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【稀代の天才監督】グアルディオラについて知っておくべき4つのこと

2018 3/28 12:07dai06
ジョゼップ・グアルディオラ
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バルセロナで磨き上げたグアルディオラのポゼッションサッカー

ペップことジョゼップ・グアルディオラは1971年1月18日生まれ、スペインのカタルーニャ州で育った元サッカー選手だ。後に監督として指揮することになるバルセロナのユースで育ち、プロになってからもこのクラブで多くの時を過ごしている。選手時代、そしてトップチーム監督就任前の武者修行時代にも、グアルディオラはバルセロナのサッカーを誰よりも知る男だった。

高いポゼッション率を誇る彼のサッカーは、常に試合をコントロール。無理な攻撃を仕掛けることはなく、ボールを何度も回しながら相手の首を徐々に締めていく。とにかく相手を走らせ、マークをずらし、いくつもの隙を作らせながらゴールへと迫るのだ。このグアルディオラのサッカーを、メッシ、イニエスタ、シャビといった選手らは、呼吸するかのごとく自然な形で体現し、圧倒的な強さを誇った。

結果、グアルディオラはバルセロナでリーグを3回、CLを2回、リーグ杯を3回制するなど、計14ものタイトルに恵まれ、惜しまれつつバルセロナを去った。

汚名は着ない、勝って辞めるグアルディオラ

バルセロナを去った後のグアルディオラは、2013-14シーズンからバイエルン・ミュンヘンの監督となった。確かに、前シーズンにトレブル(3冠)を経験したクラブでの、監督就任を不安視する声はあった。通常、監督というのは失敗した時に交代するものだからだ。それでもグアルディオラを招聘したのは、バイエルンが新しいサッカーを取り入れようという意思があったからに違いない。

グアルディオラは、バイエルンに行ってからも素晴らしいサッカーを披露した。バルセロナから移籍した教え子のチアゴ・アルカンタラを筆頭に、バルセロナ時代と同様のポゼッションサッカーを構築。果てにはGKであるマヌエル・ノイアーまでがピッチの高い位置でボールを回すという、異常にも思える現象を起こしてみせた。

最終的にリーグ3連覇を成し遂げて勇退。バルセロナ時代同様、汚名を着て指揮を執るのを辞めるような事態とは無縁だった。監督のすげ替えが激しい現代のサッカー界において、彼のような事例は稀有といえよう。

コンバートの才能、グアルディオラの観察眼

グアルディオラが掲げるポゼッションサッカーでは、ピッチに立つ選手全員に等しくボールを回す力が求められる。彼が認めるレベルでない選手を試合に出さないばかりか、そこに別のポジションの選手を放り込む。いわゆるコンバートだ。

コンバートに関して、彼は他のどの監督よりも優れているだろう。バルセロナ時代には、ハビエル・マスチェラーノをボランチからCBへ、バイエルン時代にはフィリップ・ラームをSBからボランチへ、そして2016-17シーズンから指揮を執るマンチェスター・シティFCでは、オレクサンドル・ジンチェンコをトップ下からSBへとコンバートさせている。いずれもこのコンバートにより出場機会を確保、あるいは新たな才能を開花させることに成功している。

ジンチェンコは1996年生まれの若手で、これまではレンタルに放出することが必然の選手の1人でしかなかった。それでもグアルディオラは、彼の才能を信じSBとして起用。遂にシティの選手としてプレーするに至る。

2017-18シーズン、リーグ29試合終了時点で6試合出場というのは少ない数字に映るかもしれないが、これまでの彼の境遇を思えば大抜擢だろう(2018年3月11日現在)。ベンジャミン・メンディが負傷から完全復帰すればその立ち位置は危うくなるかもしれないが、インパクトは十分に残せている。グアルディオラのコンバートによって彼の将来は開けた。

完成されたグアルディオラのマンチェスター・シティ

2017-18シーズンの第29節、ホームで迎えたチェルシーFC戦でシティは902本のパスを通し、1-0で前年度王者を破った。得点数はわずか1点だが、試合の主導権は常にシティが握っていた。リーグ首位を走るシティが、リーグで最も強いことを示す試合であったようにも思える。

シティ側ほぼ全ての選手のオフザボールの動きが素晴らしく、チェルシー側のパスコースを消して攻撃を鈍化。ボールを回せないでいるチェルシー側に高い位置からプレスをかけ、スイッチを攻撃へと切り替えるスピードは尋常ではなかった。チェルシーにとっては屈辱的な時間となったかもしれないが、これは相手が悪い。就任2年目を迎えたシティは、すっかりグアルディオラ色に……。

これほどまでに統率されたサッカーを展開するクラブは世界になく、クラブから多額の資金投資があったにせよ、グアルディオラにしかできないサッカーだと納得がいく。スペインが生んだ天才監督は、イングランドでも成功を収めるに違いない。