拓殖大学が7年ぶりに春の選手権大会を制する
第53回関東大学女子バスケットボール選手権大会は、4月27日から5月12日にかけて行われ、拓殖大学が7年ぶり6回目の優勝を決めた。
決勝リーグまでは、4ブロックに分かれてトーナメント戦を行い、そこで勝ち上がった4大学によって総当たりによる決勝リーグ戦となる。決勝リーグに進んだ大学は、優勝した拓殖大学、東京医療保健大学、白鴎大学、早稲田大学。ここ数年、関東大学女子バスケ界を引っ張るこの3強に、拓殖大学が割って入った図式になった。
昨年は、筑波大学が11年ぶり13回目の優勝を果たした。早稲田大学、白鴎大学と共に2勝1敗で並んだが、筑波大学は当該校間の試合におけるゴールアベレージが、他の2校を上回っていた。よって筑波大学は白鴎大学に敗れていたが、ゴールアベレージの仕組みに救われての優勝だった。
反して、今年優勝した拓殖大学は、決勝リーグ3戦全勝で優勝した。決勝リーグ初戦の東京医療保健大学戦では、前半で大きくリードを許していたが、オーバータイムまでもつれ込みながら勝利を手繰り寄せた。その勢いは衰えることなく、早稲田大学には86-66、白鴎大学には82-67で完勝した。
大会の最優秀選手賞には、#36 小笠原美奈(拓殖大学)が選ばれ、拓殖大学からは、得点王に#23 バイ クンバディヤサン(以下クンバ)、アシスト王に#39 藤田歩、ベスト8賞には#14 吉田舞衣が選出。拓殖大学が大きく躍進できた背景に、ビッグマンのクンバとポイントゲッター小笠原の存在が大きかった。
チームに高さをもたらしたクンバはフリースローが得意
今年2年生のクンバ。昨年は怪我もあって公式戦に出場していなかった。だが今年は出場機会を得たことにより、190㎝とサイズもあるセンタープレイヤーが、チームに高さをもたらした。ゴール下で勝負できる選手が現れると、戦術の幅も広がり、さらに大会得点王、リバウンドも全体4位となり、個人の成績がそのままチーム成績のジャンプアップにつながった。
「去年この大会に出場できなくて悔しいこともあったので、優勝できてうれしい」
そう喜ぶクンバ。190cmの高さに目が行きがちだが、実はフリースローの成功本数は全体の1位。「フリースローは得意」と本人も語っている。最終日の白鴎大学戦では、9本中8本成功させていた。フリースローは、周りに邪魔をされない分、プレッシャーがかかるため、一番難しいシュートとも言われている。得点源である一方でフリースローは苦手、という選手がトップリーグでもいるほどだ。
白鴎大学には、インサイドの選手として、#20 シラソハナ ファトージャが君臨する。「しっかりマッチアップしないとダメ」と考えて、クンバは自分の役割に徹した。公式戦初出場で抜群のパフォーマンスを見せたクンバは、秋のリーグ戦でもさらに成長した姿を見せてくれるだろう。
「練習で一杯打ち込んできた。でもプレッシャーはかなりあった」小笠原美奈
MVPを獲得した小笠原は、得点源としてチームを牽引してきた。クンバがソハナとのマッチアップに奮闘していた時、小笠原はアウトサイドから勝負していたのだ。
決勝リーグに入って、東京医療保健大学戦では3p4本を含む19得点。早稲田大学戦では3p4本を含む24得点。そして、白鴎大学戦では3p4本を含む22得点、と大車輪の活躍をみせた。
「決勝リーグを迎えるまでは、思うようなプレーができず、チームに迷惑をかけてしまったが、気持ちを切り替えて決勝リーグには臨んだ」
試合後の優勝チームインタビューで小笠原はこう語る。さらに、大事な場面で3pを決めており、「練習で一杯打ち込んできた。でもプレッシャーはかなりあった」という。
昨年と違うところは、クンバというビッグマンがコートに入っていること。これまでは、ビッグマンに対しても、サイズ面で不利になる事が多く、小笠原の得点力に賭けてきた。
「ビッグマン(クンバ)を見ながら、自分の攻めをしないといけない所が難しかった。ビッグマン対決になれば、自分で攻めて、ミスマッチになれば、クンバにボールを集めようと決めていた」
小笠原は、自分で勝負するタイミングを決めていたようだ。「春の大会を迎えるまで、練習はしんどかった」という厳しい練習を重ねたことが、結果につながった。春のタイトルを獲得したことで、秋のリーグ戦優勝候補になってきた拓殖大学。
「秋は、他の大学も拓大を倒しに来ると思うので、負けないように頑張りたい」
クンバと小笠原のコンビを中心に、悲願の秋のリーグ戦初制覇、そして2008年以来のインカレ優勝へ、楽しみが増えた瞬間だった。