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“ユーヴェのロナウド”絶好調! 不安一蹴しイタリア王者をけん引

2018 11/29 15:00橘ナオヤ
クリスティアーノ・ロナウド,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

新天地に降り立った王者ロナウド

レアル・マドリーに絶対的エースとして君臨すること9シーズン。チャンピオンズリーグ3連覇を果たした2017-18シーズン終了後、クリスティアーノ・ロナウドはマドリーとの契約を解除し、イタリアの王者ユヴェントスへの移籍を発表した。

スーパースターの突然の移籍は、新たなチャレンジとして驚きをもって受け止められた。

テクニックとスピードが魅力のリーグから、堅守のリーグで今まで通りの得点力を発揮できるのか。スーパースターは指揮官マクシミリアーノ・アッレグリやチームメイトとなじむことはできるのか。

こうしたいくつかの懸念の声がわき起こっていたが、シーズン序盤戦を終えたいま、ロナウドはそうした懸念をねじ伏せるような大活躍を見せている。

短時間で順応し無敗のチームの原動力に

最も出来たシナリオは、開幕戦から怒涛のゴールラッシュで、堅守の文化を早々に打ち破ってしまうーそんなところだったか。

だがセリエA初ゴールが生まれたのは第4節のサッスオーロ戦。初得点まで時間はかかった。だがひとたびゴールネットを揺らすと、チームへの順応スピードは一気にアップした。

2トップの相棒マリオ・マンジュキッチやパウロ・ディバラ、ドウグラス・コスタ、快く背番号7を譲ってくれたフアン・クアドラードらFW陣と強力な前線を形成。彼らとの連携が機能しはじめ、瞬く間にゴールを積み重ねた。

セリエA第13節終了時点で9ゴール5アシスト。チームトップスコアラーなのはもちろん、リーグ得点ランキングでも2位につけている。

アシストの多さにも注目したい。30代に入り以前のような爆発的なドリブルスピードは無いものの、判断力と前への突破力は健在。マーカーとして相手をひきつけ、マンジュキッチら味方にスペースを提供する。第9節のラツィオ戦では得点こそなかったものの3アシストを記録した。

ユーヴェはリーグ無敗の13戦12勝。ロナウドはリーグ戦全試合で先発し、間違いなく無敗の原動力となっている。

ロナウドがハマる素地のあったユーヴェ選手陣

ロナウドが入り、チームメイトとの連携が取れてきたことで、アッレグリの戦術に広がりが生まれたと言われる。

昨シーズンは、ゴンサロ・イグアインをセンターに、マンジュキッチとディバラを両翼に据えた3トップが基本だった。だが今季はマンジュキッチをセンターに、ロナウドとディバラかクアドラードをウィングに配置する3トップだけでなく、ロナウドとマンジュキッチをトップに置く4-4-2も機能している。

戦術の幅が広がったのは、ロナウドがウィンガーとしてもセンターフォワードとしても超一流だからに他ならないが、その才能を活かせるだけの素地が、ユーヴェに備わっていたからでもある。

マンジュキッチは、単なる高身長センターフォワードではない。ここ数シーズンはウィングで起用されることも多く、その中で足元の技術やポジショニングに磨きをかけてきた。万能型FWとなったマンジュキッチは、ロナウドの相棒として最適。4-4-2、4-3-3どちらのフォーメーションでも互いを活かし合うことができている。

ロナウドがすぐ順応できた理由は中盤以下にもある。ミラレム・ピャニッチという高精度のキックの持ち主の存在もそのひとつだ。マドリー時代のチームメイト、ルカ・モドリッチやシャビ・アロンソのように、ロナウドに正確無比なパスを通してくれる。

リーグ戦9ゴール目となったSPAL戦のゴールも、ピャニッチの針の穴を通すようなパスから生まれた。

サイドでも、マドリーの左SBマルセロと長年見せてきた阿吽の呼吸には及ばないにしろ、デ・シリオやカンセロ、アレックス・サンドロらが、攻撃に特化したロナウドの守備面をサポートしている。ブレーズ・マテュイディやサミ・ケディラといった高い守備センスを誇る中盤がいることも、ロナウドの負担を軽減し、得点に絡むという形でチームにいち早く貢献できる要素となった。

マドリーとユヴェントスは異なるチームであり、当然異なる戦術をとる。だが、ロナウドがその世界最高峰の攻撃力を発揮できる高いレベルの選手陣が揃っているという点では、同様だったようだ。

早くも新天地で記録を樹立。王者は歩みを止めない

ロナウドはこの13節までの間に、既に複数の記録を達成している。

まずクラブ記録だ。デビューシーズン13試合という短時間で9ゴールをあげたのは、1968-69シーズンのピエトロ・アナスタシ氏以来50年ぶり。半世紀ぶりの快挙を果たした。

さらに、チャンピオンズリーグでの1ゴールを計上すると16試合で10ゴール。これはユーヴェのクラブ史上最速での2桁得点だ。

ロナウド個人としても14シーズン連続で公式戦2桁得点を達成。得点量産の先に彼が見据えるのは、ユーヴェにとっては8連覇、ロナウドにとっては3種類目のリーグタイトルとなるスクデット(セリエA優勝)、そして3クラブ目でのチャンピオンズリーグ優勝だ。

チームメイトや指揮官からも、そのプレーだけでなく人間性も称賛を浴びるスーパースター。1年目ながらチームに与えている影響は絶大だ。ユーヴェというチームに最高のピースとしてハマったロナウド。歩みを止めず、ゴールを決め続ける。