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リヴァプールとフラメンゴの対局に見るサッカーのルールと戦い方の変化

2020 1/17 11:00Takuya Nagata
2019年12月21日クラブW杯決勝リヴァプールFC対CRフラメンゴⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

38年の時を経て変化したサッカーのルールと戦い方

1981年と2019年に世界一の称号をかけて相対峙した欧州王者リヴァプールFC(リヴァプール)と南米王者のCRフラメンゴ(フラメンゴ)。

この2つの戦いを見比べると、それらを隔てる長い歳月の間にサッカーのルールやチームの戦い方も大きく変わったことが見えてくる。

試合運営の変化:マルチボールシステム、VAR

2019年ではマルチボールシステムが導入。アウトオブプレーになるとすぐに別のボールが返され、プレー時間もより厳密に計られている。そのため、同じ90分でも実質プレー時間は長くなっている。また、延長戦に突入したことで、その分長くもなった。

そして、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)を導入したことで、以前とは異なるタイミングで試合が止まることもある。プレーのスピード化への対応策として、判定にテクノロジーを導入するようになったのだ。実際に、後半終了間際に適用され、PKの判定が覆るシーンもあった。

現代では、負傷した素振りをして時間稼ぎすることを防ぐために、選手が倒れ試合が止まると、その選手は一度、ピッチから出なければならないルールが導入されているが、この2チームに限っては、そのルールがあってもなくても、スポーツ精神にのっとり、正々堂々、フェアにプレーしていた。

ルール変更:GKへのバックパス禁止

1981年当時は、ゴールキーパー(GK)へのバックパスを手で扱うことが許されていた。このことで、ゲームのリズムが現在のサッカーとは、だいぶ異なっている。

リードしているチームが時間稼ぎがしやすく、ゲーム展開が消極的になってしまうため、GKへのバックパスは、後に原則として手で扱うことが出来なくなった。このルール変更により、GKに求められる資質は大きく変わった。ただゴールを守るだけではなく、フィールドプレーヤーのように、ボールを足で捌く技術が必要になったのだ。

フィールド上のプレッシャーも激しくなり、プレーの起点が、どんどん後方に下がってきており、GKがゲームを組み立てられるだけのパススキルがあるか否かが、今日ではそのチームのゲーム遂行能力に大きく影響を与えるようになってきている。

奪われた時間とスペース

1981年当時は、両チームのDFラインが深く、中盤のフィールドに現在よりもスペースがある。GKがバックパスを手で取り、溜めを作ってボールを配給するため、より一層、プレイングフィールドが縦に伸ばされているように感じる。

この中盤のスペースは、個人技を披露するための格好の舞台になっており、後に守備戦術の進歩により、プレスで潰されるようになる。

1981年、フラメンゴのジーコは、攻撃的MFのポジションからゲームメイクを行っていた。近年では、そのポジションは、相手守備のプレッシャーが非常に厳しく、一段下がった位置の守備的MFのボール配給の重要性が増した。ブラジルでは、そのポジションはボランチ(舵取り)と呼ばれ、日本でも一般的に使われている。

2019年は、1981年より、ラインディフェンスの意識が高まっているようだ。これは、DFの高さを極力、一線に保とうとするものだ。1981年には、ジーコが幾度となく、相手守備陣のギャプをついたスルーパスで好機をつくり出したが、2019年のリヴァプールの守備は、以前ほどの隙は与えてくれないだろう。

向上する技術、パスと試合展開の高速化

2019年の方が、全体の試合展開も高速化し、より高いフィットネスも求められるようになっている。

また、両チームともパススピードは格段に上がっており、それと共にボールへのプレッシャーも激しくなっている。1981年には、ボールを持ちながら中盤で考えているシーンがあったが、2019年には、そのエリアには既に守備のブロックが形成されており、ほとんど考えている余裕はない。ボールを自由に回すなら、ディフェンスラインまで下がる必要がある。

ショートパスもロングパスも、高い精度でつながっていく。ロングパスは、インターセプトされやすいが、2019年においては精度が高いため、ためらいなく使っている。これは、プレスをかいくぐる、一つの対抗策にもなる。

精度の向上については、選手の技術の研鑽とともに、ボールやスパイクといった製品開発の技術も進化したように感じる。

個から組織へ、ファンタジスタにとっては不遇の時代

ブラジル人選手の足技は、昔も今も流石で、これは伝統と言っていいだろう。どちらが良いかは別として、1981年の方が個々の対峙が強調されるのに対して、2019年ではより多数のグループで相手を崩す、あるいは守るという傾向が見られる。侍の合戦で一対一の勝負をしていたのが、近代の集団戦法に移行したのに似ているかもしれない。

今日、集団戦法がサッカーを席巻し、ファンタジスタと呼ばれる個性的に攻撃を創造する選手たちは、生きにくい時代になったと言えるだろう。

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