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【愛するは黄色】ドルトムントのガラスの天才マルコ・ロイス

2017 8/25 10:07dada
Marco Reus
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ガラスの天才、マルコ・ロイスの誕生

1989年生まれのマルコ・ロイス選手(以下、敬称略)は、ボルシア・ドルトムント(以下、ドルトムント)のユースで育った。
トップチームへのデビューはドルトムントではなく、ロート・ヴァイス・アーレンという小さなクラブだったが、そこからボルシア・メンヒェングラートバッハ(以下、ボルシアMG)を経て2012-13シーズンにドルトムントへ復帰した。

ボルシアMGに在籍していた最終シーズンの2011-12シーズンには18得点を挙げて年間最優秀選手賞を受賞。クラブのリーグ4位への躍進の原動力となった。
ドルトムントへの復帰はこの活躍を評価されてのことだった。
ドルトムントの下部組織は、サッカーだけでなく人間性の面での教育にも力を入れるなど、若手の育成に熱心だ。しかし、いくら優秀な若手が生まれようとすべての選手がドルトムントでプレーできるわけではない。芽が出ずに別のクラブでプレーをする、あるいはドルトムントに所属はしていても、使ってもらえないことだってある。

その点で言えば、ロイスは紆余曲折はあったにせよ素晴らしい成長を伴っての復帰であり、サポーターが歓喜するのは当然ことだった。ロイスは周囲からの大きな期待を胸に、ドルトムントの象徴として成長していくことになる。

ガラスの天才ドリブラー!ロイスのプレースタイルとドルトムント

ロイスは非常にドリブルの上手い選手だ。「恐ろしいほどの速さ」、「目を疑うほどの超絶技巧」といったタイプのドリブラーではないが、とにかく「足元の柔らかさ」に関して言えばトップクラスである。

ロイスが主にプレーするのは左サイド。彼はボールを受けると、ワンタッチで前を向きドリブルを開始する。タッチの柔らかさにより向かってきた相手選手をスルスルとかわすのが得意だ。相手選手が出してくる足の方向と重心の移動を的確に判断し、少ない動作でその逆を突き抜いていく。これをそつなく連続してこなすことができる。
タッチの柔らかさは味方への質の高いチャンスメイクも可能にする。ショートもパスもロングパスも正確に出すことができ、そのタイミングも絶妙だ。ドルトムントはゴールゲッターであるオーバメヤン選手(以下、敬称略)にボールを集める傾向があるが、彼のゴールの多くもこのロイスによって生み出されることが多い。

特に凄かったのが2016-17シーズンの第13節、ロイスの古巣であるボルシアMGとの一戦だ。
この試合でロイスは自身初の1試合3アシストを記録。前述のオーバメヤンの2得点、ウスマン・デンベレ選手(以下、敬称略)の1得点を華麗に演出した。

この試合はロイスの負傷明け2試合目。

ロイスは優れたスキルを披露する一方で、度重なる負傷に悩まされていた。

絶たれたブラジルへの道、ロイスの七転び八起き

2016年夏にブラジルで開催されたワールドカップ(以下、W杯)は、ロイスなしのドイツ代表が制した。

ロイスはこのブラジルW杯の直前に靭帯を損傷。W杯への出場断念を余儀なくされた。
「今の気持ちは上手く表現できないよ。僕の夢は一瞬で消えてしまったんだ」と悲痛な思いを語ったロイス。選手にとってワールドカップとは、キャリアにおいてそう何度も巡ってこない晴れ舞台だ。4年に1度の開催はまさに巡り合わせ。次の大会まで選手が招集されるだけの力を持っているか、あるいは現役を続けられているかどうかといった保障はどこにもない。

特にこれまで幾度となく負傷で悩まされているロイスは、自分の身を削るようにしてサッカーをしてきた。圧倒的なドイツ代表の強さは、選手層の厚みによってもたらされている。ロイスの他にも優秀な選手は多くいる。チャンスはそう多くないのだ。

それでもロイスは「前を向かなくちゃいけない。リハビリをしてもっと強くなって帰ってくるよ」と誓った。その後もロイスは幾度となく負傷を重ねてはいるが、その度に強くなって帰ってきている。

七転び八起き、ロイスは必ず蘇る。

去っていくチームメイト、ロイスとサポーターが愛する黄色

ドルトムントは宿敵であるFCバイエルン・ミュンヘン(以下、バイエルン)と並んで、ブンデスリーガを代表する強豪である。

ドルトムントはこのバイエルンに対抗すべく、国内外から複数の有望株を集めて若いチームを形成した。
2011-12シーズン、リーグと国内カップを制してのクラブ史上初の国内2冠達成は快挙だった。

しかし、ドルトムントの成長をバイエルンは放っておかなかった。
2013-14シーズンにはドイツの至宝と呼ばれたマリオ・ゲッツェ選手(以下、敬称略)を、2014-15シーズンには驚異的な得点力を誇るロベルト・レヴァンドフスキ選手を、2016-17シーズンには守備陣の統率を図っていたマッツ・フンメルス選手(以下、敬称略)をドルトムントから引き抜いた。

この流出はドルトムントにとって大きな痛手だ。国内のもう少し弱小のクラブや海外クラブへの売却であればまだ救いがあったのだが、いずれも行き先は宿敵のバイエルンである。この引き抜きがリーグ戦、国内カップ、CL等での両者への勝敗に影響することは言うまでもない。
さらに2016-17シーズンはフンメルスだけでなく、ヘンリク・ムヒタリアン選手やイルカイ・ギュンドアン選手といった絶対的な主力が何人も引き抜かれている。

ロイスは近年のドルトムントの成り行きを見守ってきた。彼にも国内外からの移籍報道があったが、その度にロイスはドルトムントに残る意思を明示し、周囲を安堵させた。サポーターは前述の引き抜きに対して強い憤りを示す一方で、ロイスへの愛情は日に日に強くなっている。

ロイスはドルトムントの黄色のユニフォームをこよなく愛し、サポーターもそんな彼をこよなく愛している。

戻ってきたチームメイト、ロイスの見据える未来

主力の引き抜き続きだった2016-17シーズンは、暗いニュースばかりではなかった。
一度はバイエルンへ渡ったゲッチェの復帰、獲得した逸材デンベレのブレイクなど、ドルトムントのこれからを明るくするであろう材料も育ちつつある。

その状況下においてロイスが主軸となりつつある。チームでは副主将を務めており、チームメイトやサポーター、監督、フロントに至るまで彼に寄せられる信頼は絶対だ。

バイエルンの強さは増す一方だが、ドルトムントがこのまま黙っているわけがない。
持ち前の育成力と逸材を発掘する先見の明は健在だ。そこにチームの指針となるロイスという存在は非常に心強い。
ピッチ内外で味方をしっかりと支えるだけの力が彼にはある。

2012-13シーズンからの復帰、度重なる負傷とチームメイトの流出。
サッカー選手の酸いも甘いも経験したロイスに敵はない。

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