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トッティの再来か? ローマに現れた神童ザニオロとは

2019 2/20 07:00橘ナオヤ
ザニオロ,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

若手が躍動するCLで彗星のごとく現れたニューアイドル

2018-19シーズンのUEFAチャンピオンズリーグもいよいよ決勝トーナメントが始まった。今大会は若い選手の活躍が目立つ。オールド・トラフォードではパリ・サンジェルマンの20歳の怪物、キリアン・ムバッペがCL通算14得点目となるゴールを決め勝利に貢献した。

すでにトッププレーヤーとなったムバッペだが、彼だけが将来を嘱望されているわけではない。同時刻、ローマのスタディオ・オリンピコで、イタリア代表の新記録を打ち立てた若者がいた。ASローマのニューアイドル、ニコロ・ザニオロだ。

インテルが見い出し、手放した神童

1999年にトスカーナ州マッサに生まれたザニオロは、フィオレンティーナのユース出身。2017年にミランやユヴェントスといった強豪が関心を示す中、インテルが獲得に成功した。2017-18シーズンには、プリマヴェーラ(ユースリーグ)で13ゴールを挙げて得点王に輝き、インテル優勝の原動力にもなった。

ミッドフィールダーながら類まれな攻撃センスを持つ彼は、インテルの未来として期待されていたが、当時トップチームを率いていたルチアーノ・スパレッティはこの若手にチャンスを与えることはなく、インテルでトップチームデビューを果たすことはなかった。出番を欲するザニオロは2018年、ラジャ・ナインゴランとトレードする形で、ダビド・サントンとともにローマへと移籍した。

セリエA未経験でもA代表招集

その年に行われたU-19欧州選手権ではプリマヴェーラで見せた力を発揮し、イタリアの主力としてプレー。惜しくもポルトガルに敗れ準優勝に終わったが、その戦いぶりにヨーロッパ中のスカウトが注目した。

すると9月、A代表のロベルト・マンチーニ監督はまだトップチームでの出場経験のないザニオロを招集。UEFAネーションズリーグ出場メンバーに名を連ねた。実際にプレーすることはなかったが、飛び級で招集された17歳のピエトロ・ペッレグリらとともにサプライズとして取り上げられた。

ちなみにセリエA未デビューでA代表に召集されたのは、ザニオロが史上4人目だ。彼の前には、1929年のラファエレ・コスタンティノ、2002年のマッシモ・マッカローネ、そして2012年のマルコ・ヴェッラッティが、セリエAのピッチを踏む前にアッズーリの一員となっている。

トッティ以来となる10代でのセリエA3得点

ローマでの公式戦デビューは9月19日。なんとUEFAチャンピオンズリーグのグループステージ、同大会3連覇中のレアル・マドリーとのアウェー戦だった。

試合は0-3と完敗だったものの、中盤の左で冷静にプレーしたザニオロを指揮官は高く評価した。ここから彼の躍進が始まる。その後も断続的ながらリーグ戦で出場機会を与えられると、年内にセリエA初ゴールが生まれた。12月26日のサッスオーロ戦、冷静にディフェンダーをかわして放ったチップキックのシュートは、およそ19歳の若者のプレーとは思えない、悪賢く落ち着き払ったシュートだった。

次のゴールは1月19日のトリノ戦。開始早々にトルコ代表ジェンギス・ウンデルが負傷交代するトラブルに見舞われたローマ。だがザニオロは落ち着きを失わず、ペナルティエリア内で190cmの長身とボディバランスを生かしてボールをコントロールすると、利き足の左足で強烈な先制点を叩き込んだ。

3点目は2月3日のミランとの大一番。この試合の前、コッパ・イタリア準々決勝でローマはフィオレンティーナ相手に7-1という記録的大敗を喫していた。この日の試合でもクリシュトフ・ピアチェクに先制点を奪われ、前半を1点ビハインドで折り返す苦しい展開。チームに立ち込め始めた暗いムードを振り払ったのがザニオロだった。

SBカルスドルプが右サイドからボールを入れると、GKジャンルイジ・ドンナルンマが弾いたところを逆サイドから猛然と走り込んだザニオロがネットに突き刺した。後半開始早々のザニオロの同点ゴールが、下を向きかけていたチームを救った。19歳にしてセリエAで3ゴールを記録したのは、ローマの“王子”フランチェスコ・トッティ以来となる年少記録だ。

ローマとイタリアの輝かしい未来

すっかり主力として定着したザニオロは、CLでも記録を打ち立てた。決勝トーナメント一回戦、ポルトとの1stレグで2ゴールを決めて勝利に貢献。19歳225日でのゴールは、同大会のイタリア人史上最年少得点記録となった。相手GKは元スペイン代表のイケル・カシージャスだった。

今でこそ190cmと長身のザニオロだが、15、6歳の頃はまだ背が低く、フィジカル頼りではなく足下のテクニックに磨きをかけた。現在はその精度の高い左足と攻撃センスに高身長とボディバランスが加わり、現在のような万能型の攻撃的MFへと成長した。

ザニオロはドンナルンマやフェデリコ・キエーザ、ペッレグリらとともに、イタリア代表の輝かしい未来だ。そしてトッティの再来と称され、背番号10の継承さえささやかれるアイドルは、ローマの未来でもある。トッティは1993-94シーズンにリーグ4得点、全コンペティションで7ゴールを決めた。ザニオロは既に5ゴールを決めており、この記録を破るかも注目だ。