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初場所で優勝!幕下陥落から見事復活した栃ノ心

2018 3/12 14:30奏希01
土俵
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問題渦巻く初場所でファンを魅了

2018年の初場所は異様な雰囲気での開催となった。というのも11月場所中に日馬富士の貴ノ岩に対する暴行事件、相撲協会での内輪もめ、式守伊之助のセクハラ問題といった悪いニュースばかりがはびこっていたからだ。

さらに追い打ちをかけるように、過去に行われていた春日野部屋の兄弟子から弟弟子への暴行、大砂嵐の無免許運転問題など不祥事が相次いだ。思えば2017年の初場所は稀勢の里が初優勝、さらには横綱に昇進し、相撲人気に再び火がついた。稀勢の里の弟弟子である高安が大関に昇進したまではよかった。

しかし、稀勢の里のけががなかなか回復しない。さらには鶴竜も休場を繰り返した。そこへ上記に挙げた年末の騒動が重なり、相撲界は険しい眼差しで見られることとなった。そんな中、初場所で圧巻の相撲を見せて、ファンを魅了し続けた力士がいる。ジョージア出身の怪力力士、栃ノ心である。

集中力でプレッシャーに打ち克つ

初場所で大旋風を巻き起こした栃ノ心。彼の凄かったところは、集中力ではないだろうか。握力が左右ともに90kgという怪力(ちなみに日馬富士は70kg程度)に、力任せにならない上手を引く正攻法が加わり、初日から6連勝を記録。7日目に横綱鶴竜相手に初黒星をつけてしまったが、その後も切れることなく連勝を重ねた。

12日目に鶴竜が連敗を喫したため、勝ち星で単独首位に躍り出た。さらに13日目も栃ノ心が勝って鶴竜が負けたため、優勝に王手をかけて14日目を迎えた。14日目の取組前、今にも吐いてしまうのではないかというくらいの緊張感が栃ノ心から伝わってきた。それでも土俵に上がると、シミュレーション通りの取り組みで松鳳山を下し、見事初優勝を手にした。続く千秋楽も勝利し、14勝1敗という見事な成績で初場所を終えた。

栃ノ心の苦悩

モンゴル人力士が優勝を積み重ねる昨今、日本人力士が優勝すると館内は割れんばかりの歓声があがる。しかし、ジョージア出身の栃ノ心が優勝した際も、ファンは日本人が優勝した際同様に惜しみない拍手を送った。それは、けがをしても足腰を砂浜で鍛えるなど地道な訓練を重ねるといった、栃ノ心の人柄によるものではないだろうか。

栃ノ心は、ロシア生まれの総合格闘技サンボのヨーロッパチャンピオンに輝くなど、もともと力がある力士で、すぐに頭角を現す。2008年5月場所には幕内にあがり、2010年7月場所には小結にまで躍進した。

しかし2013年7月場所で右膝前十字靱帯などを断裂。4場所連続で休場を余儀なくされ、幕下55目まで番付を下げてしまう。自分より若い力士が上の番付に名を連ねることにより、不安を感じることは少なくなかったはずだ。実際にジョージアにいる父も「戻ってきていいよ」と口にしたという。

回復から快進撃へ

再び幕内に返り咲く道のりは、栃ノ心にとって果てしなく絶望的なものだったのではないか。それでも連勝を重ね、2014年の3月、5月場所と幕下で2場所連続優勝を果たした。さらに同年7月、9月場所には十両で優勝。栃ノ心の実力からすると下位の番付とはいえ、4場所連続で優勝という快挙を成し遂げる。再び幕内に戻ると安定した成績を残し、小結から前頭の上位にいることが多くなった。

両国国技館まで足を運ぶ相撲ファンは、そんな栃ノ心の苦労を知っていたのだろう。紆余曲折を経て優勝までこぎつけた栃ノ心に対して、涙を流す者までいた。横綱である白鵬、稀勢の里が休場、さらには上位陣が精彩を欠いた初場所。栃ノ心が救世主のごとく輝いて見えたのは、私だけではないはずだ。

栃ノ心の番付は、前頭3枚目だった。この番付は、自分より上位の力士との対戦が多く、幕内力士でも最も番付を下げやすい地位にいるといっても過言ではない。そういった番付での優勝であった。

ジョージアでの報道

栃ノ心の初優勝に対して、日本だけでなく故郷ジョージアでも称賛の声が鳴り響き、家族はもちろん国全体が盛り上がっている。在日ジョージア大使館のレバン・ツィンツァザ駐日全権特命大使は、栃ノ心を「全国民の誇り」と称し、何らかの賞の贈呈を国に打診した。

ジョージアには、日本の国民栄誉賞に相当する「プレジデント・オーダー・オブ・エクセレンツ」というものがあり、それを授与する可能性すらあるのではないかと大使は語る。日本に渡って力士として活躍することは、それくらい国民に影響力を及ぼすということなのだろう。これは日本人にとってもうれしい限りだ。

ジョージアという国について

栃ノ心がジョージア出身と紹介してきたが、日本人にとっては、あまりなじみのない国名ではないだろうか。それもそのはず、ジョージアはもともとロシア語読みの「グルジア」という国名だった。2015年の法改正で、英語読みの「ジョージア」と改められたのだ。新しい国家のように錯覚されがちなジョージアだが、「グルジア」といえばピンと来る人も少なくないだろう。

栃ノ心がさらなる活躍をすることで、ジョージアという国名が日本に浸透し、それが日本とジョージアの懸け橋にもつながるだろう。大関昇進がかかる栃ノ心の3月場所から目が離せない。

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