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欧州CLを廃止し、スーパーリーグ創設か 各国リーグの下部リーグ化懸念で抵抗も予想

2019 5/9 11:13Takuya Nagata
欧州CL準決勝2ndレグで勝利したリヴァプールⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

欧州クラブ協会が新大会の必要性を示唆

クラブの大会として、最も権威ある欧州チャンピオンズリーグ(CL)に大きな改革の波が押し寄せようとしている。欧州クラブ協会(ECA)のアンドレア・アニェッリ会長は、2024年以降のクラブの大会運営について話し合っていることを認めている。その進展次第では、欧州CLがなくなり、全く異なるフォーマットの大会が新設される可能性もあるという。

欧州CLの課題解決に3部制リーグ創設?

欧州CLは決勝トーナメントでは非常に盛り上がりを見せる一方で、グループリーグでは上位と下位の格差があり、早々に勝ち上がりや敗退が決定して消化試合が発生、関心が低下してしまうことが課題となっている。リーグと呼んではいるものの、カップ戦から発展してきた大会だ。強者に弱者が挑むジャイアントキリングの要素も面白さではある一方、一部のビッグクラブがあまりにも絶対的な力を蓄えてきている。

そこで、より拮抗した試合を増やす打開策として持ち上がっているのが、兼ねてから囁かれている欧州スーパーリーグ構想だ。大陸中のビッグクラブが集い、3部からなるリーグ戦を年間通して開催することが想定されている。そのスケジュールがさらに驚きで、今まで国内リーグに配慮し、平日開催していたものを、週末に持ってこようというのだ。これは、欧州サッカーのエコシステムを抜本的に変えてしまう可能性がある。

日本のファンがどんなに欧州CLに注目していようと、欧州の人々にとって、サッカーのベースとなっているのは国内リーグだ。当然、人々が仕事をしていない週末開催の方が集客もしやすい。これに、欧州スーパーリーグが毎週末のように割り込んでくると、国内1部リーグは、平日開催を余儀なくされるだろう。

ビッグクラブ目白押しで迫力満点も、欧州サッカー分断の危険

欧州CLに出場するかどうかで、クラブの収入は大きく変わる。出場権を得るために毎年国内リーグ上位を目指すわけだが、スーパーリーグ入りを果たしていれば、国内の順位は関係なくなり、ビッグクラブにとっては安定して高収入を得ることができるようになる。

欧州スーパーリーグの創設メンバーは、クラブの歴史や威厳ではなく、競技の実力で決めるという。候補はレアル・マドリー、バルセロナ、リバプール、マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、チェルシー、アーセナル、バイエルン・ミュンヘン、ユベントス、パリ・サンジェルマン、ミランが筆頭。

更に、アトレティコ・マドリー、ボルシア・ドルトムント、マルセイユ、インテル・ミラノ、ローマの名も挙がっており総勢16クラブ。これらのクラブがホーム&アウェーで戦うとなれば、かなりの見応えだ。

現在、ヨーロッパのビッグクラブは、過密スケジュールを乗り切るために、ターンオーバー制で選手を入れ替えながらやりくりしているが、スーパーリーグが始まるとなると、試合数が大幅に増えるためそれも限界だ。国内リーグ向けのチームと、欧州スーパーリーグ向けの2チームをほぼ分けてシーズンを乗り切るのが現実的だろう。

仮に国内リーグで不振が続いた場合、脱退して欧州の大会だけに集中するクラブが出てくる可能性もある。何故あのクラブは国内リーグ2部に降格しているのに、欧州の大会に出場しているのか、と後ろ指を指されかねないからだ。逆に、スーパーリーグへ出場したい選手が集中し、国内のクラブ格差が拡大する可能性もある。

欧州スーパーリーグ参加クラブは、国内リーグ戦に参加しないというルールがつくられるかもしれない。そうなると、国内リーグの空洞化はさらに進み、完全に欧州スーパーリーグの下部リーグになってしまうという懸念もある。

各国リーグの反発必至、打開策を見いだせるか

夢のようなリーグ構想ではある一方で、国内リーグの価値を下げるこの様な提案には、各国から大きな抵抗があるだろう。イングランドやスペインの国内リーグは世界中に多くのファンがいる。

その反発を数で劣るビッグクラブがねじ伏せることが出来るだろうか。欧州スーパーリーグ案には、巨額資金で財政的に支える投資家の後ろ盾があると言われている。金銭的な取引で解決する可能性もあるが、スーパーリーグ案が現実のものとなった場合、欧州サッカー界に激震が走ることは間違いないだろう。