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英国のEU離脱でイングランドサッカー激変

2019 4/2 15:00Takuya Nagata
ファブレガス,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ブレグジットの結論先延ばしで強化にも影響

英国の欧州連合(EU)からの離脱、いわゆる「ブレグジット」の交渉期限が当初の3月29日から延期されることになった。長引く混乱で、経済や市民生活には既に様々な影響が出ているが、サッカー界も例外ではない。

2019年冬の移籍ウィンドーで、イングランドのクラブの動きは、前年に比べてかなり控えめだった。ブレグジットを目前に様子見といったところだろう。これは経済界とも似た構図だ。交渉が今後ズルズルと長引くと、夏のウィンドーでも移籍市場が鈍化し、短期的なチーム強化に弊害をもたらす可能性がある。

人材難でクラブ格差拡大の懸念

国民投票でEU離脱が過半数になった時点で、プレミアリーグのほぼ全てのクラブがブレグジットに反対の立場だった。プレミアリーグは、オープンな風土で海外から人材や投資を積極的に受け入れ、繁栄を謳歌してきた。

外国籍選手がイングランドでプレーするための労働許可を取得するには、代表チームで基準を上回る実績が必要で、有資格者の数は限られる。その穴を埋めるのが実力派の欧州の選手だ。現在英国でプレーするプロサッカー選手で、ブレグジット後なら入団できなかったであろう選手は数百人に上る。現在のプレミアリーグは、実力が拮抗していて面白い試合が多いが、ブレグジット後は、補強が難しくなり、格差が広がるという意見もある。

育成モデルは大打撃

一見目立たないが、大きな痛手は、18歳未満の選手を獲得できなくなる事だ。FIFAの規定で、原則として18歳にならないと国際移籍が出来ないが、EU圏内では16歳に条件が緩和されている。ユースからプロになる年代のこの2年の差は非常に大きい。セスク・ファブレガスは、バルセロナのカンテラでプレーしていた当時、U17スペイン代表での活躍が認められアーセナルに移籍した。

イングランドのビッグクラブは、有望な若手選手を数多く保有し、EU圏にレンタル移籍させている。ブレグジット後は、18歳未満は移籍できず、18歳を過ぎてもビザの手続きが必要になり、この育成モデルは多くの壁にぶち当たることになる。不利益を被るのは、クラブだけではなく、巡り巡ってイングランド代表にも影響が出る。

ドイツ・ブンデスリーガのボルシア・ドルトムントで成果を上げたジェイドン・サンチョは、マンチェスター・シティが保有している。イングランドサッカーは、他の欧州諸国のリーグとスタイルを異にしており、それが国際試合で弱点にもなりうる。欧州大陸で経験を積んだ選手は、イングランド代表に厚みを持たせるためにも貴重な存在だ。

イングランド代表はブレグジットに前向き

イングランドのサッカー関係者には、ブレグジットを前向きにとらえている者もあるだろう。イングランド代表ガレス・サウスゲート監督は、プレミアリーグで出場するイングランド人選手が少ないことを嘆いている。既に育成枠(ホームグロウン)があり、英国で育成された選手を一定数保有することを義務付けている。しかし、現行のルールでは、16歳でマンチェスター・ユナイテッドに入団したフランス代表ポール・ポグバも該当しており、育成枠の定義を更に厳格化し、英国籍者が多くなるようにすることを画策している。

EU離脱によって欧州の選手が減ることで、英国籍選手の出場機会が増すことが見込まれる。一方クラブは、今後、帳尻を合わせるために、不利な条件でもやむなく選手放出をしなければならないかもしれない。

行方次第でプレミアリーグのバブル弾ける

ブレグジットについて、リーグが競争力を失うというのが、クラブのおおよその見解だ。一方で、代表チームは、イングランド人選手が出場しやすくなる好機ともみている。しかし、レベルが高いからこそ、出場に意味があるのではないだろうか。事実、イングランド代表は近年、育成が実を結び国際大会で好成績を収めている。

現在の形のプレミアリーグは1992年に始まり成功しているが、それ以前には暗黒時代があったことを忘れてはいけない。EUとのヒトとモノの移動の自由が制限されるハードブレグジットになった場合、プレミアリーグのバブルが崩壊する可能性がある。

現在、多くの企業が欧州の拠点を英国から大陸側に移している。近年ドイツ・ブンデスリーガの成長が著しい。今は、イングランドの僅かに下といった位置づけだが、サッカー母国が舵取りを誤れば、そう遠くない将来、イングランド・プレミアリーグに人気、実力、経済力ともに追いつき追い越す可能性は、十分にあり得る。

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