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バルセロナとレアル・マドリードが選手とサポーターにもたらす畏れ

2018 3/9 15:38dai06
バルセロナ
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Ⓒゲッティイメージズ

憧れのクラブへの移籍説、選手が行き着く2大巨頭

世界にはいくつものリーグ・クラブが存在しているが、そのなかでも注目度の高いリーグがある。それがリーガ・エスパニョーラ(スペイン)、プレミアリーグ(イングランド)、ブンデスリーガ(ドイツ)、セリエA(イタリア)、リーグ・アン(フランス)の5大リーグだ。いずれも世界を代表するクラブが名を連ねており、これらのリーグに所属できることは選手にとっても大きな名誉といえる。最高の舞台で最高の選手達と繰り広げられる最高の試合。そんな戦いがそこにはある。

そのなかでリーグ優勝を争うようなクラブに所属できることは、さらに名誉なことだ。そこで活躍することができれば、選手はさらなる名声を得る。しかし、活躍できた選手に待っているのはリーガ・エスパニョーラのバルセロナ、レアル・マドリード(レアル)の2クラブへの移籍説だ。

かつて、プレミアリーグのアーセナルで活躍したティエリ・アンリはバルセロナに行った。セリエAのユヴェントスなどで活躍したジネディーヌ・ジダンもレアルへ行った。リーグ・アンのモナコで活躍したラファエル・マルケスも、ブンデスリーガのバイエルン・ミュンヘンで活躍したトニ・クロースらもそうだ。

元のチームで非常に素晴らしい働きをした選手は、この2クラブに移籍することが多い。仮にその移籍が破談、もしくは噂程度のものでも、著名な選手の周りには、いつもこの2クラブへの移籍説が囁かれる。これはもはやサッカー界の必然とも言うべき兆候なのだ。

「クラブ以上の存在」、選手を虜にする歴史と伝統

力のある選手達が、バルセロナとレアルへの移籍説が囁かれるのは、もはや必然である。それは選手を取り巻くメディアらの噂だけとも言い切れない。この2クラブへの移籍に対しては、選手側が希望する場合もあるからだ。2クラブの圧倒的な強さとブランド力に魅了されるのはサポーターだけではない。こうしたクラブとしての魅力は選手にも影響を与える。

直近の例を挙げるならばフィリペ・コウチーニョだ。2017年夏にバルセロナへの移籍説が熱を帯び、噂ではなく現実のものになろうとしていた。コウチーニョは自らトランスファーリクエスト(選手が所属クラブに出す移籍要望書)を出し、当時所属していたリヴァプールのプレシーズンに帯同することを拒否。しかし、クラブ間の交渉がもつれにもつれ、結局移籍することはできなかった。それでもコウチーニョはバルセロナへの移籍を諦めず、その半年後に念願の移籍を実現させている。

彼をここまで突き動かしたのはバルセロナの歴史にある。「クラブ以上の存在」をスローガンに抱えるバルセロナは、サッカーという枠を越え、人々と密接な繋がりを持ってきた。クラブ消滅の危機、政治や戦争など様々な苦難があったが、バルセロナはクラブとしての誇りを守り続けている。その確固たる意志でサポーターや選手を虜にし、勝ちを積み上げてきたのである。

こうした概念を形に表すことは非常に難しい。だが、その漠然とした何かを守り伝えてきたのがバルセロナ、そしてレアルというクラブだ。この部分に憧れを抱く選手は多い。コウチーニョもそんな選手の1人だろう。彼はアンリが着けていた背番号14を引き継ぎ、偉大なクラブの歴史の一部分になった。

一夜城ではないバルセロナとレアル、金とサッカー

選手がバルセロナとレアルに移籍する時、そこには多くの金が動く。それをポンと払えるのがこの2クラブの凄いところだが、こうした資金力はブランド力が積み上げてきたものでもある。これらすべてを含めて彼らの強さなのだ。

その一方で、彼らの他にも「金満クラブ」と呼ばれるクラブは増えてきた。国内外を問わず多くの資産家・富豪・王族らの協力を得て、クラブの運営に多額の金銭を投じる。それが良いか悪いかは別として、現在のサッカー界はサッカーに関係ない部分、つまり外野からの影響力が計り知れなくなっている。そのおかげでバルセロナとレアルに対抗する資金力を持つクラブも増えている。

それでもバルセロナとレアルは”一夜城”ではない。いくら金を積もうが動かない選手はとにかく動かない。自分を必要とするクラブがバルセロナやレアルであれば喜んでいくが、それ以外のクラブであれば交渉の席に着かない選手もいるのだ。彼らが、求めるのは金ではなく名誉なのだろう。

バルセロナorレアル?愛する選手がいなくなることへの覚悟

バルセロナとレアル以外のクラブを応援すると決めた時、私達には覚悟しなくてはならないことがある。それは「いつか自分(クラブ)にとってのアイドルがいなくなるという可能性がある」ということだ。つい数ヶ月前まで自分達のクラブを「ここにいられて幸せだ」、「僕の心はいつもここにある」と語っていた選手が、気付いた時にはバルセロナやレアルへの憧れを口にし、移籍すると言って聞かなくなることがある。

そんな選手を前にした時、サポーターは心の何処かでそれを「仕方ない」と思うこともあるのではないか。もちろん、自分が応援しているクラブを最も愛していることに疑いの余地はない。だが、選手の気持ちに立ち返った時、バルセロナやレアルに行きたいと思う気持ちがわかる自分もいる。それは選手がこの2クラブに憧れを抱くように、サポーターも心の片隅でこの2クラブに対する”畏れ”にも似た何かを感じ取ることがあるためだ。 自らが応援する好きなクラブの好きな選手が、バルセロナやレアルに移籍してしまう可能性は、いつでもそこかしこに転がっている……。

それでもこうした事情をわかった上で、サポーターとなったからには自分の応援するクラブに所属する選手に精一杯の愛情を注ぐのが真のサポーターというものだろう。