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収益世界一のマンUが苦境に…… 補強失敗、ライバル好調で監督解任運動まで勃発

2018 8/16 15:00Takuya Nagata
リヴァプール,サポーター
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Ⓒゲッティイメージズ

武藤がニューカッスルUデビュー、リバプールは黄金時代の再来なるか

イングランド・プレミアリーグの2018-2019シーズンが開幕した。

8月10日から12日にかけて第一節が行われ、昨季欧州CLで準優勝したリバプールが4-0でウェストハムに快勝。昨季から続く好調を維持し、古豪復活の可能性を感じさせる。

ロシアW杯にも出場した日本代表FW武藤嘉紀はドイツのマインツから約1000万ユーロ(約12億7千万円)の移籍金でニューカッスル・ユナイテッドに加入。トッテナム・ホットスパー戦に途中出場し、1-2で敗れたものの、早速プレミアデビューを果たした。

サッカーマネー生態系の頂点も、補強費用は2010年以来の減額

会計の世界最大手デロイトは、世界の各サッカークラブの財務的なパフォーマンスをDeloitteフットボールマネーリーグとして報告しており、世界の収益トップ20にプレミアリーグからは、半数の10クラブがランクインしている。

移籍市場でもその潤沢な資金力でサッカー界の食物連鎖の頂点にいるのがイングランドだが、プレミアリーグ全体の今夏の補強費は、13億5000万ユーロ(約1715億円)と、2010年以降で初めて前年の補強費を下回った。

デロイトの2018年度版のレポートによると、首位のマンチェスター・ユナイテッド(収益6億7630万ユーロ=約860億円)が控えめな補強にとどまり、同11位のトッテナム(収益3億5560万ユーロ=約450億円)も全く補強費用を使わなかったことが、大きな要因となっている。

この2クラブは、お金をあまり使わなかったという共通点があるが、実態はまるで異なる。

マンチェスター・ユナイテッドの主だった補強は、ブラジル代表歴のあるMFフレッジ(25歳)、ポルトから加入した若手DFディオゴ・ダロト(19歳)、ストーク・シティからベテランGKリー・グラント(35歳)と、地味な補強にとどまった。ジョゼ・モウリーニョ監督は、「私の役職は、マネージャーではなくヘッドコーチと呼ぶべき。長期にわたって練ってきた計画では、3人ではなく、6人補強したかったが叶わなかった」と、暗にマンU経営陣をチクリ。クラブ内の連携不足や交渉の不調等から、お金を使いそびれたというのが正しい。

一方、マウリシオ・ポチェティーノ監督率いるトッテナム・ホットスパーは、使う予算はあるが、チームの既存戦力に満足なため補強費を全く使わなかった。これは、プレミアリーグ史上初の珍事だ。昨季3位と好成績を収め、全てがうまくいっているということの表れだろう。

熾烈を極めるマンチェスター情勢

今夏の移籍ウィンドー(国際移籍期間)での失敗により、マンチェスター・ユナイテッドは、クラブ史上初のディレクター・オブ・フットボールを設置することを検討しているという。

イングランドのクラブ運営の特徴として、監督はマネージャーと呼ばれ、現場の全権を掌握していることが多い。つまり、他国で言うゼネラルマネージャーや強化部長といったポジションを兼任している。27年間マンUを指揮した、サー・アレックス・ファーガソンがその代表的な例だ。

一方、地元のライバル、マンチェスター・シティは、ディレクター・オブ・フットボールにJリーグ浦和でもプレーしたチキ・ベギリスタイン氏を置き、ジョゼップ・グアルディオラ監督が指揮を執るというバルセロナ仕込みの体制で、2017―2018シーズンは、なんと勝ち点100をたたき出し、2位のマンUに19ポイントも差をつけ、ぶっちぎりで優勝をさらった。

以前は格下だったシティを今度は追いかける立場になっている赤い悪魔。サポーターの心情は穏やかではなく、早くもモウリーニョ監督解任運動が起きており、契約解除費用を工面しようと、クラウドファンディングを行う事態にまで発展している。

今シーズンも、開幕時点で既にヒートアップしているイングランド・プレミアリーグ。話題に事欠かず、刺激的なシーズンになる事は間違いないだろう。