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白鵬にまた一つ金字塔 名古屋場所で歴代1位に挑む記録とは

2017 7/11 11:02きょういち
相撲
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Photo by J. Henning Buchholz/Shutterstock.com


 優勝回数38回、全勝優勝13回、7場所連続優勝……大相撲において、数々の歴代1位記録を持つ横綱白鵬が、7月9日に始まった名古屋場所で、また新たな歴史を作ろうとしている。

 その記録は通算勝利数。

 幕内勝利数の記録とは違い、序の口や序二段など、入門してからのトータルの勝ち星の記録である。

 白鵬の、名古屋場所が始まる前の通算勝ち星は1036。歴代1位は大関魁皇の1047だから、早ければ11日目にその数字に並ぶことになる。

三役力士が多い通算勝利数

 ちなみに、通算勝利数の歴代10位までを並べると以下のようになる。

 ①1047 魁皇(大関)
 ②1045 千代の富士(横綱)
★③1036 白鵬(横綱)
 ④964 大潮(小結)
 ⑤951 北の湖(横綱)
 ⑥927 旭天鵬(関脇)
 ⑦914 若の里(関脇)
 ⑧872 大鵬(横綱)
 ⑨858 寺尾(関脇)
★⑩823 安美錦(関脇)
※★は現役。丸括弧の中は最高位。7月8日現在の数字

 ご覧いただくと分かると思うのだが、意外と横綱が少なく、三役止まりの力士が名を連ねている。

 それには理由がある。横綱は力が落ちてきたら、引退を求められる地位である。長々と現役を続けることができない。そのため、横綱は通算勝ち星をのばすのには、決して向いていない地位と言える。

 この10傑に出てくる横綱は、千代の富士、白鵬、北の湖、大鵬。いずれも優勝回数が20回を超える名横綱中の名横綱である。これほどの横綱なら、横綱を長く続けて勝ち星も積み重ねられるだろうが、並の横綱ではそうはいかない。そのため、この4人の横綱ぐらいしか10位以内に入れなかったのである。

 10位以内に入っている力士で横綱以外となれば、共通するのは長く現役を続けることができた力士と言える。

 歴代1位の魁皇は38歳、4位の大潮が40歳、6位の旭天鵬も40歳まで現役を続けた。どちらかというと名横綱の記録というよりは、長く力士を続けてきたことに対する勲章のような意味合いが強い記録だったと思う。もちろん、40歳まで力士を続けるというのは並大抵のことではない(魁皇は引退まで大関、旭天鵬は引退するまで幕内にいた)。

 いわば、強いだけでなく、長く続けなければ達成できない記録が、この通算勝利数の記録である。その記録にこの名古屋場所で挑むのが白鵬である。ちなみに、魁皇が歴代1位になったのが、6年前の名古屋場所。同じ名古屋で記録に挑むのも何かの縁である。

わずか98場所で到達か

 白鵬が歴代1位となれば、単に通算勝ち星が1位となったこともすごいのだが、達成するその早さがすごいのである。

 魁皇、大潮、旭天鵬の達成年齢(イコール引退年齢)については書いたが、千代の富士は35歳、北の湖は31歳で引退した。白鵬は現在32歳。通算勝利数は若干違うとは言え、年齢だけみると、北の湖もすごかったと言えるかもしれないが(実際すごいのであるが)、白鵬のすごさは現在までの所要場所数である。つまりは入門してから、これまで戦ってきた場所の数である。

 魁皇は140場所、千代の富士は125場所、北の湖が109場所で記録を達成しているのに対し、白鵬はこの名古屋場所で98場所目になる。

 現在、大相撲は年間に6場所開かれる。つまり、魁皇よりは7年、千代の富士よりは4年半も短い土俵人生で、彼らが積み重ねてきた白星数を上回ろうとしている。そこが、白鵬という横綱のすごさである。

圧倒的な勝率

 では、白鵬はなぜそんな短期間で歴代1位の記録を達成できるのか。簡単に言えば、強いから、ということになるのだが、その強さを表す数字をご紹介する。それは勝率である。

 歴代1位の魁皇は1047勝700敗158休で、休場を除いた勝率は59・9%。大横綱と言われた千代の富士は1045勝437敗159休で勝率70・5%になる。

 一方の白鵬は名古屋場所が始まる前の数字は、1036勝218敗58休で、勝率82・6%にものぼる。千代の富士と比べても勝率で10%以上上回っているのだから、その強さは際立っている。これだけ早く通算勝利数のトップになろうとしているのもうなずける。

横綱在位1位も視野に

 多くの記録を達成してきた白鵬。近いところでは横綱在位数の歴代1位も見えている。この名古屋場所で横綱在位60場所目になるが、歴代1位は北の湖の63場所。来年の初場所で歴代1位に並ぶ可能性が高い。