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限定で代表カムバックのルーニーは完全復帰を。生きる伝説を終わらせないで

2018 11/10 15:00Takuya Nagata
ルーニー,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

1試合限定でイングランドの代表に復帰

イングランドサッカー協会(FA)は、11月15日にウェンブリースタジアムで米国を迎えて国際親善試合を行う。

そこで、ウェイン・ルーニー(33)が1試合限定で代表に復帰をすると発表した。ルーニーの代表120試合目となるこの試合は、「ウェイン・ルーニー財団インターナショナル」と題したチャリティーマッチとして開催されることも同時に明らかになった。

記録づくしの代表キャリアを持つが、英メディアは厳しい目

17歳111日のイングランド最年少代表記録(当時)、17歳317日のイングランド代表最年少得点、53得点のイングランド代表歴代最多得点と、記録に彩られた功績を称える代表引退試合の位置付けだ。

しかし伝統を重んじ、目の厳しい英国メディアには、神聖な代表のピッチに対して、お祭りのようにルーニーを招集する正当性について、議論が沸き起こっている。米国メジャーリーグサッカー・D.C.ユナイテッドという、イングランドプレミアリーグから見たら、明らかにレベルが下のクラブでプレーしていることも一因だ。

2017年の夏に代表引退を宣言したルーニー。ヨーロッパでは、夏にはバカンスに行くものという風潮があるが、代表チームはオフシーズンの夏期にも活動があるため、余力を残して代表引退する選手もいる。ルーニーに関しては、実は舞台裏でガレス・サウスゲート監督が代表慰留を目指していた。つまり、ルーニーは自分の意思で代表を退いたのであり、代表監督の構想にはまだ入っているのだ。

アメリカに渡る前は、マンチェスター・ユナイテッドで先発を外れることが増えたが、古巣エバートンに復帰すると輝きを取り戻した。行き場がなく米国に行ったというより、キャリアを終える前に新しい世界を見たかったのではないだろうか。

D.C.ユナイテッドでは、20試合に出場し、12得点7アシストと活躍。若手主体で最下位に沈んでいたチームをプレーオフ進出に導いた。

ルーニーの代表での功績、そして実力的に代表チームの構想にあることを鑑みると、決して代表の舞台を軽んじる行為ではないだろう。むしろ、ルーニーは進んでチャリティーマッチを行っているわけで、称賛に値するものだ。

総合力・史上最高のオールラウンダー。代表が必要とする時が必ず来る

この際、そのまま代表に完全復帰を果たしてもいいのではないだろうか。イングランドでは、育成が実を結び、ハリー・ケインやマーカス・ラッシュフォードら、多くの若手選手が育っていることは確かだが、大舞台では必ず経験豊富なベテランの力が必要になる。その候補に、ルーニーをおいて他に誰がいるだろうか。

ルーニーは、サッカー史上最高のフットボーラーと呼ばれる可能性がある、数少ない選手である。他国を見れば、フランス代表キリアン・エムバペ(19)の様に、FWとしてルーニーと同等のポテンシャルを持った選手はいるだろう。しかし、フットボーラーとして、ルーニーの総合力を評価した時、それに太刀打ちできる選手を探してもまず見当たらない。

FWだと思われているルーニーだが、得点という目に見える形で活躍してくれるから、前線で起用されているだけであって、中盤に下がっても超一流のプレーが可能。実戦で観ることはまずないが、DFを含め、全てのプレミアリーグのポジションで、レギュラークラスの実力を発揮する能力がある。選手として非の打ち所がない。

実際、ルーニーの総合力が見事に発揮されたのが、8月のオーランド・シティ戦。2-2で迎えたロスタイムだった。コーナーキックのシーンで、D.C.がゴールキーパーを含めて全員攻撃をした際、逆にカウンターを受け、無人のゴールにシュートを撃たれるかと思いきや、ルーニーが長い距離を走り、自陣に戻ってスライディングタックル。危機を救うと、そのまま前線にロングフィードを行い、勝ち越し弾をアシストした。試合を読む力、ミスをすれば終わりの場面で、必殺スライディングタックルでしっかりボールを奪取する度胸と守備力、そしてアシスト。得点力以外の力が改めて証明された。

ルーニーの能力を示す他の例には、プレミアリーグのシーズン最速、時速35キロメートルのスピード記録がある。更にユース時代には、ボクシングも並行して行い、相当の実力だったと言われ、WBA世界スーパーライト級王者のプロボクサー、リッキー・ハットンにも腕相撲で勝ったこともある腕力がある。完全無欠のアスリートだ。

老け込むのはまだ早すぎる。更なるイングランド代表記録樹立を

これだけの素質を持っているのだから、老け込むにはまだ早すぎる。日本代表でも、年齢を理由に代表を外れていた、大久保嘉人が父親の遺言をきっかけに調子を上げ、2014年にW杯に出場した例がある。

ルーニーもハートに火をつけるきっかけがあれば、第一線でもうひと暴れしてくれるだろう。気持ちと体調管理さえ維持できれば、125試合のイングランド代表最多出場記録を持つピーター・シルトン、そして42歳104日のイングランド代表最年長出場記録を持つスタンリー・マシューズを超えるのも夢ではないかもしれない。