「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

ダービー・マッチを知ろう スペイン リーガ・エスパニョーラ編

2017 8/3 12:07跳ねる柑橘
BILBAO,SPAIN
このエントリーをはてなブックマークに追加

ダービー・マッチ:プライドが激突する特別な一戦

ライバルとの直接対決。それはどんなスポーツでも白熱する瞬間だ。サッカーでは、ある共通のものを持ったライバルクラブ同士が対戦する試合がある。それがダービー・マッチだ。
今回ご紹介するのは世界最高峰とも称されるスペインのサッカーリーグ、リーガ・エスパニョーラ(通称”ラ・リーガ”)だ。バルセロナやレアル・マドリーといった名だたるクラブが集うこのリーグ。どのようなダービーがあるか早速見てみよう。

スペインのダービー事情

スペインは各地方の民族的、文化的な独立性が強く、そのために長い間地域間対立が問題となっていた国だ。現在でもカタルーニャやバスク地方には独立意識が強い。そうした思いほど激しくはないが、サッカーの世界にも強い対立がある。
また同じ市内にも、サポーターの住民層などに由来する強いライバル意識が存在する。どのクラブのサポーターかが、各人に大きなアイデンティティを形成しているのだ。

マドリー・ダービー(レアル・マドリー対アトレティコ・マドリー)

【初対戦1906年 通算279試合 マドリー146勝、ドロー63、アトレティコ70勝】
まずは同都市内でのダービーを見てみよう。まずは首都マドリーをホームとする2つのビッグクラブ、レアル・マドリーとアトレティコ・マドリーの「マドリー・ダービー」だ。どちらも今では世界的な人気がある一方で、地域的な激しいライバル関係が存在する。
敵対感情はアトレティコからマドリーへのものが特に際立つ。応援時、アトレティコサポーターは飛び跳ねながら「飛ばない奴はマドリディスタだ!!」「奴らは政府のクラブだ!」と叫び、時に選手もそれに加わることもある。言葉の端々からも感情の激しさがうかがえるだろう。
この戦いは歴史的に見るとマドリーが圧倒してきた。2000-2001シーズンのサンティアゴ・ベルナベウでの敗北を最後に、2013-14シーズン第7節で敗れるまで23戦負けなしだった。だが2011年にシメオネ監督が指揮官に就任して以降アトレティコがメキメキと力をつけ、近年の勝敗は五分となっている。
アトレティコがトップクラスのチームとなったいま、マドリー・ダービーはますます白熱した一戦となっている。

カタルーニャ・ダービー(バルセロナ対RCDエスパニョール)

【初対戦1929年 通算166試合 バルサ96勝、ドロー36、エスパニョール34勝】
バルセロナのサッカーチームと言えばバルサ、というイメージは強いが、この街にはもうひとつ1部常連クラブがある。それがエスパニョールだ。現在ジュビロ磐田に所属する元日本代表MF中村俊輔選手が所属していた。
このクラブの正式名称はReial Club Deportiu Espanyol de Barcelona。直訳すれば「バルセロナにあるスペイン王立スポーツクラブ」だ。独立意識が強いバルセロナの街にありながら“Real”(王立)の名を冠し、“エスパニョール=スペイン”という名を持つ。
実際に独裁政権時代には、カタルーニャ文化の象徴バルサとカタルーニャ州におけスペインという国の象徴エスパニョール、という対立構造が存在していた。だがそれもかつての話。現在は地元クラブとしての変革が起きている。
実力差は明白で、最後にエスパニョールが勝利したのは2008-09シーズン。人気・実力ともバルサが圧倒しているからか、ピケ選手はエスパニョールサポーターを「素晴らしい少数派」と形容して物議をかもしたこともある。それでもエスパニョールの選手たちは、バルセロナにエスパニョールありと示すべく、最後まであきらめることなく戦う。お互いの誇りがぶつかりあう一戦なのだ。

セビージャ・ダービー(セビージャFC対レアル・ベティス)

