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カシージャスが心筋梗塞、今後見通し不透明で引退も

2019 5/12 15:00Takuya Nagata
心筋梗塞で緊急手術を受けたカシージャスⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

練習中に発作、緊急手術で一命は取り留める

元スペイン代表でFCポルトに所属するGKイケル・カシージャスが5月1日、練習中に心臓発作を起こして病院に搬送された。診断の結果は心筋梗塞で緊急手術を受け、5日後に退院した。

37歳の現役選手を襲った大病とあり、サッカー界に衝撃が走った。今後は日常生活に問題はないとのことだが、執刀医はサッカー選手としての復帰に否定的な見解を示している。

生きていることに感謝

退院に際し、カシ―ジャスはマイクに向かって、ゆっくりとした口調ながら元気な声で語った。

「非常に幸運でした。多くの人々に支援され、励ましのメッセージももらい、愛されていることを感じました。感謝しています。今後はどうなるかは分かりません。最も重要なことは私がここにいるということです」

約3割が心筋梗塞で命を落とすと言われている。カシ―ジャスは命がある事にまず安堵しているというのが、このコメントからにじみ出ている。3か月は絶対安静で、その後リハビリを開始するという。

カシ―ジャスのFCポルトとの契約は2020年6月まで残っているが、医師の見解の通りならば、現役を引退する可能性がある。

クラブと代表で数々のタイトルと記録

カシ―ジャスはレアル・マドリーの下部組織から昇格すると、めきめきと頭角を現し、長年キャプテンとして活躍した。

レアル・マドリーに所属した16シーズンで、クラブ歴代2位の公式戦725試合に出場。18ものタイトルを置き土産に、2015年にFCポルトに加入した。欧州チャンピオンズリーグ歴代最多出場記録保持者で、数々の名場面を演出し、この大会の名物選手と化していた感がある。

各世代のスペイン代表に選出され、2010年ワールドカップでは主将としてスペインの初優勝に貢献し、自身はゴールデングローブを獲得した。この大会では、TV中継の最中にキャスターで恋人のサラ・カルボネロの唇を奪ったことでも話題をさらった。

そのW杯前後の2008年と2012年に行われた欧州選手権(ユーロ)では二連覇に貢献し、スペイン黄金時代の屋台骨となった。スペイン代表167試合出場は同国最多だ。

多くの日本人GKも手本にした、センス光るゴールキーピング

輝かしい実績を持つカシ―ジャス。世界的なGKとしては決して大柄とは言えない185cmだが、抜群のゴールキーピングセンス、安定感、そして強心臓で名を轟かせた。

鉄壁の守備もさることながら、ボールを手にした際に繰り出されるキックは、高速・低空・正確と三拍子そろっており、相手陣内深くまで蹴り込んでもDFに奪われにくく、攻撃の起点にもなった。

GKとしてただ守るのではなく、圧倒的な攻撃力を誇るレアル・マドリーやスペイン代表の攻撃を、最後尾からつくった。

カシージャスは身体的なサイズに恵まれない多くの日本人GKが手本とし、心の支えとしてきた存在でもある。長身でなくても、屈強でなくても、センスとやり方次第では、世界最高のGKになることができることを身を持って示した。

2015年に隣国ポルトガルリーグに移籍したが、GKは比較的、選手寿命が長く、カシージャスもこの先、まだ何年も現役を続けられるであろうコンディションを維持していた。

それだけに日本にいる多くのファンにとっても、今回の件は衝撃的だった。もうイケル・カシージャスが背番号1のユニフォームに袖を通した雄姿を見ることはできないのだろうか。

奇しくも令和の始まりと同時に、サッカー界でも一つの時代に幕が下ろされたのかもしれない。