数々の主要な国際タイトル獲得、残るは五輪のみ
スペイン代表DFセルヒオ・ラモス(33)が2020年の東京オリンピック(五輪)への出場希望を口にしている。
スペイン代表としてワールドカップ1度、欧州選手権2度、レアル・マドリーで欧州チャンピオンズリーグ4度とメジャーな国際大会のタイトルをほしいままにしてきた。しかし唯一、手に入れていないのが五輪の金メダルだ。
スペイン代表歴代最多出場記録を誇り、オーバーエージ枠で選出するのに、適任かと思われる。しかし、実はこの問題は非常に複雑だ。
欧州選手権と立て続けの超過密日程はリスク クラブの及び腰は必至
来夏には、A代表の重要な大会も行われる。6月12日から7月12日まで欧州選手権(ユーロ)が開催され、東京五輪の男子サッカーは、7月23日に始まり、決勝が8月8日だ。欧州から日本に移動して調整することを考えると、休息期間はあってないようなもの。その後、すぐにレアル・マドリーに戻り、長いシーズンを迎えることになる。
「それは勧められない。 1か月か5週間は休息が必要で、大きなリスクだ」
37年間、レアル・マドリーのフィットネス・コーチを務めたホセ・ルイス・サン・マルティン氏は、選手が欧州選手権と五輪の両方でプレーすることに否定的だ。
一番しわ寄せが来るのは、レアル・マドリーだ。休まずにプレーを続ければ、当然故障のリスクが高まる。先々の戦いを考えると、本来チームでプレーすべき時期にラモスを休ませざるをえないだろう。スペインサッカー連盟(RFEF)が、両大会にラモスを招集したら、クラブとの関係悪化の火種にもなりかねない。
代表に選出された選手は、他の選手が休んでいる時期にも試合をしており、身体的な負荷が高い。30代に入ると代表を引退する選手も多い中、来夏34歳になるラモスの、衰えることを知らない意欲には感服する。
スペイン五輪代表は若手主体のチーム編成
ラモスの夢にはもう一つ壁が立ちはだかる。スペイン代表は、従来オーバーエージ枠に頼らずに、若手主体で五輪代表チームを編成することを基本方針にしているのだ。
FCバルセロナのセルヒオ・ブスケツが2012年のロンドン五輪への出場を希望したが、スペインサッカー連盟とビセンテ・デル・ボスケ代表監督(当時)は、それを認めなかった。
東京五輪でスペインを率いるであろうルイス・デラフエンテ監督は、セルヒオ・ラモスの申し出を名誉なこととしながら、選出の方針について、まだ時間があるとして現時点での回答を保留している。
統括団体とクラブに温度差、難問をクリアし日本上陸するか
統括団体、クラブ間の温度差も影響している。
五輪もユーロも4年に1度の開催のため、毎回、同じ年に開催される。各国はフル代表を優先するが、欧州のクラブは元々代表招集にはあまり前向きではない。プレシーズンのチーム作りの大事な時期に、有力選手を欠くことは出来ることなら避けたいと考えるのは当然だ。そういった事情もあり、シーズン開幕直前となる欧州勢の五輪熱は、アジアのそれと比較し、温度差があることは否めない。
さらに拍車をかけているのが、国際サッカー連盟(FIFA)の方針だ。ワールドカップを世界で最も権威のあるサッカーの大会にすべく、男子五輪では年齢制限を設けているのだ。従って、遅咲きタイプや、たまたま開催時期に怪我をしてしまった選手は、五輪とは一生涯、無縁のケースも出てくる。
果たして来夏、セルヒオ・ラモスは様々なハードルを乗り越えて日本の地を踏み、派手な風貌と豪快なプレーを日本のファンに披露することが出来るのだろうか。