若さが故!如何様にも描ける青写真
サッカー界には多くの選手が存在している。
そのなかには、浮かばれる選手もいれば浮かばれない選手もいる。
10代の時には注目されていても、そのまま芽が出ず歳をとり消えていくような選手は当たり前のように存在するのだ。
それでも私達は、若きサッカー選手に注目せずにはいられない。若さ故の青臭さやプレーの荒っぽさが良いのだ。
GKではジャンルイージ・ドンナルンマ選手がいる。彼は2017年6月半ばにミランとの契約延長を拒否。「10代の選手がミランほどのビッグクラブとの契約を拒否するとは……」と非難する者がいた。
だが、それも一興。若い彼らには、如何様にも描けるまっさらの青写真がある。飽くなき挑戦のため、少々冒険することもできるし、明るい未来を紡ぐだけの可能性がある。
キリアン・ムバッペ選手(以下、敬称略)と、ガブリエル・ジェズス選手(以下、敬称略)は、その最たる例かもしれない。世界に名を轟かせるようになった、この2人の若きストライカーを大勢の人々が注目している。
アンリ2世!キリアン・ムバッペの誕生
キリアン・ムバッペは1998年12月20日に、カメルーンにルーツを持つサッカー指導者の父親の下に生まれた。
ユース時代の一部をこの父親の仕事先で過ごしたムバッペは、やがてフランスを代表する育成施設、「クレールフォンテーヌ国立研究所」に入る。この研究所では、若くて有望なサッカー選手が集められる。同国のレジェンド、ティエリ・アンリ氏(以下、敬称略)やニコラ・アネルカ氏もこの研究所が輩出している。
幼少期から注目を集めていたムバッペもここで経験を積み、後のASモナコ(以下、モナコ)への移籍へと繋げている。
モナコでは17歳と26日でプロ初得点。この記録はアンリを抜いて、モナコでの最年少得点記録の更新となった。その後も着実に得点を積み上げていき、飛躍の年となった2016-17シーズンには29試合に出場し15ゴールを挙げた。なお、このシーズンにモナコは、リーグを4連覇していたパリ・サンジェルマンFCを抑えタイトルを獲得、CLではベスト4入りしている。若きムバッペは、クラブの柱とも言うべき存在となり、「アンリ2世」との呼び声も高まった。
ブラジルの至宝!ガブリエル・ジェズスはペンキ塗りだった
「ブラジルの至宝」、「ネイマール2世」として有名なのが、ガブリエル・ジェズスだ。
ジェズスは、1997年4月3日生まれ。ブラジルのアイドル、ロナウジーニョ氏に憧れ5歳の頃にボールを蹴り始めたという。8歳の時にアマチュア選手、15歳の時にSEパルメイラスのユース選手となり、17歳でプロとしてデビューしている。なおこの時、あまりにも若いジェズスのデビューを渋った監督がいたのだが、彼はサポーターから非難され続け解任に追い込まれている。
加入直後から大量の得点を挙げ続けるジェズスは、ブラジル代表でのキャリアも充実させ、2016年のリオデジャネイロ五輪で同国の金メダル獲得に貢献している。
この活躍が認められたジェズスは、世界中のクラブから関心を寄せられるようになり、弱冠19歳でマンチェスター・シティFC(以下、シティ)への加入が決定した。しかも、彼を招いたのは、同じ年の夏からシティを率いることになった名将グアルディオラ監督(以下、敬称略)だった。
一気にシンデレラボーイとなったジェズスだが、2014年にはペンキ塗りをするような少年だったことはあまり知られていない。しかも、大勢の子どもたちと一緒に裸足になって、だ。
得点力に溢れるムバッペのプレースタイル
ムバッペは得点力に溢れる選手だ。
ドリブル突破は素早くキレがあり、熟練のDFでも止めることが難しい。ドリブルに緩急がつけられるため相手との駆け引きが上手く、成功すれば一気に自身のプレーの幅を利かせることができる。
さらには、この突破力に加えて身体の返し方も上手い。混戦状態であってもシュートをきっちりとボールをたたき込むことができる。モナコの他の選手は、若い彼であっても絶対の信頼を寄せており、ボールを集めているようだ。
かねてより言われているアンリと比較するなら、アンリの方が足元の柔らかさと伸びの大きさを感じさせるようだ。だが、それは決してムバッペが劣っているということではなく、ムバッペの方がよりストライカー寄りだということだ。サイドでも中央でもプレーできるムバッペだが、できれば中央に置いて使う方がベターかもしれない。
繊細なタッチで翻弄!ジェズスのプレースタイル
ジェズスはシティに2017年冬の市場で加入し、早々に得点を挙げている。
加入後3試合で3ゴールを挙げ、シティのエースであるセルヒオ・アグエロ選手(以下、敬称略)をベンチに追いやる活躍を披露。
もしかすると、このままアグエロが控えになってしまうのではと思わせるほどの活躍だった。
ボールを持たせれば、柔らかく繊細なタッチでボールを運ぶことができるジェズス。前線への動き出しも味方との連携にも意欲的で、グアルディオラの求めるポゼッションサッカーにも適合すること間違いなし。サポーターはこの新監督の審美眼に間違いがないことを知った。
しかしジェズスはその活躍の直後に負傷してしまい、シティサポーターのお祭り騒ぎは一時中断となる。
2017-18シーズンは、グアルディオラの戦術もさらに浸透するはずである上、ジェズスのシティへの順応もますます進むことだろう。そうなればシーズンを通しての活躍も期待できる。
若き有望株を見守る親心
ジェズスはシティに落ち着いたが、ムバッペの方はその動向が読めない。
2016-17シーズンの活躍を受け、多くのクラブが獲得を狙っている。
モナコはリーグ・アンではビッグクラブだが、世界的に見れば全体的なクオリティはまだまだだ。リーグとCLでの躍進の裏には、このモナコが生み出す逸材達の活躍がある。彼らはクラブが大きければそこに留まるが、モナコでは少々難しい。更なる飛躍を目指し、他のクラブに飛び立っていく。
ムバッペの場合、レアル・マドリードCF(以下、マドリード)からの関心が最も大きいようだ。マドリードは彼が14歳の頃にも獲得に動いていたようで、ムバッペ自身もこの話を認めている。また、彼はマドリードのトレーニング施設にも訪れており、大ファンらしいということらしい。
ムバッペの獲得には、約160億円を超える金額が必要とされているが、マドリードであれば払えないことはないだろう。今後約10年に渡ってプレーできる、優秀過ぎる逸材を放っておく手はない。
しかしどうだろうか。ムバッペにしてもジェズスにしてもまだまだ若く、彼らのキャリアはこれから如何様にも変化していく。1回や2回の移籍では済まない可能性もある。
だが、この2人が少しずつキャリアと実力を磨いていくことで、今以上に比較されるようなスター選手になることは間違いないだろう。同じリーグでライバル関係にあるクラブ同士としてぶつかる可能性もあるだろう。
それまではもう少しだけ、彼らのサッカー人生を微笑ましく眺めていたいものだ。これは若い選手だけに向けられる、ある種の親心のようなものなのかもしれない。