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「稀勢の里劇場」の開幕だ!2017年大相撲春場所の総評

2017 5/15 09:56takutaku
稀勢の里
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ⒸJ. Henning Buchholz/Shutterstock.com

毎年3月に大阪で開催される大相撲春場所。1月には実に19年ぶりに日本人横綱が誕生したこともあり、全国の相撲ファンが大阪に駆けつけました。今回はそんな2017年春場所の結果から、5つのハイライトをご紹介します。

19年ぶり!日本人横綱として春場所の土俵を踏んだ稀勢の里

稀勢の里は苦労人です。2013・14年と二度の綱取りのチャンスをつかめないまま、長いトンネルの先に見えるかすかな光をめざして黙々と稽古に励んできました。
2016年には「一度も優勝をしないのに年間最多勝」という前代未聞の戦績を残します。これはつまり「運がないだけで、実力は横綱級」ということを意味します。 全国の相撲ファンにとっても、また「横審」の委員たちの目にも、次の2017年1月場所の結果次第で、すぐにでも横綱昇進を認めるべきだという評価が定まりつつありました。
そしてむかえた1月場所。期待通りの活躍を見せた稀勢の里は、日本人横綱として東西4横綱の一角に鎮座することになります。日本人の横綱昇進は、若乃花以来実に19年ぶりのこと。春場所の初日、土俵入りした稀勢の里の雄姿に思わず涙した相撲ファンも大勢いたようです。

怪我をおしての強行出場!横綱初土俵での優勝に男泣きする稀勢の里

意気揚々と大阪に乗り込んだ稀勢の里は、初日から12連続白星と絶好調を維持していました。しかし13日目、横綱・日馬冨士との取組みで左肩をひどく負傷します。14日目の朝、左肩は内出血で腫れあがり、ほとんど力が入らない状態でした。
しかしこの春場所は横綱昇進後の初土俵です。あきらめ切れなかった稀勢の里は、怪我をかえりみず強行出場しますが、横綱・鶴竜にあっさり敗北、勝ち星でも大関・照ノ富士に逆転されてしまいます。
むかえた運命の千秋楽。稀勢の里が優勝するには照ノ富士に2度勝たなければなりません。内出血で黒ずんだ左肩をかばうように登場した稀勢の里の姿に、もはや優勝の望みは絶たれたと誰もが思いました。
しかし、ふたをあけてみれば見事2連勝!表彰式では感極まり男泣きした稀勢の里。そこには初日の土俵入りで見せた凛々しい雄姿はありません。ぼろぼろの状態で賜杯を受け取る姿に、全国の相撲ファンはふたたび涙したのです。

稀勢の里と同郷・同門、高安の奮闘!

稀勢の里に次ぐ奮闘を見せたのは、同じ田子ノ浦部屋に所属する関脇・高安です。高安は1990年生まれの27歳、稀勢の里と同郷の茨城県出身で、中学時代は野球に打ち込みますが、卒業と当時に相撲界に入ります。 恵まれた体格と身体能力で入門時は将来を嘱望されていましたが、本人はきびしい稽古に耐えられず幾度も脱走をはかったというエピソードもあります。
2017年1月場所では2横綱3大関を破る大活躍で敢闘賞。その勢いを維持したまま大阪に乗り込んだ高安は、初日から10連勝を記録。同じく勢いに乗っている大関・照ノ冨士も破り、千秋楽までに12の白星を獲り殊勲賞を受賞しました。これで次の夏場所(5月場所)でも同様の活躍を見せれば、間違いなく大関昇進が予想されます。

これで終わりなのか!?無念の休場となった白鵬

稀勢の里や高安の活躍の裏で、残念な結果に終わったのが横綱・白鵬でした。2016年の夏場所では12度目の全勝優勝を記録し、幕内最多勝利数を更新するなど絶好調でしたが、名古屋場所では10勝5敗と無残な結果になりました。続く9月場所では右脚の怪我が悪化して休場。復帰後の11月場所、1月場所でも11勝4敗と精彩を欠きます。
そしてむかえた春場所。不運なことに、初日にいきなりの黒星を喫した際、右脚の傷が再発。我慢して出場していたものの、ついに5日目から休場となったのです。これで5場所連続で優勝と縁がない白鵬。「勝って当たり前」といわれた大横綱にとって、2017年春場所は屈辱の場所だったといえるでしょう。

琴奨菊の大関復帰ならず

白鵬同様、復活を期して春場所に臨んだのが関脇・琴奨菊でした。琴奨菊が大関となったのは2011年11月場所から。しかし、長い間優勝経験がなく、念願の初優勝は2016年の1月場所でした。
ところがそれに続く春場所はギリギリ勝ち越しの8勝、次の夏場所では二桁勝利に達したものの、名古屋場所では7日目を終えて休場。休場明けの9月場所こそ勝ち越しましたが、11月場所そして2017年1月場所とまったく良いところのないまま負け越してしまい、関脇に陥落します。
現行の制度では「関脇に陥落した次の場所で10勝以上をあげれば大関に復帰できる」という特例があるのですが、春場所は惜しくも9勝6敗に。この結果、琴奨菊がふたたび大関に返り咲くためには、通例どおりの厳しい条件をクリアしなければならず、「もう琴奨菊が大関となるのは無理」という声も聞こえてきます。

まとめ

2017年春場所の結果から、特に気になるハイライトをご紹介しました。稀勢の里の優勝は、本人初めての2場所連続優勝であることにくわえ、横綱となって最初の本場所での優勝ということもあり、喜びも格別でしょう。5月場所そして名古屋場所とさらなる活躍を見せれば、「強い日本人横綱の時代」がまたおとずれるかもしれませんね!