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【2017年夏】ブンデスリーガ強豪クラブの課題と補強通信簿

2017 11/10 12:24dai06
セルジ・ニャブリ選手
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若手流入で安定のトップ維持か、バイエルン

FCバイエルン・ミュンヘン(以下、バイエルン)は、長年にわたってブンデスリーガの頂点に君臨してきた。他のクラブを寄せ付けない強さ、戦術、クラブの伝統がある。彼らはそれらを高いレベルで維持し続け、ドイツ国内だけでなくCLなどの国際舞台でも安定した成績を出してきた。

しかし、その裏には多くの名将や選手たちの活躍があってこそ成り立つものだ。この夏も多くの選手がやってきて、去っていった。

前線にはドイツ期待のアタッカー、セルジ・ニャブリ選手を(以下、敬称略)獲得。複数のクラブを渡り歩きながらも、その高いポテンシャルを随所で発揮してきた。ゴール前での異常なまでの落ち着きは、彼のような若手には珍しい。加入直後にレンタルで出されたが、復帰後には着実に成長を遂げているだろう。

中盤には、ハメス・ロドリゲス選手(以下、敬称略)をレアル・マドリードCF(以下、マドリード)からレンタルで獲得。マドリードで不遇の時間を過ごしていたハメスは、バイエルンのカルロ・アンチェロッティ監督(以下、敬称略)の存在もあって活躍の場を移した。アンチェロッティはマドリードを指揮していた頃に、ハメスの獲得を主導していたため、ハメスにとっては恩師にあたる。
だが、そのアンチェロッティは後に解任されており、ハメスの去就はまたわからなくなった。一説には言語などの問題から、マドリード復帰を希望しているとの報道もある。

また、バイエルンからは、2016ー17シーズンの終了をもってシャビ・アロンソ氏(以下、敬称略)とフィリップ・ラーム氏(以下、敬称略)が引退している。
アロンソの抜けた穴には、フランス人MFのコランタン・トリッソ選手が入った。彼は長短のパス技術だけでなく、前線へも走ることができるオーガナイザーとしての役割が期待できる。まだまだ若いが、黄金時代を迎えようかというフランス代表においても存在感を出しつつある。
ラームの代わりにはドイツ人DFのニクラス・ジューレ選手が加入。彼はラームのようにSBや中盤の低い位置でプレーするよりも、CBとして抜群の勝負強さを誇る。195cmという長身に空中戦の強さをもってすれば、並大抵の選手では歯が立たないだろう。

どうやらバイエルンは、満足いく夏を過ごしたようだ。既存の戦力も着々と力を伸ばしており、新加入選手との競争も激化している。若く有望な選手も多く抱えており、高い競争力を維持しつつ完成度の高いチームが続いていきそうだ。

新時代を築き上げる、ボルシア・ドルトムント

BVボルシア09 e.V. ドルトムント(以下、ドルトムント)は、ここ数年バイエルンの後塵を拝してきた。クロップ監督の下で、一時はCLでも上位を食い込むほどの力を誇ったが、その時代はすでに終わりを迎えている。選手も監督も大きく変わり、新時代を築いている真っ最中だ。

この夏はピエール・エメリク・オーバメヤン選手(以下、敬称略)の慰留が最優先だった。同選手はかねてよりマドリードへの憧れを強調しており、チャンスさえあれば出ていく気は満々だった。幸いなことにマドリードからのアクションがなかったようだが、おそらく今後の市場でもオーバメヤンの周辺は慌ただしくなるはずだ。ひとまずこの夏は、なんとか乗り越えた印象だ。

中盤にはマフムド・ダフード選手(以下、敬称略)を獲得。1996年生まれと若い選手だが、その年齢に似つかわしくない性格無比なパスセンスを持っている。シリア生まれの彼はシリア初のブンデスリーガ戦士として、強豪での出場機会を手にした。
他にはマキシミリアン・フィリップ選手、アンドリー・ヤルモレンコ選手というサイドの両選手も注目すべきだ。
前者はサイドからの素早い駆け上がりとチャンスメイクに秀でた、有望株だ。
後者はウスマン・デンベレ選手の穴を埋めるべく急遽獲得したベテラン。サイドの駆け上がりのキレの良さはもちろんのこと、相手DFやGKと対峙した時の落ち着きにも目を見張るものがある。

