「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

大学出身力士が大成することは難しいのか

2018 4/18 13:16奏希01
力士
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

スピード出世のからくり

相撲界でよく「スピード出世」という言葉を聞くことがある。すい星のごとく現れ幕内力士になりスター扱いをされるのだが、これにはからくりがあることが多々ある。

一般的に大相撲は序ノ口から始まり、勝ち星を重ねることによって序二段、三段目、幕下、十両、幕内と昇進することができるようになっている。
しかし、大学生の大会などアマチュアで優秀な成績を収めた力士を対象に「幕下付け出し」という優遇制度がある。これによって上の番付からプロデビューできるというシステムだ。

大学出身力士が大成しない理由

記憶に新しいのは人気力士の遠藤のスピード出世だ。
平成25年の3月場所に幕下付出10枚目としてデビューし、その場所に5勝2敗で幕下3枚目に昇進。翌5月場所でも5勝2敗となり十両昇進を決め、7月場所には14勝1敗で十両優勝を果たし、わずかデビュー4場所目にして幕内力士となった。
しかしその後は勝ち負けを繰り返し、三役の前で足踏みを続けている。

スピード出世を果たした時にはメディアが騒ぎ、将来大関は確実と言われていたが、そう簡単にはいかなかった。背景には大学の相撲部とプロの大相撲の本質的な違いがあるとされている。
大学生力士は強化よりも結果をもたらさなければいけないのだ。「すぐに結果を求めてしまう」姿勢が、プロになってからの取り組みにも表れてしまうため、大学出身力士が大成しないのかもしれない。

大学出身力士は横綱を諦めなければいけないのか

中卒・高卒力士は、15日に渡って力を出し続けるということに慣れている。また、大学生の試合がトーナメントなのに対し、常に7番なり15番対戦を行うプロの力士は「この場所でどう勝ち星を重ねるか」という体作りを行っている。
そういった「地力」を持ち、相撲漬けの日々を送ってきた中卒・高卒力士を相手に大学出身力士が勝つには、並々ならぬ努力が必要だろう。

しかし、横綱相手に金星4個を獲得した遠藤を見て分かるように、全く歯が立たないというわけではない。大学出身力士は学生時代に培った「結果を出す強さ」を持っている。
得意の「ここ一番」での勝負強さを武器に、横綱への道を切り開くことも不可能ではない。

大学出身力士に期待すること

最後に大学出身力士の一番陥りやすい「急降下」について取り上げたい。大学出身力士はスピード出世を果たす力士が多く、突如として世間から注目を浴び、期待に応えようと稽古に励む。
そして急激に体重を増やしたり、対策を取られ得意の形を封じられたりした結果、ケガをしてしまったり自分らしい相撲が取れなくなってしまったりすることがある。

実際に常幸龍や宇良は、番付を調子よく挙げ一気に注目を浴びたのは良かったのだが、今度はそれ以上の速度で番付を下げている。
横綱を目指すのであれば、スピード出世以外に自分のスタイルを磨き地力をつけることも重要で、ただ勝つことだけを目指すだけでは、大関はおろか三役すら難しい。