「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

4バックに回帰したチェルシー サッリ就任でもたらされる期待の戦術

2018 8/21 07:00SPAIA編集部
マウリツィオ・サッリ,チェルシー,パンフレット
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

コンテOUT、サッリIN チェルシーはどう変わるのか?

SSCナポリを率い「世界一美しいサッカー」と称賛された名将マウリツィオ・サッリがアントニオ・コンテの後任としてチェルシーFCにやってきた。

コンテは2016-17シーズンにチェルシー監督に就任し、プレミアリーグ初挑戦初優勝という素晴らしい成績を残したが、2シーズン目で選手とフロント双方との信頼関係が破綻。解任の憂き目にあった。

後任にはFCバルセロナを率いたルイス・エンリケなどの名前も挙がったが、選ばれたのはサッリ。

サッリの戦術は、緻密に練られた戦術ルールからなる秩序だった連携、組織プレーが特徴だ。サッリが指揮官として采配を振るうことで2018-19シーズンのチェルシーはどのように変わっていくのだろうか。

コンテチェルシーの問題点と4バックへの回帰

コンテ就任1年目のチェルシーは、プレミアリーグでは珍しかった3バック、3-4-3を基本としたシステムで戦い成功を収めた。このシステムは攻撃時にはWBが駆け上がり5トップのように機能、守備時にはWBが下がり5バックのように機能するため、攻撃に枚数をかけながら守備も対応できる。

しかし、このシステムではWBの負担が大きく、出場選手、対戦相手によっては中盤が間延びする傾向にあった。

コンテの3-4-3が間延びしたのは、守備時にはサイドに追い込んでボールを奪い、攻撃時にサイドからの攻撃に依存する方法をとったからだ。どちらの場合においても選手間の距離は広くなり、当然パス距離も長くなることが多い。その間を埋める選手はおらず、カンテがひた走る姿が散見された。

2018-19シーズンはここにジョルジーニョがリンクマンとして加わり、指示出しも行う。彼のプレーを見ていると、パスコースやプレスをかけるタイミングを頻繁に指差している。

結果的に縦横無尽の活躍を見せていたカンテは疲弊し、ビルドアップは停滞。ボールは思ったように回らなくなる。

サッリの就任でまず大きく変わるのはここだろう。

まずは4-3-3の4バックへと回帰し、中盤からゲームを支配することに重きを置く。彼がナポリで作り上げたサッカーも、中盤で短いパスを繋げることを軸としていた。 4バックにすることでエリアをコンパクトにすることができ、攻撃時・守備時ともに選手の負担は大きく軽減されるだろう。

サッリを知る教え子、ジョルジーニョ争奪戦を制す

サッリのサッカーを作り上げるのに欠かせないピースがある。それはサッリとともに働いたMFジョルジーニョの存在だ。

ジョルジーニョはマンチェスター・シティFCのグアルディオラも狙っていたが、彼が選んだのはチェルシーだった。恩師であるサッリの存在なくして、この獲得はあり得なかっただろう。

ジョルジーニョは中盤をコントロールする上で、突出した力を持つ。必要な場所にボールを出せるだけでなく、相手の攻撃をカットしトーンダウンさせることもできる。

この動きはこれまでカンテが1人で担っていたわけだが、ジョルジーニョという相棒を得ることで負担とマークの分散を狙えるだろう。サッリとしても、自分のやり方を知っている選手をスタメンに起用できることは大きい。

相手に与える脅威!サッリのレイオフとアザールのフリック

サッリのサッカーでは、楔のパス後のレイオフに注目すべきだろう。

レイオフをわかりやすく言えば、楔のように出されたパスを受け取る選手による”落としのパス(後方から前線に上がってくる選手へのショートパスなど)”であり、攻撃の再構築やワンツーによる抜け出しを狙う時に用いられる。

ナポリもこの楔のパスとレイオフの多用により前線を押し上げ、攻撃と守備を高い位置で行うことを得意とした。ナポリのサッカーが美しいとされた所以もここにある。

このレイオフを精確に行えるのはエデン・アザールだ。アザールは元から味方とのパス交換により攻め上がることを得意としており、サッリのサッカーにも問題なくフィットするだろう。また、彼が時折見せる鮮やかなフリックもレイオフにはうってつけだ。意表を突く彼のフリックからミドルシュートを狙うことも、味方が素早く裏へ抜け出すこともできる。

サッリのサッカーの導入により、アザールの脅威はこれまでよりも大きくなるに違いない。

サッリ「チームはこれで完成」、チェルシーの新シーズン始動

2018-19シーズンに臨むチェルシーにとって、移籍市場ではティボー・クルトワとアザールを慰留できるかがポイントだった。

サッリは2人と直接交渉の席につくことを期待したが、クルトワはチームに合流することなく移籍してしまった。しかし、その代わりにケパ・アリサバラガをすぐさま補強することで事なきを得て、噂され続けたアザールの慰留には成功する。恐れていたほどのダメージはなく、むしろ移籍市場の立ち回りはかなり良かった。

ジョルジーニョに加え、マテオ・コバチッチを獲得できたことはとても明るいニュースだ。前線にもウィリアンやペドロといったベテランが控えている上に、プレシーズンには若手であるカラム・ハドソン・オドイの成長も見られる。

サッリの「チームはこれで完成」の言葉は強がりなどではない。チェルシーは新しいシーズンを非常に良い形で迎えている。