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【通せんぼ】ネマニャ・マティッチという世界最高峰のフィルター

2017 11/10 12:24dai06
ネマニャ・マティッチ
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マティッチとチェルシーとの出会い

ネマニャ・マティッチ選手は1988年8月1日生まれ。セルビアとスロバキアの国籍を持つ守備的MFだ。

代表はセルビアを選択しており、ユースとして入団したのもセルビアのイェディンストヴォ・ウブというクラブだった。ちなみにセルビアの名門であるバルチザン・ベオグラードのユースに入っていたこともあり、やはりセルビア発の選手といえるだろう。

プロデビューしたのは前者のクラブで、その後はスロバキアのFCVSSコシツェに加入。2009年にはスロバキア・カップ(スロヴェンスキー・ポハール)を制した。
このクラブでの活躍が認められ、2009-10シーズンの夏の移籍市場でチェルシーFC(以下、チェルシー)に加入した。チェルシーには同胞のブラニスラヴ・イヴァノヴィッチ選手(以下、敬称略)がおり、親交を深めた。
2014年のチェルシー復帰時には、イヴァノヴィッチはマティッチを称賛。「ゲームをコントロールでき、攻守にわたって起点となれる選手だ」とプレーにふれるとともに、「以前から僕は彼と仲が良い。兄弟が戻ってきてくれたように感じている」とコメントしている。

この偉大な先輩がいるチェルシーでの日々は、順風満帆かと思われた。

移籍の背景とベンフィカでの日々

新天地での期待とは裏腹に、マティッチはSLベンフィカ(以下、ベンフィカ)に移籍することになる。

2010-11シーズンには、まずオランダのSBVフィテッセ(以下、フィテッセ)へレンタル移籍。フィテッセのオーナーはチェルシーのオーナーであるロマン・アブラモヴィッチと親交があり、フィテッセはチェルシーの選手達の武者修行の場となっていた。
マティッチもこのフィテッセへのレンタルで出場機会を得るが、シーズン途中にチェルシーがベンフィカからダビド・ルイス選手(以下、敬称略)を獲得。この移籍には、マティッチの譲渡が条約に盛り込まれていたことから、マティッチはやむなくベンフィカに移籍することになる。

チェルシー側の事情でやってくることになったベンフィカではあったが、マティッチはここでブレイクする。攻撃力のあるベンフィカにおいて、中盤でゲームをコントロールできる選手となった。2011-14シーズンまでベンフィカに在籍したのだが、2012-13シーズンにはポルトガルの年間最優秀選手に輝いている。

またもや移籍!チェルシーが認めたマティッチのプレースタイル

ベンフィカでブレイクを果たしたマティッチは、かつてベンフィカを率いたこともあるジョゼ・モウリーニョ監督(以下、敬称略)に見込まれ、2013-14シーズン冬の移籍市場でチェルシーに復帰する。

加入直後からモウリーニョの下でプレーし、チェルシーのスタメンに名を連ねるようになった。チェルシーに振り回された過去のことは嘘のような待遇だった。

マティッチはゲームをコントロールすると何度も述べているが、それは攻守の両方で機能する力だ。守りにおいては持ち前の長身で相手を寄せ付けず、ボールを保持することができる。当然、空中戦も強い。
そしてマティッチは、ボールを保持する際にフィジカルの強さだけでなく、足元でボールをコントロールして保持することができる。相手のプレスに対して、身体とボールの向きを瞬時に入れ替え、前へボールを運ぶのだ。

イヴァノヴィッチが「攻守にわたって起点となれる」と称賛したのも、この力があったためだ。マティッチがいることで、攻守の切り替えは非常にスムーズになる。チームにこのような選手がいるのといないのとでは、試合運びが違ってくるだろう。特に展開の早いプレミアリーグのサッカーでは、マティッチのような選手はどのクラブからも必要とされる存在だ。

疲弊するチェルシーとモウリーニョ

2014-15シーズンのチェルシーは、5年振り5度目のプレミアリーグのタイトルを手にした。
マティッチをはじめ、モウリーニョがつくり上げたチームは見事機能し、リーグで圧倒的な強さを誇った。マティッチは攻守の起点に、エデン・アザール選手は相手陣営に切り込み、ジエゴ・コスタ選手は獰猛にゴールを奪っていった。どの選手も持てる以上の力を発揮し、ハードワークを続けた。

しかし、翌2015-16シーズンは一気に不振に陥った。元々モウリーニョのチームは3年が寿命といわれる。 モウリーニョには、就任1年目でチームをつくり、2年目で優勝するというジンクスがある。そして3年目には選手のコンディションが上がらず、成績が上がらず解任される、これも彼のジンクスだ。今回のチェルシーも彼のジンクスにどっぷりとはまってしまった。

モウリーニョは常にハードワークを徹底する監督で、サボっている選手を許しはしない。それでもサボる選手は、メディアを通して非難することもあれば、別のクラブに放出する場合もある。
その一方で、素晴らしい選手は手放しで賞賛し、メディアの選手非難もジョークでかわしてやる。ゆえに彼はカリスマと称されるのだが、とにかく実力主義であることに変わりはない。

チェルシーの選手のコンディションが上がらなくなった陰には、こういったモウリーニョの厳しさがあったようだ。彼と選手の間には不和もあったようで、たった1人ではなく、どの選手にも疲れの色が見えていた。マティッチも、前シーズンの活躍が嘘のような低調なパフォーマンスに終始した。

マティッチが欲しい!モウリーニョの慧眼とユナイテッド

2016-17シーズン、チェルシーはアントニオ・コンテ監督を新指揮官に迎え、リーグを制した。 その活躍の裏ではエンゴロ・カンテ選手やセスク・ファブレガス選手の好調があり、マティッチは彼らの控えに甘んじることが多くなった。

この状況を見かねたのがモウリーニョだった。2017-18シーズン、モウリーニョはマンチェスター・ユナイテッドFC(以下、ユナイテッド)での就任2年目のシーズンを迎えていた。多額の資金を投じたユナイテッドは、モウリーニョたっての希望でマティッチもターゲットに入れていた。

結果的に8月に入ってすぐ、約58億円を支払いマティッチを獲得。かつての師弟関係が復活した。
モウリーニョ政権2年目のユナイテッドは質の高いサッカーを展開し続けている。やはり、就任2年目のジンクスは健在なのだろうか。
ルカクらモウリーニョが見込んだ選手達がゴールを連発するなか、マティッチら中盤や後方の守備も安定している。長らく不振に陥っていたユナイテッドは、このシーズンで復活を遂げるかもしれない。さすが、モウリーニョ、慧眼である。

願わくば3年目のジンクスにも別れを告げ、マティッチらと素晴らしい時間が続くことを期待したい。

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