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日本人のセリエA移籍再燃か、イタリア版ベッカム法制定へ

2019 6/6 15:00Takuya Nagata
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外国籍者の税率優遇、法案成立へ

イタリア政府が、高所得の外国籍サッカー選手を税制で優遇する法案を成立させる見通しだということが分かった。これにより、今後は有力な外国籍選手の獲得で、他の欧州主要国よりイタリアが有利になる可能性が出てきた。

北部で30%、南部はわずか15%に

今回のイタリアの法案では、北部の外国籍選手の税率が47%から30%に、南部が44%から15%になるという。イタリアで、年間183日以上過ごさない外国籍者が対象になる。2020年以降に適用される見通しだ。元イングランド代表MFデヴィッド・ベッカムがレアル・マドリ―に所属していた2005年、スペインでも同様の税制改革があり、それは「ベッカム法」と呼ばれた。

2010年に変更が加えられたベッカム法では、年間所得が60万ユーロ(約7300万円)未満の人にしか適用されなくなり、スペインでプレーし、それ以上を稼ぐ主要選手にはメリットがなくなってしまった。マルカ紙には、スペインの高所得外国籍選手は43%、南部アンダルシアと北東部カタルーニャでは48.5%の税金を支払っていると掲載された。その他、イングランドの45%、日本の40%と比べても、イタリアの税率が段違いに低いことが分かる。

年俸が3100万ユーロ(約40億円)といわれているポルトガル代表のFWクリスチアーノ・ロナウド。これをイタリアの税率で計算した場合、北部では手取りが21億2千万円から28億円に、南部では22億4千万円から34億円に引き上がることになる。

ちなみに、手取り額で年俸が提示されるサッカー選手の移籍交渉で、中東のクラブが破格の年俸を提示することがあるのだが、オイルマネーという豊富な資金だけでなく、かつてのスペインも今回のイタリアも同様に税制が優遇されている場合がある。

世界最高峰から陥落も助っ人補強で挽回か

欧州5大リーグの一つであるイタリア・セリエA。1990年代には世界最高峰リーグと言われていた。

ACミランのフランコ・バレージや、オランダトリオことルート・フリット、マルコ・ファン・バステン、フランク・ライカールト、そしてユヴェントスのアレッサンドロ・デル・ピエロ等、多くの選手が活躍した。また、現在はサッカー界で神格化されているディエゴ・マラドーナがナポリで、ジーコがウディネーゼでプレーした。

三浦知良(カズ)がジェノアに入団した1994-1995シーズンも、イタリア全盛期の時期と重なり、日本でも大きな注目を集めた。日本代表に定着したばかりだった中田英寿は、1998年にペルージャに加入し衝撃的な活躍をした。それを契機に、数多くの日本人がセリエAに挑戦。中村俊輔もイタリアで成功した一人だった。

しかし、近年は世界最高峰と言えなくなっており、それはACミランに所属した本田圭佑も認めている。現在はUEFAランキング3位と、スペインとイングランドの後塵を拝しているセリエA。

北部と南部で経済格差があるイタリアでは、それを反映するようにセリエA所属クラブも北部地域を拠点にする勢力が多くを占める。経済的に劣る南部クラブが税制を武器に、有力外国籍選手を獲得する図式が目に浮かぶ。

いったん途絶えたセリエAの日本人の系譜、今後は移籍ラッシュも

イタリアのサッカーは戦術を重んじ、組織的に戦う傾向がある。そのため、監督の指示を忠実に聞き、役割を果たすことを重んじる日本人に合うリーグと言える。また近年、欧州主要リーグの中で多くの日本人を受け入れているのはドイツ・ブンデスリーガだが、それは香川真司の成功によるところが大きい。

長友佑都がインテルからトルコのガラタサライに移籍したことで、中田英寿以来続いていた日本人のセリエA在籍が20年ぶりに途絶えた。だが、この税制改革によって、今後はセリエAのクラブが日本人選手を獲得するインセンティブになり得る。そうなればまた、日本人選手の移籍ラッシュの日々が訪れるかもしれない。