【初対戦1915年 通算126試合 セビージャ60勝、ドロー29、ベティス37勝】
アンダルシア自治州のセビージャはスペイン第3の都市。ここで有名なのは、闘牛、フラメンコ、そしてラ・リーガの強豪セビージャFCだろう。現セレッソ大阪所属のMF清武弘嗣選手が所属した、欧州大会の常連クラブだ。
この街には、赤と白のセビージャともうひとつ、緑の旗を掲げるチームがある。それがレアル・ベティスだ。セビージャFCの内部分裂の末に新たに設立されたのが、現ベティスだ。内部分裂で生じた対立が、そのままクラブのライバル関係となった。
セビージャ・ダービーは都市内でのダービーでは国内でも特に激しいことで有名だ。ダービーの日は街が赤と緑に塗り分けられるとさえ言われる。126回行われたダービーはセビージャが60勝37敗と大きく勝ち越しているが、単純な戦績だけで話が決まるほど簡単な関係ではない。
2002年にはセビージャサポーターによる警備員や選手の襲撃騒動。また2007年にはベティスサポーターがセビージャのラモス監督に中身の入ったペットボトルを投げつけ、直撃した監督は昏倒、救急車で搬送される事態となった。このような騒ぎはもちろん望まれるものではないが、このダービーがいかに激しく、互いが負けたくない気持ちに心をたぎらせていることを物語っている。

バスク・ダービー(A・ビルバオ対レアル・ソシエダ)

【1923年初対戦 通算159試合 ビルバオ65勝、ドロー42、ソシエダ52勝】
ここからは同じ地域内の覇権を争う都市間のダービーを紹介する。
まずは、カタルーニャ同様に独自文化を持つバスク地方だ。ビルバオに拠点を置くアスレティック・ビルバオは、“バスク純血主義“を掲げ、バスク出身選手や両親がバスク出身の選手しか入団を認めていない。現在もこの主義は続いており、自らの文化に誇りを抱くビルバオの代名詞ともいえる。
バスク地方にあるもうひとつの有名クラブとして、美食の都サン・セバスティアンに本拠地を構えるレアル・ソシエダがある。サン・セバスティアンは王族や貴族の夏の避暑地であったこともあり、時の王アルフォンソ13世はソシエダに”Real”の名を与えた。こちらは“バスク純血主義“こそないが、ビルバオ同様にバスクの文化に誇りを持つクラブだ。
戦績はビルバオ65勝、ソシエダ52勝と比較的拮抗している。このダービーは、バスク地方の覇権を争う一戦ではあるが、両クラブの関係は比較的良好だ。イギリスのマージーサイドダービーと同じく、両チームのユニフォームを着た観客が隔離されることなく隣り合って観戦することもできる。スペインでは珍しく「血沸き肉躍る」とは一線を画したダービーなのだ。

カナリア諸島ダービー(ラス・パルマス対テネリフェ)

【1950年初対戦 通算59試合 ラス・パルマス24勝、ドロー21、テネリフェ14勝】
最後は惜しくも復活がお預けとなったカナリア諸島ダービーを紹介する。カナリア諸島とは、スペイン本土から遠くアフリカ大陸北西部に近くにある島々だ。グラン・カナリア島にはUDラス・パルマス、そしてテネリフェ島にはCDテネリフェというクラブがある。
この両クラブについては、柴崎岳選手がテネリフェに移籍したことや、スペイン語圏を中心に渡り歩いた福田健二さんがラス・パルマスに所属していたことで知られる。両チームのホームタウンはカナリア自治州の州都の役割を共同で担っている。そんな両都市のクラブが覇権を争うのが、カナリア諸島ダービーだ。
1950年に初対戦から通算で59試合。他のダービーと比べ対戦回数がかなり少ない。これは両者が同じディヴィジョンに所属していたことが少ないためだ。戦績ではラス・パルマスが上回っているが、リーグ戦での戦績は36戦でともに11勝、14分けと完全に拮抗。最後のダービーとなった2015年の試合も1-1のドローだった。更に唯一1部で行われた2001-02シーズンのダービーも1勝1敗だった。
2016-17シーズンの1部昇格プレーオフで、テネリフェは惜しくも昇格はならず、ダービーの復活はお預けとなった。来シーズンこそは両チーム1部で、カナリア諸島ダービーが実現してほしいところだ。

エル・クラシコ以外にも盛り沢山!ラ・リーガ白熱の試合を観よう

今回、ラ・リーガのダービーを語るうえで本来欠かすことのできない一戦、エル・クラシコをあえて取り上げなかった。確かにこの世界的一戦はスペインで最も因縁の深いダービーだが、あえてこれを外したのは、激しいセビージャ・ダービー、比較的穏やかなバスク・ダービーなど、その他にも個性豊かなダービー・マッチが数多くあることを知って頂きたかったためだ。
もちろん、今回紹介できなかった、バレンシア・ダービーやガリシア・ダービーなど魅力的なダービーがまだまだスペインには存在する。ダービーを通じて、ラ・リーガを楽しむ新たな側面を見つけてほしい。

関連記事

おすすめの記事