後半戦では御嶽海や貴景勝といった平成生まれの日本人力士が相次いで初優勝を飾った。大横綱白鵬を頂点とする勢力図が長らく続いていたが、2018年にはこの構図に変化がみられた。象徴的なトピックを3つ見ていこう。

大関昇進、栃ノ心の活躍が目立った前半戦

今年前半に活躍したのが、春日野部屋所属、ジョージア出身の栃ノ心だ。初場所では14勝1敗で自身初となる幕内総合優勝を達成。殊勲賞、技能賞の三賞ダブル受賞も果たした。

この活躍で関脇に昇進すると、翌三月場所でも二けた白星を挙げ、殊勲賞を獲得。五月場所では不戦勝を含め12連勝。12日目には白鵬から白星を挙げた。優勝は逃したものの最終成績は13勝2敗。再び敢闘賞と技能賞のダブル受賞を果たした。

3場所連続での二けた白星という成績を受けて、五月場所後には大関昇進が決定。春日野部屋からは実に半世紀以上ぶりの大関誕生となり、ヨーロッパ出身力士としては琴欧洲、把瑠都に続き史上3人目の大関となった。

今年前半の幕内は、日馬富士が引退し、稀勢の里や白鵬が休場続きだったため、栃ノ心ら番付上位の力士にとってチャンスだった。その機を逃さず3場所連続の二けた勝利を達成したのは見事。ただし、7月場所で途中休場してからはギリギリでの勝ち越しが続き、早速カド番も経験した。2019年は大関としての真価が問われる。

横綱勢は停滞気味、稀勢の里は期待を裏切る結果に

2018年の横綱勢の印象は、「意地」と「ネガティブ」がキーワードだ。

日馬富士の引退で白鵬、鶴竜、稀勢の里の三横綱体制。鶴竜は2場所で休場したが、上半期には他の二横綱が不在の中、気を吐いた。三月場所、五月場所に自身初となる連覇を遂げ、横綱としての意地を見せた。

白鵬は九月場所に全勝優勝と幕内通算1000勝を達成し、大横綱として、また偉大な記録を打ち立てた。その一方で、両足に負傷を抱えて4場所で休場。白鵬が1年で優勝1回のみに終わったのは、横綱昇進後最悪の成績だ。

そんな中、三横綱で最も相撲ファンを失望させたのが稀勢の里だ。2017年一月場所後に日本出身力士として19年ぶりに横綱に昇進し注目と期待を集めたが、今年は6場所中なんと5場所で休場。七月場所の休場で、昨年から数えて8場所連続休場という横綱の連続休場記録を更新してしまった。唯一15日出場した九月場所では、10勝5敗と横綱として最低限の成績は残している。

十一月場所では横綱として87年ぶりとなる初日から4連敗を喫し、5日目から途中休場。進退問題につながる休場を決断した際、師匠の田子ノ浦親方に「もう一度チャンスをください」と悲壮な願いを訴えた。

だが、横綱審議委員会は異例となる「激励」を決議。横審の決議には厳しいものから引退勧告、注意、激励等があり、引退勧告は昨年暴行問題を起こした日馬富士に対して決議された。横審が激励を決議するのは今回が初めてで、稀勢の里はここでも不名誉な記録を打ち立ててしまった。一月場所は正真正銘、進退をかけた場所となる。

暴行問題、部屋消滅、初優勝…波乱の中心に貴乃花部屋

昨年末から角界を賑わしたのが貴乃花部屋だ。

貴乃花部屋は角界を悩ます暴行問題の中心となってしまった。日馬富士による暴行の被害にあった貴ノ岩が一月場所を全休。本来幕下降格のところを特例措置で十両に残り、三月場所から土俵に復帰した。

その後九月場所から幕内復帰を果たしていたものの、冬巡業中になんと付け人への暴行が発覚。暴行の被害者となってからわずか1年後に加害者となった貴ノ岩は、責任をとる形で引退した。これ以前にも、弟弟子の貴公俊が新十両として迎えた三月場所で付け人に暴行を働き、謹慎。幕下に陥落していた。

そして、貴乃花部屋は部屋そのものがなくなってしまった。九月場所終了後、貴乃花親方が突然日本相撲協会に引退届ならびに退職届、弟子たちの転籍願いを提出。所属力士たちは千賀ノ浦部屋へ転籍となった。

騒動続き、そしてあまりにも急な貴乃花部屋の終焉。その中でポジティブな存在だったのが貴景勝だ。年間3場所で二桁勝利というまずまずの成績。十一月場所では初優勝を果たした。貴乃花部屋では貴ノ岩に次いで入幕を果たすなど部屋期待の若手だった貴景勝。激動の2018年で手にした優勝をきっかけに、更なる飛躍が期待される。