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【武者修行は終わった】大型FWロメル・ルカクの躍進は止まらない

2017 8/25 10:07dada
romelu lukaku
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世界を驚かせたルカクの移籍報道

2017-18シーズンより、ロメル・ルカク選手(以下、敬称略)はマンチェスター・ユナイテッドFC(以下、ユナイテッド)でプレーすることが決定した。その金額は約110億円と報じられ、この夏大いに世界を騒がせた。
移籍することが発表されたのと同じタイミングで、騒音騒動を起こすというトラブルもあったが、そんなことは大したことではなかった。ユナイテッドの公式発表は世界中のサッカーファンの間を駆け巡り、この若き大型FWのキャリアに想いを馳せることとなった。前シーズンに大金でユナイテッドに戻っていた、親友のポール・ポグバ選手とオフを楽しむ姿も印象的で、この2人が築く新たなユナイテッドを予感させた。

そもそもルカクは、古巣であるチェルシーFC(以下、チェルシー)への移籍が有力視されていた。チェルシーは2016-17シーズンで素晴らしい試合を展開し、圧倒的な強さでリーグを制覇した。FWのジエゴ・コスタ選手の扱いに苦慮していたものの、前シーズンの活躍を引き合いに出しルカクの獲得を有利に運ぶこともできたはずだった。
現にルカクがチェルシーのスタッフと談笑する様子や、ルカクの練習風景が映し出された動画の一部にチェルシーのロゴが記されたパーティションが映る様子が報じられるなど、移籍は秒読みとまでされた。
ルカクの所属元であるエヴァートンFC(以下、エヴァートン)とチェルシーは過去の別の移籍交渉で因縁があったのだが、この問題を乗り越えての獲得交渉はチェルシーサポーターを期待させた。

だが、それは噂に過ぎなかった。最終的に選んだのはユナイテッドだった。

イブラヒモヴィッチの負傷で巡ってきたチャンス

前シーズンのユナイテッドは、ズラタン・イブラヒモヴィッチ選手(以下、敬称略)が攻撃陣を牽引した。当初はジョゼ・モウリーニョ監督(以下、敬称略)たっての願いでやってきたスーパーサブの位置付けともされた。

彼は世界の様々なクラブで結果を残してきたが、プレミアリーグは初挑戦。しかも30代半ばを迎えた彼に「世界一過酷とされるプレミアリーグでやっていけるのか」と心配する声も多かった。だが最終的にはリーグ28試合で17得点を挙げ、スタメンとして活躍を続けた。

しかし、そのイブラヒモヴィッチは、2017年4月のRSCアンデルレヒト(以下、アンデルレヒト)戦で負傷。靭帯を損傷し2017年内の復帰は困難となり、ユナイテッドと交わされていた1年間の契約延長オプションは破談。世界最高峰の点取り屋はフリーとなった。

かくしてルカクは、そのイブラヒモヴィッチの代役として急遽ユナイテッドのトップターゲットとなった。モウリーニョはチェルシーを指揮していた頃に彼を放出した張本人であるが、ルカクはこのモウリーニョの下でプレーすることを選んだ。サッカー界でも稀代のカリスマ監督とされるモウリーニョは、ユナイテッドにおいて絶対的な権限を持っている。選手を獲得することに関しても、資金をねん出するフロントに強く出ている。

また、選手に厳しいことで知られる彼だが、選手に見せているビジョンはいつも明確で野心に燃えている。タイトル獲得に向けてルカクが必要だということを、しっかりと彼自身に説き獲得に漕ぎつけたのだろう。

世界最高峰の大型FW!ルカクのプレースタイル

ルカクは世界最高峰の大型FWとなる素質を備えている。

チェルシー所属時代は、いくつかのクラブにレンタルに出される一介の若手にしか過ぎなかったが、エヴァートンで定位置を与えられてからはあっという間にスターダムを駆け上がった。
身長193cmで筋肉質な身体つきは、まさにモンスターといった印象を受ける。どんなDFを相手でも強引にゴール前に走り込み得点を量産していく。その存在感の強さは、ただピッチにいるだけでも活きる。相手DFは複数人でルカクのマークや対応に追われ、他の選手への対応が疎かになる。

なお、ユナイテッドにはポール・ポグバ選手、マルアン・フェライニ選手といった高身長な選手が大勢いる。スタメンの平均身長は190cmほどにもなり、試合でも随所で対人の強さを発揮するのではなかろうか。おそらくルカクは、その先駆けとなるだろう。

エヴァートン時代は10番を背負ったルカクだが、ユナイテッドで背負う背番号は9。点取り屋の象徴であるこの番号の名に恥じない選手になることは間違いない。
奇しくもほぼ同じタイミングでユナイテッドを牽引していたウェイン・ルーニー選手は13年振りにエヴァートンへ復帰した。

ユナイテッドとエヴァートンは出会いと別れを繰り返し、この夏新たな時代を迎えようとしている。

赤い悪魔のかけもち!ベルギー代表としてのルカク

「赤い悪魔」の愛称で親しまれるのは、ユナイテッドだけではない。ルカクが招集されるベルギー代表の愛称も「赤い悪魔」だ。

すでにルカクはベルギー代表としての定位置を確保している。
ベルギー代表の中盤にはエデン・アザール選手、ケビン・デ・ブライネ選手らゲームメイクに長ける選手が大勢おり、そのトップにルカクという豪華過ぎる攻撃陣を擁している。まさに黄金時代の到来と言ってよいだろう。

そんな中、ルカクは、クリスティアン・ベンテケ選手(以下、敬称略)という別のFWとよく比較される。 ベンテケもルカクと同じく大型のFWで、ゴール前での存在感には並々ならぬものがある。しかし、ゲームメイクやポジショニング技術、ここ一番で発揮されるクオリティの面でルカクに軍配があがってしまうため、代表ではルカクの方が重きを置かれがちだ。

クラブでも代表でもインパクトを残し続けるルカクは、やはりモンスターだ。ベルギー代表の今後数年での国際舞台における躍進は、このルカクがカギを握るだろう。

永遠のアイドルドログバとの絆

ルカクの原点はチェルシーのレジェンドであるドログバにある。
元同僚かつ体格も似通うこの2人には通じ合うものがあった。ルカクはドログバを自身のアイドルと位置付けていた。

プレースタイルにもどことなく通じ合うものがあり、事あるごとに電話でドログバにアドバイスを求めていることを過去に明言している。
ルカクはこのことに関して「必要があれば(ドログバに)電話をかけ、『今日はこういうことをやって、こんなことを考えているんだけど、どう思う?』と質問するんだ。すると彼は言うべきことと、言うべきではないことをわきまえてくれる。そんなところが好きなんだ」と語った。

こういった関係から、冒頭でも取り上げたルカクのチェルシーへの移籍報道は熱を帯びた。ルカクがチェルシーへ移籍すべきかどうかをドログバに聞く。あるいは、ドログバがルカクにチェルシーに移籍すべきだと説く。そんな裏事情があるのではないかとされた。

結局のところ、この2人のやりとりの真相は2人しか知らない。もしかするとユナイテッドへの移籍に関しての相談があったのかもしれないし、なかったのかもしれない。
だが、ユナイテッドはチェルシーのライバルとなってこれからも立ちはだかるクラブだが、ドログバとの関係はこれからも続くのではないか。

道は違えど、ルカクはルカクとしての新たな人生を歩み始めた。