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【アーセナルを変える者】ヴェンゲル期待のアレクサンドル・ラカゼット

2017 8/25 10:07dada
Lacazette 2017
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リーグ・アンで積んできた実績!恐ろしいほどの得点力

フランス、リーグ・アンでの名門クラブであるオリンピック・リヨン(以下、リヨン)で育ったアレクサンドル・ラカゼット選手(以下、敬称略)は同クラブのスター的存在だった。
生え抜きで毎シーズン当たり前のように得点を積み上げ続ける姿は、サポーターたちの目を釘付けにするのには十分過ぎた。

彼のリーグ・アンでの得点記録を少し振り返ってみよう。
2014-15シーズンは33試合で27得点、2015-16シーズンは34試合で21得点、2016-17シーズンは30試合で28得点を挙げた。これまでに大きな負傷もなく、安定的に得点を重ねられる力は評価されてしかるべきだ。これまでの彼のリーグ通算得点数174は、リヨンの最多得点記録のトップを飾っている。

こういった活躍から、彼は幾度となく国外への挑戦が噂されるようになった。
リーグ・アンもレベルの高いリーグではあるが、全体的なレベルを鑑みるとプレミアリーグやブンデスリーガ、リーガ・エスパニョーラといったリーグの方が上にあるのが現状だ。ラカゼットもそれらのクラブへの移籍が危惧された。

そしてそれは2017年夏、現実のものとなった。

遂にプレミアに上陸!アーセナルのストライカー問題は解決か

ラカゼットは様々なクラブから関心を寄せられるも、同胞であるアーセン・ヴェンゲル監督(以下、敬称略)率いるアーセナルFC(以下、アーセナル)へ移籍した。

アーセナルは長らくストライカー探しに苦慮していた。前線でボールを託せば、必ずゴールに迫ることができるような頼りになる選手だ。サッカーは早い話、点さえとれれば勝てる可能性が高い。故に、多くのクラブがFWの獲得に多額の資金を投じる。
アーセナルは2016年の夏にルーカス・ペレス選手を約20億円で獲得していた。彼はその前のシーズンにリーガ・エスパニョーラで17得点を挙げていた。シュートのパターンに富む彼には、どんな局面でも得点を積み上げていくことが期待された。
しかし、アーセナルに移ってからは、そのスタイルに順応することができず、満足に得点を挙げることもできなかった。

結局アーセナルはオリヴィエ・ジルー選手(以下、敬称略)にトップの位置を託すことになるのだが、そのジルーにしてもエースと言えるような働きを見せることはできていない。アーセナルの得点力は、サイドで躍動するアレクシス・サンチェス選手(以下、敬称略)に任せっきりとなっていた。

そこにやってきたのがラカゼットだ。ラカゼット獲得には約68億円もの資金が投じられ、アーセナルのクラブ史上最高額での獲得となった。
今回のアーセナルのストライカー獲得は、”本気”に違いない。ラカゼットには大きな期待が寄せられており、彼はこれに応えなくてはならない。
退団に際し多くの悲しもの声を寄せたリヨンサポーターのためにも、ラカゼットは新天地で躍動しなければならないのだ。

解任回避も後がない!背水の陣で挑むヴェンゲルの覚悟

2017年3月。ヴェンゲル監督はCLでFCバイエルン・ミュンヘンに大敗を喫し、解任すべきとの声が一気に強まった。
監督の入れ替わりが激しいプレミアリーグにおいては、21年も同じクラブを指揮し続けるのは非常に難しいことだ。しかし、その21年目にしてヴェンゲルは初めて来季(2017-18シーズン)のCL出場権を逃していた。
この2つの事件が「Wenger Out」といった、サポーターをたちによるヴェンゲル解任要求のデモ騒動に繋がった。リーグでのタイトル獲得も遠のいているため、いよいよ新しい風を入れるタイミングではないのかといった声も大きくなった。
しかし、その騒動から一転、ヴェンゲルは2年の新契約にサインし、23年に渡る長期政権への望みを繋いだ。この成り行きには多くのサッカーファンが驚かされた。

だが、事態は芳しくない。ヴェンゲルには後が残されていない。またもやCLへの出場権を確保できなかったり、不甲斐ない試合を続けるようなことがあれば、解任されてしまう可能性が出てくる。こうした騒動は一度や二度ではない。仏の顔も三度までと言うが、その限界はとうに超えているのだ。

だからこそ、今回のラカゼット獲得は、ヴェンゲルの覚悟の表れでもある。
高額の資金を投じ同胞のラカゼットを獲得したのも、自分の審美眼が正しいことの証明に繋げたいという意思の表れでもあり、サポーターへの機嫌取りの意味合いもあるだろう。

こうしてラカゼットにかけられるプレッシャーは、彼の知らないところでますます大きくなっている。

速く、正確で、とにかく強い!ラカゼットのプレースタイル

ラカゼットのプレースタイルは、速く、正確で、強いの三拍子が揃っている。この三拍子は点取り屋にとって極めて重要な素質だ。

ボールをもたせれば、美しいドリブルであっという間にゴール前へ駆け上がることができる。相手選手に囲まれても、突破の糸口を見つけることが得意で、マークを苦にしない。
そしてそのまま正確なシュートを叩き込むことができる。大一番での局面での勝負強さ持ち合わせており、彼にボールを集めればゴールが決まる可能性はかなり高くなる。

アーセナルは前述したように、サンチェスに攻撃のタスクを課し過ぎている。サンチェスが負傷するようなことがあれば、それはアーセナルが不調に陥るのと同義だ。しかも、サンチェスはタイトルが取れないアーセナルでの日々に嫌気が差し、移籍を検討しているとの噂もある。それも無理はない、なぜならサンチェスが以前に所属していたのは、あのFCバルセロナだったのだから。

ラカゼットがサンチェスに代わるほどの得点力を発揮することができれば、サンチェスに課せられた負担は一気に軽くなり、サンチェスもゴールすることだけにこだわらず伸び伸びとプレーすることができる。もしサンチェスが移籍するような事態になっても、ある程度はラカゼットにタスクを負ってもらうこともできるだろう。

スピードスターを好むヴェンゲルの戦術とラカゼット

ヴェンゲルは「パス&ムーブ」という流動的なサッカーを好む傾向にある。さらにはサンチェス、セオ・ウォルコット選手、エクトル・ベジェリン選手といったスピードのある選手をサイドに配置する傾向もある。

これによりアーセナルは中央にいるメスト・エジル選手ら創造的なパスを出せる選手と、前述のスピードスターとが美しい崩しを展開しながらゴールに迫ることができる。ラカゼットもこのヴェンゲルの戦術にあてはまる選手だ。

しかもサイドではなく中央に配置することで、サイドでも中央でもどこからでも突破を狙えるという、攻撃のパターンを増やすことに成功するだろう。

アーセナルはヴェンゲル続投というこれまで通りの選択をとったが、ラカゼットの獲得は新しい時代の到来を予感させるものだ。ラカゼットが輝けば、アーセナルも輝く。そんな瞬間を目撃できることを切に願う。