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欧州スーパーリーグの内容が明らかに 各国リーグ統括団体が反対を表明

2019 6/10 07:00Takuya Nagata
イメージ画像Ⓒmoomsabuy/Shutterstock.com
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スーパーリーグは閉鎖的、収益の公平な分配を

欧州各国リーグで構成されるヨーロピアン・リーグズのラース=クリスター・オルソン会長は、ビッグクラブを中心勢力とした欧州クラブ協会(ECA)が2024年以降に創設を目指しているスーパーリーグ案に反対する立場を明らかにし、UEFAにその計画を拒否するように要望している。

「我々の反対提案は、UEFAが欧州大会の収益をより公正に分配するべきであるというものです。裕福なクラブだけではなく、各国リーグに20%分配すべきです。クラブが希望を持ち続け、ユース育成を行い、競争のバランスを改善することが必要です。ECAの提案は、UEFAの大会や国内大会の競争バランスを歪ませ、裕福なクラブと残りのクラブの格差を広げ、決定的なものにしてしまいます。閉ざされた北米のようなモデルではなく、欧州モデルを維持することを求めます」(ヨーロピアン・リーグズのオルソン会長)。

ECAの提案を、一握りのビッグクラブが特権を持つ閉鎖的なリーグと断じ、さらに、欧州サッカーの発展のために、欧州CLの収益の2割を大会不参加のクラブや欧州各国リーグにも分配すべきとUEFAに要望している。

参加クラブに分配される放映権等の収益は欧州CL再編成のあった1季目の1992-93シーズンは2200万ユーロだったが、2018-19シーズンには20億ユーロまで膨れ上がっており、ヨーロピアン・リーグズの分析によると、これらの収益は成功を収める裕福なクラブに集中するようになってきているという。

スーパーリーグ全貌明らかに、UEFA肝いりで危険な企て

ECAのアンドレア・アニェッリ会長は、新たなピラミッド構造と昇格・降格からなるフォーマットを公言しながらも、一貫して欧州サッカーの今後についての計画は進んでいないと否定してきた。公にはUEFAも、非公式な意見交換以上の計画の進捗状況を確認していないとしている。

しかし、ヨーロピアン・リーグズのオルソン会長が英紙ガーディアンに伝えたところによると、5月にUEFAからヨーロピアン・リーグズにECAが推進するスーパーリーグ案計画の詳細の提示が行われたという。その骨子は次のようなものだ。

スーパー・リーグはチャンピオンズ・リーグ、ヨーロッパ・リーグ・トップディビジョン(名称仮)、ヨーロッパ・リーグ・セカンドディビジョン(名称仮)の三部制となる。 2024-25シーズンは過去4季の国内リーグ順位でチャンピオンズ・リーグ出場24クラブを決定し、さらに、4クラブが予選を経ての出場。28チームでグループステージを争うが詳細は公開されていない。

ヨーロッパ・リーグはトップ・ディビジョンが32クラブ、セカンド・ディビジョンが64クラブで、昇格・降格はそれぞれ4クラブ。また、トップ・ディビジョンは4クラブがチャンピオンズ・リーグに昇格する。チャンピオンズ・リーグからは毎年8クラブが降格し、昇格8クラブはトップディビジョンの4クラブを差し引いた残り4クラブを予選で決定する。

旧来のチャンピオンズ・リーグでは、主要な国内リーグの上位クラブが出場権を得て、UEFAランキング下位の国のリーグのクラブ等が予備予選を行うため、チャンピオンズ・リーグの成績が良くても翌年の出場は確約されない。しかし改変後は、チャンピオンズ・リーグ上位クラブはそのまま翌年残留し、降格した場合は国内リーグ王者にならなければ予選に出場できない。

ビッグクラブの強権と競争求める欧州全土の声、UEFAは打開策を見いだせるか

「これは新たな提案ではなく、旧G14(ビッグクラブ連合)が20年前に提案した案に酷似しています。しかし、今回は、欧州サッカーの統括団体UEFA肝いりで提案されているため、さらに危険です。欧州各地の会員のリーグやクラブ、サポーター、各国協会から大きな反発があり、この閉鎖的なリーグは、裕福なクラブがさらに富を蓄えるための提案だとUEFAに伝えています。この計画は間違いなくスーパーリーグを形成するための企てです」

オルソン会長は、欧州チャンピオンズ・リーグ(CL)を改編しトップクラブによるスーパーリーグを実施するという計画の動機は強欲であり、UEFAは断固として拒否すべきであること、むしろUEFAは一部の裕福なクラブに利益が集中しないように競争バランスを改善すべきと主張している。

UEFAのアレクサンデル・チェフェリン会長は、大きな市場だけではなく、欧州全体の競技のニーズを満たす方法を見出したい考えだ。現在、スコッド(チーム)サイズの制限、贅沢税といった案があり、競争のバランスを改善する作業を行っている。選択肢に、放映権料の再分配はあるのだろうか。

ここにきてECAは特別総会を開催しており、新しい動きがある模様。欧州クラブサッカーが、何やらきな臭くなってきた。