ドルトムントは攻撃の主軸をオーバメヤンに置き過ぎているのが心配なところだ。彼が移籍もしくは負傷で抜けてしまえば、彼の代わりに得点する者がいなかった。
この夏補強した選手たちであれば、このオーバメヤンをバックアップできるだけでなく、得点を積み上げていくこともできるはずだ。日本人の視点としては、ここに香川真司選手が割って入っていくことに期待したい。

新興クラブだから弱いとは言わせない、RBライプツィヒ

2009年に発足したRBライプツィヒ(以下、ライプツィヒ)は、新興クラブとは思えないほどの強さを維持し続けている。
ブンデスリーガ初挑戦となった2016ー17シーズンの2位通過は奇跡に思われたが、2017-18シーズンも第8節終了時点で勝ち点16のリーグ3位。1位のドルトムントとはわずか3ポイント差であり、このシーズンも上位で戦い抜ける期待がもてる。彼らには「新興クラブだから弱い」、「成績が良くても奇跡だ」という野次はもはや通用しないだろう。

市場では、中盤を引き締めるオーガナイザー、ナビ・ケイタ選手をリヴァプールFCから守り抜き、ケヴィン・カンプル選手、ジェフリー・ブルマ選手といったアタッカーを加えた。どちらもスピードがあり、強豪相手にも強烈な1発を叩き込めるだけのポテンシャルがある。

また、ティモ・ヴェルナー選手も、この夏は出ていかなかった。昨シーズン21得点を挙げたドイツの新たな点取り屋は、新しいシーズンでも多くの対戦相手を苦労させることだろう。

育成力の高さに期待はできるのか、シャルケ

内田篤人選手が退団したシャルケ04(以下、シャルケ)。育成力の高さで知られるこのクラブは、この夏多くの選手を放出した。
そのなかにはヨハネス・ガイス選手らレンタルでの放出組も含まれるが、チームの顔はガラリと変わった印象を受ける。クラース・ヤン・フンテラール選手という名選手も去り、セアド・コラシナツ選手、デニス・アオゴ選手といったインテリジェンスに溢れる選手も去った。

そんななか獲得した注目選手は、トッテナム・ホットスパーFCからの完全移籍となったナビル・ベンタレブ選手くらいだろうか。昨シーズンはレンタルでの加入だったが、シャルケの30試合以上に出場。中盤での落ち着き払ったパス回しとプレッシングが魅力で、チームの屋台骨になれる選手だ。

多くのライバルが積極的な補強を見せる一方、不安の残る展開となったシャルケ。新しい有望株が現れるようなサプライズはあるのだろうか。

強豪との力関係が顕著に、ホッフェンハイム

TSG1899ホッフェンハイム(以下、ホッフェンハイム)の監督は、当時28歳で就任したユリアン・ナーゲルスマン監督(以下、敬称略)だ。彼は現代のテクノロジーを駆使し、様々なデータを基に選手を指揮する。サッカー界では今最も指導力のある若手監督と言って差し支えない。

この夏のホッフェンハイムは、バイエルンからニャブリをレンタルで獲得。ハングリー精神のあるこの若手は、ナーゲルスマンの指導の下で目覚めるかもしれない。有望な若手には適切な指導者が必要だ。ナーゲルスマンの新しいサッカーは、ニャブリを良い方向へ導くだろう。

その一方でセバスティアン・ルディ選手とジューレの放出は痛手となった。前述のニャブリ同様、バイエルンとの間で交わされた移籍で、クラブとしての力関係の差を見せつけられた形だ。しかもそのバイエルンは、ゆくゆくはナーゲルスマンを監督に引き抜くとの噂もある。

ホッフェンハイムの市場は選手の行方だけでなく、監督の去就からも目が離せなくなりそうだ。