「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

東京五輪 金メダル有望種目の女子ソフトボール日本リーグが開幕

2019 4/19 07:00藤井一
ソフトボール,日本代表,Ⓒゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

アジアカップの代表は17人 すでに代表争いは始まっている

4月13日、ソフトボール女子日本リーグがパロマ瑞穂野球場で開幕した。来年の東京オリンピックで12年ぶりに正式種目として採用される女子ソフトボールの日本代表メンバーが、日本リーグ1部12チームの中から選ばれるのはほぼ間違いなく、例年以上の注目が集まる。

オリンピックでの登録は各国15人。今回のメンバーから最低2人は振り落とされることになる。昨年の世界選手権で代表になりながら今回漏れた選手も復活を狙っていて代表枠争いはし烈、今年の日本リーグでの戦いが持つ意味は大きいのだ。

最新の代表メンバーは来月、インドネシアで開催されるアジアカップに出場する17人だ。この中で目を引くのは昨年の日本リーグで初のベストナインに輝いた日立の捕手・清原奈侑。好リードには定評があり、もうじき28歳と決して若手ではないが、現在の事実上の代表正捕手であるビックカメラ高崎の我妻悠香にもいい刺激となるはずだ。無論、今回を機に清原が代表正捕手になってもおかしくはない。

昨年のファイナルの再戦で開幕

開幕戦は、昨年優勝のトヨタ自動車と2位のビックカメラ高崎が対戦した。

女子日本リーグは2008年以降、この両チームのどちらかが優勝していて(ビックカメラ高崎は、ルネサス高崎、ルネサステクノロジ高崎、ルネサスエレクトロニクス高崎時代を含む)代表選手も多く、完全な2強時代になっている。開幕戦では国内トップレベルの攻防が繰り広げられた。

トヨタは、昨年日本リーグで最多勝、最優秀防御率、最多奪三振でMVPに輝いたエースのモニカ・アボットが先発した。アボットは坂元令奈のソロホームランで先制した直後の5回、自らのエラーがきっかけでピンチを背負い、糟谷舞乃の詰まった当たりのセンター前タイムリーで同点に追いつかれる。その後迎えた延長タイブレーカー(両チームとも無死2塁で開始)の8回、送りバントで1死3塁になったところで、大工谷真波にレフト前タイムリーを許し、完投したものの敗戦投手となった。

勝ったビックカメラの先発、日本代表の濱村ゆかりは5回1失点と好投、着実な成長を感じさせる投球内容だった。6回からは、16日に早くも東京五輪の先発を明言された上野由岐子がリリーフし、安定感のあるピッチングで3回を無失点に抑え、チームを勝利に導いた。

ビックカメラがトヨタに勝った意義と今後の日本人打者が目指すべきもの

アメリカ代表のエースでもあるアボットが投げたトヨタにビックカメラが勝ったことは来年の東京オリンピックで金メダル争いの最大のライバルである仮想アメリカを考えた場合、悪いニュースではない。

しかし、同点タイムリーはエラーがらみであり、勝ち越し点は無死2塁からのタイブレーカーを活かしたもの。190cmの身長を目一杯に使って躍動感あふれる投球フォームから放たれるアボットの力強い速球やライズボールにビックカメラの打線が手を焼いたのも事実である。

日本代表の宇津木麗華監督は常々「打撃力の向上」が最重要課題と言っている。その中の注目すべきコメントの一つに「ヒットゾーンに打つこと」というのがある。この試合で5回にビックカメラ糟谷の放ったタイムリーはまさにそれであった。

ソフトボールは野球に比してグラウンドが両翼約67mと狭い。当然、野手間も狭いからいい当たりが野手の正面をつく確率も高いことを歴史的強打者でもあった宇津木麗華監督はよくわかっている。極端な話、ホームラン以外は当たりの善しあしではなくヒットゾーンに打てればいいのである。

代表争いはギリギリまで続く

糟谷は昨年のトヨタとの日本リーグ決勝トーナメント1回戦でもホームランを放つなどアボットに強く、また1昨年は26打点でリーグ最多打点にも輝いている強打者なのだが、代表には選ばれたことがない。

ちなみにこの試合で貴重な打点を稼いだ他の2選手、トヨタの坂元、ビックカメラの大工谷は代表経験がある。特に坂元は2016年までは長く日本代表の中心選手だった。糟谷、坂元、大工谷がどれだけ東京オリンピックへの意欲を持っているのか定かではないが、この試合で、大事な勝負どころで打てる非凡さを証明した。

個人的には彼女たちにオリンピアンへの夢を可能性ある限り持ち続けてほしい。

再び日本代表に目を向けると、6月の日米対抗、8月から開幕するジャパンカップなど、日本とアメリカが戦う機会は今年も多い。アボットを始めとするアメリカの投手からいかにして点を取るかが代表アピールの中で大きなウエイトを占めそうだ。

また国内強化合宿も6月以降、来春まで予定されているだけで9回ある。その中で選出された代表候補は、少ないチャンスを確実にものにする勝負強さを極限まで磨いていかなければならない。