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【変化する勢力図】ブンデスリーガで注目すべき監督に迫る!

2017 8/25 10:07dada
Peter Bosz
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赤の強者を率いる者!カルロ・アンチェロッティ

ブンデスリーガの赤のユニフォームと言えば、FCバイエルン・ミュンヘン(以下、バイエルン)だろう。 バイエルンは当たり前のようにブンデスリーガ王者を争うだけでなく、CLなどの国際舞台でも多くのクラブを凌駕するだけの力を持っている。

そんなバイエルンを率いているのが、カルロ・アンチェロッティ監督(以下、敬称略)だ。アンチェロッティは前任のジョゼップ・グアルディオラ監督(以下、敬称略)の後任としてバイエルンにやってきた。
バイエルンはグアルディオラの下で、新たなチームへと変貌を遂げた。カウンターに頼りがちで単調的だったバイエルンの戦い方を一変させた。
ポゼッションサッカーを標榜し、多くの選手たちにボールを回し続けることを課した。選手は彼の期待に応えボールを保持し、可変的なシステム取り入れつつ変幻自在のサッカーを展開した。

当初アンチェロッティは、グアルディオラの遺産を引き継ぐ形で指揮にあたった。
グアルディオラは在籍した4年間でクオリティの高い若手とベテランを融合させた陣容を作り上げていた。

しかし、ただグアルディオラと同じことをするのではなく、前線に運動量のある選手を配置し素早いトランジション(攻→守、守→攻)の切り替えを可能にした。さらには従来のポゼッションサッカーに、ロングパスによる縦に速いサッカーも取り入れ攻撃に多様性をもたらした。
バイエルンは様々な形で得点できるようになり、やはりブンデスリーガの絶対強者となっている。

クールでホットな監督?ピーター・ボスの挑戦

ボルシア・ドルトムント(以下、ドルトムント)は、2016-17シーズンを混乱の最中で迎えた。シーズン開幕前にヘンリク・ムヒタリアン選手、イルカイ・ギュンドアン選手、マッツ・フンメルス選手ら主力を多数失い、変革を余儀なくされた。

当時の監督のトーマス・トゥヘル監督(以下、敬称略)は、ラファエル・ゲレイロ選手、ウスマン・デンベレ選手といった有望株を取り入れたが、思うような結果を残せなかったことや選手との不仲もあり退任となった。

心機一転、2017-18シーズンからのドルトムントを率いることになったのが、ピーター・ボス監督(以下、敬称略)だ。
ボスは日本でも選手経験があり、監督業では主にオランダの複数クラブでの指導経験がある。
ドルトムントの前にはAFCアヤックス(以下、アヤックス)を率いており、攻撃的なサッカーに定評があった。ボランチにきちんとボールを捌ける選手を配置し、そこから起点を作る。楔のパス(縦に速いパス)を積極的に取り入れ、縦に速いサッカーを標榜。4年間続いた前任のフランク・デ・ブール監督体制のアヤックスを変えていった。
しかし、若手がモチベーションを落とせば、あっさりとスタメンを外すこともあり、非難されることも多かった。それ故に1年でアヤックスを去ることになるが、非常に思い切りのよい監督とも言える。

ドルトムントでの指揮は、こうした彼のオランダでの経験を試すものになるかもしれない。ドイツの地で彼の采配が当たるかどうかはわからない。

彼の試金石となったのが、2017年7月に行われた日本の浦和レッズ(以下、レッズ)との試合だった。この試合では2-3でドルトムント側が競り勝った。試合を浦和レッズ側が支配する場面も多かったが、ボスの掲げる縦に速いサッカーにより、ドルトムントは要所要所できっちりとゴールに迫ることができていた。期待の若手エムレ・モル選手の崩しは、ボスのサッカーそのものだった。

リーグ戦は当然のことながら長期戦となる。ボスの掲げるサッカーがシーズンを通して維持できるかはわからないが、彼のさっぱりとした起用術によってローテーション制をとる可能性も高い。これにより、ドルトムントの多くの選手たちがチャンスを得るだろう。

史上最年少で監督就任!ユリアン・ナーゲルスマンの奇跡

ブンデスリーガはおろか、世界のスポーツ界でも稀有な存在がユリアン・ナーゲルスマン監督(以下、敬称略)という存在だ。
彼は、健康上の理由で退任となった前任のフーブ・ステフェンス監督に代わり、2016年2月11日に急遽TSG1899ホッフェンハイム(以下、ホッフェンハイム)の監督に就任した。この時の彼はまだ28歳。この若さでの就任はブンデスリーガでは史上最年少であり、スポーツ界においても史上3番目の若さだ。
サッカー界で28歳というと、選手たちは最も脂ののっている時期であり、監督であるナーゲルスマンよりも年齢が上の現役選手も大勢いるような年齢なのだ。

監督となる前のナーゲルスマンは、一介のサッカー選手に過ぎなかったが、度重なる負傷を理由に若くして現役を引退。しかし、前述のトゥヘルに憧れて監督業へ転身し、2008年から複数のクラブのユースのコーチ等を経験。ホッフェンハイムでも各U年代の指揮経験がある。トップチームの監督へのステップアップも彼の経験を鑑みてのことだと思われる。

また、ナーゲルスマンは現代のテクノロジーをサッカーに用いる。トレーニングの際には、選手に特殊な機器を身に着けさせ運動量などのデータを収集し、そのデータを分析しながら選手起用や戦術を決めていく。そしてトゥヘル譲りの流動的なサッカーを展開し、相手選手を翻弄するのが得意だ。

2016-17シーズンにはリーグを4位でフィニッシュし、CLのプレーオフ出場権を獲得。周囲をあっと驚かせるサッカーを展開している。

ドナウのサッカー?!ラルフ・ハーゼンヒュットル

快進撃を続けるRBライプツィヒ(以下、ライプツィヒ)を率いるのが、ラルフ・ハーゼンヒュットル監督(以下、敬称略)だ。

新興クラブであるライプツィヒは、ナビ・ケイタ選手、ティモ・ヴェルナー選手ら若く運動量のある選手を筆頭に、アグレッシブなサッカーを展開する。
ハーゼンヒュットルは、安易にボールを奪われることを良しとせず、奪われるとすぐにプレスをかけさせる。そこにFW、MF、DFの如何はなく、全員が守備に参加する。これにより他クラブのスター選手たちは自由を奪われる。

そしてボールを奪うとすぐに前へボールを運び、一瞬でゴールを決めにかかる。オーストリア出身のハーゼンヒュットルのサッカーは「ドナウのプレッシング・モンスター」と呼ばれている。これからも彼はこのアグレッシブなサッカーでブンデスリーガを席巻するだろう。

遅れを取り戻せシャルケ!ドメニコ・テデスコ

ブンデスリーガの塗り替わる勢力図において、シャルケ04(以下、シャルケ)はその弊害をもろに被っている。
2016-17シーズンはリーグ10位と沈み、名門としての看板に大きな傷を残してしまった。

2017-18シーズンは、31歳のドメニコ・テデスコ監督(以下、敬称略)が就任。かつての強いシャルケを取り戻すという大きな使命を背負う。
彼は規律を重んじ選手の統率に絶対の自信を持っているため、多くの若手が存在するシャルケにはぴったりの監督なのだ。
それでいて対戦相手の情報をしっかりと集め、持ち味である攻撃的なサッカーを展開するための糸口を探す。ナーゲルスマンに通ずるものがあるかもしれない。

シャルケは、このテデスコとともに遅れを取り戻すべく走り始めた。