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【UEFACL】アヤックス24年ぶりの優勝へ 強さの理由は若さ×組織力

2019 4/23 15:00橘ナオヤ
アヤックス,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

オランダの名門が史上初の快挙

UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝が行われ、2試合合計3-2でオランダの名門アヤックスがイタリアの強豪ユヴェントスに勝利。22年ぶりのベスト4進出を果たした。

アヤックスは今季、CL予選2回戦から出場している。予選とプレーオフを無敗で勝ち上がると、グループステージではバイエルン・ミュンヘンやベンフィカといった強豪相手でも負けなし。無敗のまま2位通過を決めた。

ラウンド16では同大会4連覇を目指すレアル・マドリーと当たった。ディフェンディングチャンピオン相手に1st legで今大会初黒星を喫するが、2nd legで逆転勝利。

マドリーの夢を打ち砕くと、準々決勝ではユヴェントスまでも倒し、準決勝進出を果たした。予選から数えるとここまで同大会で16試合を戦ってきたアヤックス。そのうち敗戦はラウンド16の1st legのわずか1つだけだ。また予選2回戦から参戦してのベスト4入りは、同大会史上初の快挙となった。

一方のユヴェントスは、三冠(セリエA、コッパ・イタリア、CL)を目指していたものの、ふたを開けてみるとスクデットのみにとどまりそうだ。リーグ8連覇も素晴らしい偉業に違いないが、CL優勝を目指していた同クラブにとっては失意のシーズンと言える。153億円の移籍金でやってきたロナウドは、チーム内得点王の働きを見せ、クラブに貢献している。だが彼だけではCLを勝ち取れないという事実を、アヤックスに叩きつけられた格好となった。

試合を作り出せるアヤックスと後手に回ったユーヴェ

若いアヤックスとベテラン主体のユヴェントス。若手とベテランの対決では爆発力と経験値のぶつかり合いがイメージされるが、準々決勝2nd legでは組織力の差が浮き彫りとなった。

CBマタイス・デ・リフトやMFフレンキー・デ・ヨングら若く将来を嘱望される選手が主力に多いアヤックスだが、そのサッカーはコレクティブで、組織的な攻守の切り替えがベースにある。一方のユヴェントスは、ロナウドやDFボヌッチなどワールドクラスのベテランぞろいで、CLの戦い方を心得ているチームと思われた。

しかし、この日のビアンコネロ(ユヴェントスの愛称)は負傷者を抱えていたとはいえ、あまりにも個人技頼りだった。アヤックスはアイデアを欠いたカウンターを狙うユヴェントスの攻撃の芽をことごとく摘み、細かなパスとスピードでリズムを作りGKシュチェスニーが守るゴールマウスに襲いかかった。

シュート数を見ても、ユヴェントスが11本だったのに対し、アヤックスは13本、枠内シュートではユヴェントスの2本に対し、4本とどちらも上回っている。スピードとプレッシャーをかけた攻撃でユヴェントスの守備を切り裂き、ミドルシュートをきっかけに同点弾が決まると、セットプレーから逆転に成功した。一方のユヴェントスはロナウドのヘディングシュート以外、ゴールチャンスを1本しか作れなかった。

アヤックスは守備でもユヴェントスを上回っており、シュートブロックは5本(ユヴェントスは3本)、ボールクリアはユヴェントスの10本に対して23本と圧倒した。ユヴェントスのプレーでアヤックスに先んじて動けていたのは、ロナウドの先制ヘディング弾のシーンだけだった。

大番狂わせではない、組織的なチームの必然のベスト4入り

アヤックスの強みは中盤を中心とした組織力だ。

逆転弾を叩き込んだ19歳のCBデ・リフト、22歳のMFファン・デ・ヴェーク、21歳のMFデ・ヨングと、若い選手が注目を集めるアヤックスだが、この日は彼らに加えて中盤を支えるベテランMFラス・シェーネも躍動した。逆転弾を生んだコーナーキックを蹴っただけでなく、パス決定率は両チームトップの93%。45本のパスを成功させたうえに決定的なパスを3本通した。

また守備では2本のインターセプトでピンチの芽を摘むなど、攻守でチームを支えた。このシェーネを筆頭に中盤の3人が攻守で休むことなく動き続けることが、このチームの強みだ。

今季のアヤックスは、若い才能による爆発的なプレーで大番狂わせを演じてきたチームではない。中盤を軸として前線及び最終ラインがコレクティブなプレーができ、個人技に簡単に屈するチームではないことを、これまでの戦いぶりからも見て取れる。

特に今季のユヴェントスとレアルは組織力に問題を抱え、例年以上にスター選手の個人技に頼る状況にあった。それではこのアヤックスを簡単に崩すことはできない。アヤックスは高い組織力という基礎の上で若手選手が勢いを発揮するチームだからこそ、ユヴェントス、レアル、バイエルン、そしてベンフィカといった各国の強豪や王者を下し、ここまで勝ち上がってきたのだ。

22年ぶりのベスト4進出を果たしたアヤックス。ベスト4の顔ぶれは、次戦の相手トッテナムに加え、リヴァプールとバルセロナだ。これまでの相手とは違い、個の力を有しながら、非常に高い組織力を誇るチームが勝ち残っている。

1994-95シーズン以来の優勝を目指し、ここからアヤックスの真価が試される。