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リベルタドーレス杯決勝第2試合が国外開催、アルゼンチンサッカーは暴力根絶に目覚めよ

2018 12/1 15:00Takuya Nagata
コパ・リベルタドーレスⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ブエノスアイレス・ダービーなのに2クラブ揃ってアルゼンチン国外へ遠征

ボカ・ジュニアーズとCAリーベル・プレートという、共にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスを本拠地とする2クラブが決勝に進出したコパ・リベルタドーレス決勝戦第2試合が国外で行われることになった。近隣クラブ同士にも関わらず国外に揃って遠征とは何とも皮肉な結末だ。

第1試合は投石で選手負傷欠場も試合強行、根が深いサッカー取り巻く暴力

11月11日に行われた南米クラブ王者を決めるビッグマッチの決勝戦第1試合では、ホームのボカ・ジュニアーズのチームバスが攻撃を避けるようにスピードを落とさずにスタジアム入りしたが、リーベル・プレートサポーターはそれを見逃さず集中的な投石。そのうちの大きな石一つが窓ガラスを貫通し、MFパブロ・ペレスの左目を直撃した。出場するはずだった主力を不本意なかたちで欠いたボカ・ジュニアーズは試合延期を願い出たが、12月12日から22日にUAEで開催されるクラブワールドカップに出場する南米代表を決めなければならない南米サッカー連盟(CONMEBOL)は、試合を強行した。

試合後、リーベル・プレートサポーターは、反省するどころか、第2試合のリハーサルと言わんばかりにボカに見立てた青いユニフォームを着せた豚をよってたかって空中に投げ、挙句の果てには八つ裂きにする映像を公開した。

ブエノスアイレス市のオラシオ・ロドリゲス市長は、暴発の背後に熱烈で過激化しやすいサポーター集団バッラ・ブラーバがあると指摘する。そのリーダー格に対して警察が家宅捜査を行い、1000万ペソ(約3000万円)と決勝戦のチケット300枚を押収していた。

怒り収まらないボカはリーベル失格を主張も、南米サッカー連盟は団結訴える

アルゼンチン代表歴のあるボカ・ジュニアーズMFパブロ・ペレスは、大一番での無念の負傷欠場に対して、やるせない思いを吐露。ボカ・ジュニアーズのダニエル・アンへリシ会長は、リーベル・プレートの失格を求めスポーツ仲裁裁判所(CAS)に訴える動きまで見せて、同クラブOBのディエゴ・マラドーナもそれを支持した。

南米サッカー連盟のアレハンドロ・ドミンゲス会長は「サッカーで私たちは団結する。暴力により、試合が奪われてしまった。黙認することは出来ない。勝者と敗者があるが、それは死を意味するわけではない。リーベルとボカの会長には、正しいメッセージを発するように要請したい。暴力をなくすには皆が一丸となり努力しなければならない」と沈静化を訴えた。

11月24日にリーベル・プレート本拠地に予定されていた試合は延期され、押し問答の末、12月に中立国で行われることでひとまず決着した。

情熱と激しさは一流選手を育てるも、暴力は多くのモノを台無しに

有力スター選手を数多く輩出するアルゼンチンリーグは、世界有数の激しさで知られる。ワールドカップは国を背負った戦争と表現され、無慈悲なプレーが飛び出すこともあるが、アルゼンチンではそれは日常茶飯事だ。この「地獄」を潜り抜けてきた選手たちが欧州で活躍できない方がおかしいのだ。

アルゼンチンのピッチ上の激しさは、ピッチの外とも相関関係にあり、暴力が日常化している。過去には、選手にモノが当たり死亡した事件が起こっており、モノを投げる行為や場内乱入の対策として、ピッチは金網で囲われている。そしてスタジアム周辺の風景は時に、警官隊とサポーターが激突し、スポーツというより暴動の様だ。

このような殺伐とした雰囲気のため、女性や将来を担う子供たちの足をスタジアムから遠ざけている。この一件では、試合そのものが他国に行ってしまった。

アルゼンチンのサッカー熱はすさまじいものがあるが、暴力により失っているものも多くあることを自覚すべき時だろう。