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最年長現役力士 安美錦の相撲人生とは

2018 1/18 15:34跳ねる柑橘
力士
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現役最年長!安美錦竜児

2017年の十一月場所で、昭和以降最年長の幕内再入幕を果たした力士をご存知だろうか。伊勢ヶ濱部屋の安美錦関だ。
1997年の初土俵から約20年のキャリアを誇るベテラン力士で、これまでに8つの金星と12回の三賞受賞を誇る。

2003年に、横綱貴乃花から自身初の金星を奪ったのもこの安美錦。貴乃花はこの取組みの翌日に引退を表明しており、これは彼を語るうえで有名なエピソードだ。
度重なる膝の大ケガを乗り越え、柔剛織り交ぜた考える相撲を展開。39歳で迎える2018年も第一線で気を吐く。そんな安美錦のこれまでを辿った。

兄弟関取、最年少入幕として名を轟かせる

安美錦の本名は杉野森 竜児。1978年10月3日、青森県に生まれた。高校卒業と同時に入門した安治川部屋には、実兄の安壮富士がおり、のちに兄弟関取となった。

師匠の伊勢ヶ濱親方は父のいとこでもあり、幼い頃から相撲に近い環境で育ったといえる。初入幕は2000年7月で、これは当時の幕内最年少だった。
新入幕となった七月場所では、10勝5敗という好成績をおさめて敢闘賞を受賞。そこから17年以上のキャリアで、殊勲賞4回、敢闘賞2回、技能賞6回と計12回の三賞受賞経験がある。

もともとは軽量な力士であり、力強い相撲というよりは技巧派として知られていた。ベテランになってからは、183cm141kgの体躯をいかした相撲も織り交ぜ、更に相撲の幅を広げている。2006年十一月場所には小結に、そして翌2007年九月場所で関脇に昇進。三役在位は通算で15場所となっている。

相次ぐケガと十両陥落も、考える相撲を磨く契機に

安美錦は2003年七月場所に、前十字靱帯と半月板を損傷。2009年初場所でも右膝のケガが再発し、途中休場。
2013年九月場所では、左膝の内側半月板損傷と左膝前十字靱帯損傷の大ケガを負うも、気迫のリハビリを続け、十一月場所に出場した。

2015年三月場所でも膝を痛め途中休場。2016年五月場所では、2日目に左アキレス腱の断裂し残りを休場。翌七月場所も全休したため、同年九月場所では2004年十一月場所以来約12年ぶりとなる十両陥落が決定した。
苦しめられ続けてきた膝のケガだが、この負傷を機に考える相撲をとるようになった。量より質の稽古を積み、取組み前のイメージトレーニングを徹底。考える相撲を磨いていった。

最年長再入幕と涙の敢闘賞

十両陥落となった2016年九月場所は、関取連続在位100場所目だった。十両に落ち、ベテランとして体のキレも失い始めた安美錦だったが、千秋楽に勝ち越しを決める。
ここから2場所連続で勝ち越すも2けた勝利には届かず、2017年初場所には5勝10敗と負け越してしまう。

しかし、三月場所と五月場所には十両優勝に絡む好相撲をとり、七月場所には10勝5敗で十両の優勝次点という好成績。九月場所でも10勝5敗と二けた勝利で、十両優勝の決定戦に進んだ。
結果として十両優勝は無かったものの、十一月場所で8場所ぶりとなる幕内再入幕を果たす。39歳0か月での再入幕は昭和以降で最年長となった。

この場所では、初日から5連勝と勢いに乗ったがその後負けが続く。だが千秋楽に勝ち越しを決め、新入幕となった2000年七月場所以来となる103場所ぶりの敢闘賞を受賞した。
勝ち越し、敢闘賞受賞には思わず涙を流した。

最年長ということもあり、幕内で通用するか、しないかという不安もいっぱいあった安美錦を支えてくれたのは、家族の存在だった。2013年に夫人と結婚し、これまでに一男二女を授かっている。
特に2017年7月に生まれたばかりの長男の存在は、再入幕への大きな励みになったといい、再入幕を果たした十一月場所では支えてくれる家族のためにもと踏ん張り、千秋楽での勝ち越しとなった。

金星は現役最多!柔剛織り交ぜた考える相撲で相手をいなす

安美錦は現役力士の中では金星獲得数が最多で、その数なんと8つ。特に朝青龍との相性が良く4つの金星を上げている。
そのほかは貴乃花、武蔵丸、白鵬、鶴竜から各1つずつ金星をあげ、最後にあげたのは2016年初場所の鶴竜からの金星だ。2009年夏場所の朝青龍戦以来なんと7年ぶりのもので、新入幕から93場所目での金星で、これは昭和以降で最長記録となった。

取り口は柔剛を織り交ぜた器用なもので、特徴をとらえ、相手が嫌がる相撲を繰り出す。相手を崩す出し投げや軽妙なはたき、かと思えば一気に押し出すパワーも持つ。
金星8つのほかに、これまでに多くの大関勢から白星をあげており、上位キラーと呼ばれることもある。

仲間思い、ファン思いのベテランの姿を焼き付けろ

自身が再入幕、敢闘賞受賞を果たした十一月場所には角界を揺るがす暴力事件が発生し、安美錦も喜びだけでは終われなかった。同門の横綱日馬富士(当時)が引退することについて聞かれると、「仲間として残念」と弟弟子の引退に表情を曇らせた。

冬巡業では、変わらず多くのお客さんが詰めかけたことに感謝した安美錦。巡業をはじめ、ファンとの交流を大切にする技巧派ベテラン力士の真摯な姿は、きっと今後も多くの若手の手本となっていくことだろう。